18/03/26
損を呼び寄せるのはポジティブ思考が原因?損を広げてしまう3つの行動例
誰もが損をしたくはありません。ところが、ちょっとした思い込みのせいで、小さな損失を、大きな損失にひろげてしまうことがあります。
その思い込みとは、「今やめたら損」というもの。今やめたら、これまでにかけたお金や手間が無駄になってしまうと思い込み、やめる決心がつかないことはよくあります。しかし、かえって大きな損につながることが少なくありません。
日常生活にあふれる「今さらやめられないこと」
たとえば、頑張ろうと思って申し込んだ英会話教室。半年分の授業料を支払い、テキストも購入し、動画で自習もしようとスマホまで新しい機種に買い換えたとします。すべての出費の合計は約50万円。
ところが、いざ通い始めてみたらレベルが合わず、初歩的すぎて学習効果が薄いことが判明。今から無料で授業のコースを変更することができない場合、どうするのが損失をもっとも小さくできるでしょうか。
せっかく50万円も払ったのだから、このまま通い続けようと考える人もいるでしょう。初歩的な英会話教室でも、多少は得るものがあるかもしれないとポジティブに考えて、少しでも元をとりたいと思っても無理はありません。
しかし、この選択は実は損失を大きくしています。
英会話教室をやめた場合は、50万円を失います。
英会話教室に通い続けた場合は、50万円と勉強にかけた時間を失います。
つまり、どちらを選んでも50万円はかえってきません。レベルの合わない授業を受けても時間の無駄、その時間はもっと有意義に使ったほうが良いのです。それなのに、払った50万円がもったいないからと言って役に立たない授業を受けたら更に損失が拡大してしまいます。
損を呼び寄せてしまう行動例3つ
今さらやめられないと思い、かえって損をしがちなことは日常的によくあります。
(1) 始まって10分でつまらないと思った映画
最後まで観たら面白いかも、というポジティブ思考はかえって損。観ても観なくても、映画のチケット代は戻ってきません。元をとろうと思って最後まで観たら、お金ばかりか時間まで損をします。
(2) 買ったものの似合わないワンピース
時がたてば似合うようになる、という思考も損になりがち。値段が高いものほど、処分することに抵抗がありますが、時間を経ても似合わないものは似合わないのではないでしょうか。
(3) 食べ放題のバイキングが美味しくない
元をとるまで食べなきゃ損、と考えるのはお店の作戦にまんまとひっかかっています。そもそもバイキングは元がとれるようにはなっていません。お店側がしっかり原価計算して、儲かるように値段を設定しています。しかも口に合わないなら、食べるほど損。好きなものを食べましょう。
取り返せないお金・時間・労力を「サンクコスト」という
このように、すでに支払って取り返せないお金のことを「サンクコスト」と言います。英語で「Sunk Cost」=埋没費用と訳されます。お金だけではなく、時間や労力のことを指すこともあり、幅広い言葉です。
株式投資などで損失が出ても、投資した金額が高額であればあるほどその傾向は強くなります。その結果、値上がりする希望を捨てきれず、値下がりする株を持ち続け、かえって損を大きくするケースが増えます。
「こんなに払ったんだから、今さらやめたらもったいない」と思うと合理的な判断がゆがめられてしまいがち。そのため、サンクコストは無視することこそが合理的とされています。
サンクコストを無視して考えた時、それでもその行動をとるのかと考えてみると冷静に判断できるでしょう。
サンクコストは、企業の事業や公共事業にもあてはまる
サンクコストは個人的なことにとどまらず、国レベルでもみられることです。
公共事業などで、有料道路を300億円かけて作る計画があったとします。ところが、工事を半分まで進めたところで、完成しても利用する人が少なくて作る必要性が薄いことが分かった場合、この工事は続けるほうがいいのでしょうか。
すでに150億円も投入している事業だから今さらやめられない、今やめたら150億円が丸々無駄になってしまう。そう考えるのは、損失を拡大させることに直結してしまいます。
あと150億円かけて誰も使わない道路を完成させるより、もっと有意義な使い道があるのではないでしょうか。
現時点に立ち返り、続けるべきかやめるべきか冷静に判断する
サンクコストに立ち向かうには、現時点に立ち返り、続けるべきかやめるべきか冷静な判断をするしかありません。
「間違った方法だった」ということを勉強できたという『勉強代』と考えられるかどうかです。そして、勉強して得られた経験・知識は貴重な財産となりますので、もったいないと思わなくても良いのです。
さまざまな場面で、得する時もあれば、損をする時もあります。過去に縛られない思考を身につけて、大きな損失を作らないようにしたいですね。
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タケイ 啓子 ファイナンシャルプランナー(AFP)
36歳で離婚し、シングルマザーに。大手生命保険会社に就職をしたが、その後、保険の総合代理店に転職。保険の電話相談業務に従事。43歳の時に乳がんを告知される。治療を経て、現在は治療とお金の相談パートナーとして、相談、執筆業務を中心に活動中。FP Cafe登録パートナー
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