20/12/23
国民年金保険料を払えないときどうすればいい? 免除・納付猶予まとめ
突然の失業や収入の減少で家計がきびしくなり、国民年金の保険料が払えなくなったらどうすればいいのでしょうか?そのまま払わずに放置していると、将来の暮らしを支える老齢年金や、もしものときの障害年金などが受け取れなくなってしまうかもしれません。そんな事態から救済するために設けられているのが、国民年金保険料の免除・納付猶予制度です。
国民年金保険料を払えないときはどうすればいい?
突然の解雇やリストラで仕事を失ったときは、自分で国民年金保険料を払っていかなければなりません。また、自営業者やフリーランスの人も国民年金保険料を納めていく必要があります。しかし、経済的に保険料の支払いが困難になったときはどうすればいいのでしょうか?
もし国民年金保険料が払えなくなっても、そのまま放置しないでください。私たちが国民年金保険料を払えなくなった際に利用できる制度があります。それは、国民年金保険料の「免除制度」と「納付猶予制度」です。
●国民年金保険料の免除制度
国民年金保険料の免除制度とは、失業や収入の減少などが原因で国民年金保険料を払えなくなったときに、保険料が全額免除もしくは一部免除になる制度のことです。
この免除制度は、本人や世帯主、配偶者の前年度の所得が一定金額以下になった場合に、お住まいの市区町村に「国民年金保険料免除・納付猶予申請書」を提出して承認されれば利用することができます。また、免除制度は2 年前(申請する月の 2 年 1 カ月前の月分)までさかのぼって申請することができるので確認してみましょう。
また、免除の度合いは以下の通りです。
・全額免除
・4分の3免除
・半額免除
・4分の1免除
前年度の所得に応じて、上記4種類のうち該当する度合いのものに決まります。
全額免除や一部免除を申請して承認された場合、その免除期間は将来受け取れる老齢基礎年金の受給資格期間に含まれます。年金がもらえなくなることはないのでご安心ください。ただし、受給できる年金額は以下のように減額となります。
・全額免除の場合:年金額の2分の1
・4分の3免除の場合:年金額の8分の5
・半額免除の場合:年金額8分の6
・4分の1免除の場合:年金額の8分の7
老齢基礎年金が減額になるとはいえ、免除の申請をしておけば、年金を受け取るのに必要な受給資格期間にカウントされるので安心です。
●国民年金保険料の納付猶予制度
国民年金保険料の納付猶予制度とは、本人または配偶者の前年度の所得が一定額以下の場合に保険料の支払いが猶予される制度で、20歳から50歳未満の人が申請できます。
この納付猶予制度と免除制度の違いは、老齢基礎年金で受け取れる年金額に反映されるかどうかという点です。納付猶予制度を受けた期間は、免除制度と同様に老齢基礎年金の受給資格期間に含まれます。しかし、免除制度では全額免除でも年金額の2分の1は受け取れるのに対し、納付猶予制度の場合は年金額にはまったく反映されないので、後述する「追納」を行わないと確実に年金が減ってしまう点には注意しましょう。
こんなにもある!いざというときに使える特例免除
国民年金保険料には免除制度があることをご紹介しましたが、納付が困難になるケースによっては、特例免除が設けられている場合があります。ここでは、特例免除の内容についてご紹介します。
●失業等による特例免除
失業して収入がなくなり国民年金保険料を払えなくなった人が利用できるのが、失業等による特例免除です。
下記に該当する人がこの特例を利用できます。
・雇用保険の被保険者だった人
・事業の廃止(廃業)または休止の届出を行っている人
申請先はお住まいの市区町村の国民年金担当窓口で、必要書類とともに申請書を提出します。
●学生納付特例制度
日本では20歳になると国民年金の被保険者となり、国民年金保険料を納めなければなりません。ただ、学生の場合は本人の所得が一定以下であれば、申請すれば在学中は保険料の納付が猶予されます。これを学生納付特例制度といいます。申請先はお住まいの市区町村の国民年金担当窓口か年金事務所ですが、在学している学校で手続きできる場合もあります。
●産前産後期間の免除制度
これは、国民年金の第1号被保険者が出産した際、出産日または出産予定日の前月から4ヶ月間の国民年金保険料が免除になる制度です。もし多胎妊娠だった場合は、出産予定日または出産日の3ヶ月前から6ヶ月間、免除が受けられます。
産前産後期間の免除制度を受けた場合の大きなメリットは、免除を受けた期間も保険料を納めたものとして、老齢基礎年金の年金額に反映される点です。これは家計を大いに助けてくれるので、忘れずに申請しましょう。申請は出産予定日の6ヶ月前から可能です。申請先はお住まいの市区町村の国民年金担当窓口になります。
●配偶者からDVを受けた人の免除特例
配偶者からのDVを受けて、配偶者とは別の住居に住んでいる場合は、本人の所得が一定以下であれば国民年金保険料の全額もしくは一部が免除となります。利用する際は年金事務所へ申請します。
●新型コロナウイルスの影響による臨時特例
2020年5月1日から、新型コロナウイルスの影響による臨時特例の申請が始まりました。これは、新型コロナウイルスの影響で収入が減少し、加えて2020年度中の所得が、現行の国民年金保険料が免除になる水準にまで落ち込むことが想定される場合、国民年金保険料が免除されるというものです。
この臨時特例に該当する国民年金保険料の期間は、以下の通りです。
・2019年度分⇒2020年2月~2020年6月
・2020年度分⇒2020年7月~2021年6月
この場合の申請先は、お住まいの市区町村の国民年金担当窓口か年金事務所になりますが、郵送での手続きも可能です。できるだけ早く申請しましょう。
また、この臨時特例は学生も利用できます。(学生納付特例申請)この場合に該当する国民年金保険料の期間は、以下のようになります。
・2019年度分⇒2020年2月~2020年3月
・2020年度分⇒2020年4月~2021年3月
以上、ご紹介した免除特例のくわしい申請方法は、日本年金機構か、お住まいの自治体のホームページで確認してください。
年金保険料の追納制度があることを知っていますか?
国民年金保険料の免除や納付猶予を受けると、将来受け取れる老齢基礎年金の年金額が減ってしまいます。でもご安心ください。「国民年金保険料の追納制度」があり、10年以内であれば、後から保険料を払い込むことで老齢基礎年金の減少分を補填できるのです。
ただ注意したい点もあります。それは、保険料の免除あるいは納付猶予を受けた期間の翌年度から3年以上経つと、納める保険料に加算額が上乗せされてしまうことです。また、老齢基礎年金の受給が始まった場合は追納ができなくなってしまいます。
もし免除や納付猶予を受けたときは、2年以内に追納できれば、保険料の負担と将来受け取る老齢基礎年金への影響を抑えられるでしょう。
追納制度の申請は年金事務所で行ってください。郵送申請も可能です。
まとめ
思いがけない収入の減少や失業によって国民年金保険料が払えなくなったときは、免除制度あるいは納付猶予制度を利用して、保険料の未納期間をつくらないようにしましょう。その際、老齢基礎年金への影響を考えると、納付猶予よりは免除を申請したほうがよさそうです。また、10年以内という制限はありますが、経済的に余裕ができたら保険料の追納をして、年金額の減少を最小限にすることをおすすめします。
※この記事は2020年12月11日現在の情報をもとに作成しています。
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前佛 朋子 ファイナンシャル・プランナー(CFP®)・1級ファイナンシャル・プランニング技能士
2006年よりライターとして活動。節約関連のメルマガ執筆を担当した際、お金の使い方を整える大切さに気付き、ファイナンシャル・プランナーとなる。マネー関連記事を執筆するかたわら、不安を安心に変えるサポートを行うため、家計見直し、お金の整理、ライフプラン、遠距離介護などの相談を受けている。
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