25/11/05
住民税非課税世帯に簡単になれない4つの理由

近年の物価上昇の影響で、毎月の生活費のやりくりが大変だと感じる方も多いでしょう。高齢になれば、さらに医療費や介護費用の負担も増えてきます。その一方で、住民税非課税世帯になると、住民税の納付が不要になり、さまざまな優遇措置が受けられます。
今回は、住民税非課税世帯の要件やメリットと、住民税非課税世帯になれない理由を解説します。
住民税非課税世帯とは
住民税非課税世帯とは、居住する自治体に納める住民税が課されない世帯のことをいいます。住民税は、前年の総所得金額をもとに計算され、その年の1月1日現在に住所がある自治体に納付します。
その住民税には、所得割と均等割の2つの課税方法があり、所得割と均等割の両方が非課税になると、住民税非課税世帯に該当することになります。
●所得割と均等割が非課税になる要件(東京23区内の場合)
次のいずれかの要件にあてはまる場合には、住民税が非課税になります。
(1)生活保護法による生活扶助を受けている
(2)前年の合計所得が一定以下の場合
単身の場合は、前年の総所得金額が45万円以下*
同一生計配偶者または扶養家族がいる場合
35万円×(本人・同一生計配偶者・扶養親族の合計人数)+31万円以下
*前年の合計所得金額の要件においては、住んでいる自治体によって住民税非課税世帯となる条件が変わります。
これは級地制度といって、地域ごとに物価や生活水準の差を生活保護の基準額に反映させる制度により、金額が変わってくるからです。
(3)障害者・未成年者・寡婦またはひとり親で、前年の合計所得金額が135万円以下
住民税非課税世帯のメリット
住民税非課税世帯に該当すると、さまざまな優遇措置が受けられます。
・国民健康保険料の減免措置
・介護保険料の減免措置(65歳以上の第1号被保険者の場合)
・国民年金保険料の減免措置
・医療費負担の軽減措置(自己負担額の基準額が低い)
・保育料の無償化(0~2歳)
・大学の入学金・授業料の免除
・高額な介護サービス利用料の払い戻し
・介護施設の居住費・食費等負担の軽減措置 など
上記のように健康保険料・国民年金保険料・介護保険料などが減免され、国民健康保険や後期高齢者医療制度での自己負担限度額が低く抑えられています。この他、子育て、教育、介護の面からも手厚いサポートが用意されています。
どんな場合に住民税非課税世帯になれないのか
ご自身の感覚では、住民税非課税世帯になるのではないかと思っていても、非該当になるケースがあります。どういう理由で住民税非課税世帯になれないのでしょうか。
●住民税非課税世帯になれない理由1:所得が非課税の基準を上回っている
前年が住民税非課税世帯だったからといって、毎年、住民税非課税世帯となるわけではありません。例えば、年金の改定で年金が増えたり、副業の収入が思ったより利益が多かったりする場合には、非課税となる収入金額を超えてしまうことがあります。収入を増やしたいからと働いたら、住民税非課税世帯に該当しなくなるということもあるのです。
あるご家庭のケースですが、ご主人は事業の損失を持ち越したので、所得税や住民税はかからない予定でした。しかし、奥さんの収入が3000円ほど多かったために、住民税を納めることになりました。その結果、住民税の均等割がかかることになり、健康保険料の負担が年間で数万円増えてしまいました。入ってきた収入より出ていく税金や保険料が多くなり、手取りが減るということもあるのです。
●住民税非課税世帯になれない理由2:世帯の中に住民税課税者がいる
住民税非課税世帯であるためには、世帯の全員が住民税非課税である必要があります。家族と一緒に住むことになり同世帯となったときに、住民税を支払う家族がいれば住民税非課税世帯ではなくなります。また、家族の中にパートやアルバイトをしていた人が正社員になったため、課税世帯になった場合なども住民税非課税世帯ではなくなります。
●住民税非課税世帯になれない理由3:引っ越しをしたことで住民税非課税世帯の基準が変わった
住民税が非課税となる前年の総所得金額の要件は、各自治体によって異なります。生活費がかからない田舎暮らしに憧れて移住したとします。東京23区内の場合、住民税非課税世帯であるためには、単身世帯の場合では前年の総所得金額が45万円以下という要件になっています。しかし、別の自治体では、総所得金額が38万円以下、あるいは41万5000円以下というところもあります。このように収入が前年と変わらない場合でも、住む自治体によっては、住民税非課税世帯とならないケースがあるのです。どんな場合に住民税非課税世帯に該当するのかは、各自治体のウェブサイトで確認することもできます。詳しい内容は、お住まいの自治体の税務課などの部署にお問い合わせください。
●住民税非課税世帯になれない理由4:収入が激減しても住民税非課税世帯になれない
住民税は前年の所得に基づいて判定されます。ですから、年の途中で収入が激減したからといって住民税非課税世帯になれるわけではありません。その年を通して総所得金額が一定金額以下になれば、翌年は住民税非課税世帯になることができます。
誰もが収入が増えることを期待していますが、手取り収入を増やすには物事を俯瞰的にとらえることが大事になります。特に高齢期になれば、医療の窓口負担や保険料納付の負担が大きくのしかかってきます。こうしたとき「お金がないから…」とあきらめるのではなく、公的なサービスや援助があることを知り、お金の収支をコントロールする姿勢も重要になってきます。何らかの理由で収入が減った場合には、住民税非課税世帯に該当するかを確認することもそのひとつ。住民税非課税世帯になるか、「住民税非課税世帯になれない理由」に該当していないかを確認してみましょう。
【関連記事もチェック】
・「年金生活者は住民税非課税世帯になった方が得」は本当か
・55歳になったら絶対すべき、老後破綻を避ける「たった1つのこと」
・「5歳以上年上の夫」に扶養されている妻は要注意!年20万円超の社会保険料が発生する可能性
・2025年度の「住民税決定通知書」は絶対確認、見るべきところはココ!
・「10月の給料が減った」人は絶対に確認すべき給与明細のある項目
池田 幸代 株式会社ブリエ 代表取締役 本気の家計プロ®
証券会社に勤務後、結婚。長年の土地問題を解決したいという思いから、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー(AFP)を取得。不動産賃貸業経営。「お客様の夢と希望とともに」をキャッチフレーズに2016年に会社設立。福岡を中心に活動中。FP Cafe登録パートナー
この記事が気に入ったら
いいね!しよう
























