24/07/11
大学生でも受け取れる年金があるのは本当か
「年金はお年寄りが受け取るもので、若いうちは保険料を支払うだけ」と思っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。実は、大学生でも受け取れる年金があります。今回は、大学生でも受け取れる年金とはどのようなもので、どんなときに受け取れるのか紹介します。
年金は「老齢」「障害」「遺族」の3種類
年金には「老齢年金」「障害年金」「遺族年金」の3種類があります。
老齢年金は、老後の生活を支える年金で、原則として65歳から受け取ることができます。多くの方が「年金」といわれてイメージするのは、主にこの老齢年金でしょう。
障害年金は、病気や怪我などで働くことが難しい方のための年金です。20歳以上で一定以上の障害を持っている方に支給されます。
遺族年金は、年金に加入していた方が亡くなったときに、加入していた方の配偶者または高校生以下の子どもに支給される年金です。会社員などが加入する厚生年金保険の場合、加入者の父母や孫、祖父母のいずれかが受け取ることもあります。
大学生でも受け取れるのは「障害年金」
紹介した3種類の年金で、大学生が受け取れる可能性があるのは、障害年金です。20歳以上の大学生が障害年金を受け取るには、下記3つの要件をすべて満たす必要があります。
●障害年金の要件1:初診日に国民年金に加入している
初診日とは、障害の原因となった怪我や病気を診てもらうため、初めて病院にかかった日のことです。
障害年金を受給するには、初診日に国民年金または厚生年金保険に加入している必要があります。厚生年金保険は会社員などが対象の保険ですから、大学生の場合は国民年金に加入していなければなりません。
ただし、国民年金に加入できるのは20歳からです。では、生まれつき障害を持っている人や、20歳になる前に病院を受診した人は対象外となってしまうのでしょうか?
結論から述べますと、初診日が20歳より前だった人も、20歳になると障害年金を受け取ることが可能です。つまり、初診日が20歳より前だった人は、この「要件1」に関しては問われないということです。
●障害年金の要件2:3分の2以上の期間、保険料を納めている
大学生が障害年金を受け取るには、20歳で国民年金に加入してから初診日の前々月までの期間の3分の2以上、年金保険料を納めている必要があります。これを満たさない場合でも、初診日の前々月までの直近1年間で保険料の未払いがなければ、障害年金を受給できます(初診日が2026年3月31日までの場合)。
なお「要件2」についても、初診日が20歳より前だった人は問われないため、気にしなくて構いません。
●障害年金の要件3:障害認定日に一定以上の障害を持っている
障害認定日は、原則、初診日から1年6か月後とされています。この障害認定日に、法律で定められた一定の障害を持っている人が、障害年金支給の対象となります。
障害年金が支給されるかは、障害等級によって決まります。障害等級は、医師が作成する診断書や本人が作成する病歴・就労状況等申立書をもとに審査されます。国民年金加入者の場合、最も障害の重い1級と、次に重い2級に認定された人に障害年金が支給されます。
保険料が払えない場合は学生納付特例制度を利用する
大学生の本分は勉強です。「20歳から国民年金に加入して保険料を納めなければならない」と言われても、学業が忙しくてアルバイトができず、保険料を払えない人は多いでしょう。
そんな人のために、国民年金には「学生納付特例制度」という制度があります。これは、年金事務所や役所に申請することで、学生の期間中は年金保険料の納付を猶予してもらえる制度です。
学生納付特例制度で認められた猶予期間は、保険料を納付した期間に含めることができます。つまり、20歳から初診日の前々月までに納付期間と猶予期間の合計が3分の2以上あれば、障害年金の支給条件を満たしているということになります。
学生納付特例制度は、申請の手続きを行わないと猶予を受けることができません。手続きを行わず、保険料も支払わないでいると「未納」とみなされてしまいます。未納だと、万が一のときに障害年金を受け取ることができなくなってしまいます。
20歳になったら、忘れずに国民年金保険料を払うか、または学生納付特例制度の手続きを行うようにしましょう。
なお、学生納付特例制度の猶予期間は、納付期間に加えることはできますが、納付金額には反映されません。老後に受け取る老齢年金はこれまでに支払った保険料額をもとに計算されますから、学生納付特例制度の猶予期間があると、その分もらえる年金が減ってしまいます。
将来受け取る老齢年金を増やしたいのであれば、猶予された金額を10年以内にさかのぼって支払う「追納」を行うことをおすすめします。
万が一に備えるためにも、必ず保険料納付・猶予申請をしよう
年金は高齢者のためだけの制度ではありません。健康な大学生でも、何らかの病気や怪我が原因で障害を持ち、障害年金を受け取るようになる可能性はあります。
「年金をもらえるようになるのは何十年も先だから、保険料はまだ払わなくても大丈夫だろう」と判断するのはよくありません。万が一のときに障害年金を受け取るためにも、20歳になったら必ず年金保険料を納めましょう。金銭的な理由で納付が難しい場合は、忘れずに学生納付特例制度の納付猶予申請を行ってください。
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木下七夏 Webライター
大学卒業後金融機関に勤め、個人のお客さま向けの営業を担当。退職後にFP2級を取得し、フリーライターに。FPで学んだ知識や金融機関勤めの経験を生かして、生活にまつわるお金の疑問を分かりやすく噛み砕いて解説する記事を作成している。
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