24/06/28
「年収300万円世帯」が国からもらえるお金は意外と多い
「収入はなかなか増えないのに支出はかさむ」と悩む方は多いでしょう。しかし、条件を満たせば国や自治体からお金がもらえるかもしれません。年収300万円の世帯の場合、もらえる給付金は意外と多くあります。今回は、その中から8つご紹介しますので、もしももらっていない給付金があったら、忘れずに申請しましょう。
年収300万円世帯が国からもらえるお金①:児童手当
児童手当は、中学校卒業までの子どもを養育する人に支給される手当です。2024年10月分(2024年12月支給分)からは、次のように児童手当の制度が拡充されます。
<児童手当の概要と変更点>
筆者作成
赤字にしたところが主な変更点です。
これまで、児童手当の対象となる子は中学校を卒業(15歳の誕生日後の最初の3月31日)まででしたが、拡充後は高校を卒業(18歳の誕生日後の最初の3月31日)までになります。また、第3子以降の金額も拡充後は2倍に。0歳から高校生まで月3万円になります。所得制限もなくなるため、児童手当が少なかった(もらえなかった)人ももらえるようになります。
ただし、「第3子以降」のカウントの仕方は「18歳年度末までの子のうち、3番目以降」(2024年10月分からは「22歳年度末までの子のうち、3番目以降」)です。たとえば第1子が成長して18歳(22歳)年度末を迎えると、第3子は児童手当の計算上は「第2子」になるため、児童手当が月3万円でなくなります。
年収300万円世帯が国からもらえるお金②:就学援助
就学援助とは、経済的な理由で就学が困難な子のいる保護者に対して、学校で支払うさまざまな費用の一部を援助する制度です。支給の対象になる費用は、学用品費、通学用品費、学校給食費、新入学児童生徒学用品費、部活動費、校外活動費など、多岐にわたります。
●就学援助の対象となる人
就学援助の対象となる基準は、各市区町村によって多少の違いがあります。たとえば東京都中央区では中央区にお住まいの方、子どもが国公立小・中学校に在籍している方、または以下のいずれかに該当していれば、就学援助の対象になります。
①現在、生活保護を受けている方
②現在、生活保護を受けていないが、前年度または当該年度において生活保護が停止又は廃止された方
③現在、生活保護を受けていないが、当該年度において次のいずれかに該当する方
ア 区民税が非課税又は減免された方
イ 個人事業税が減免された方
ウ 国民年金の掛金が減免された方
エ 国民健康保険の保険料の減免又は徴収の猶予がされた方
オ 児童扶養手当を受給している方(児童手当ではありません)
カ 世帯の総所得額(給与所得控除後の金額)が基準額未満の方
(基準額は、世帯人員、世帯構成等により異なりますが、目安は以下のとおりです)
・父(35歳)、母(30歳)、子(小1)の場合:約380.4万円
・父(35歳)、母(30歳)、子(小1)、子(3歳)の場合:約434.8万円
・父(45歳)、母(40歳)、子(中3)、子(小6)、子(小3)の場合:約544.9万円
中央区のウェブサイトより
世帯所得額の目安によれば、子どもが1人だけの場合は、世帯所得が380.4万円以下であれば就学援助の対象になります。細かな要件はお住まいの地域や家族構成などにより異なりますので、対象になるかどうか、お住まいの市町村で確認しましょう。
なお、災害や家族の病気などで所得が減少した場合は、年度の途中であっても申請を受け付けてくれるケースもあります。そうした事情がある場合には、お住まいの自治体に問い合わせてみるとよいでしょう。
年収300万円世帯が国からもらえるお金③:児童扶養手当
児童扶養手当は、父母が離婚したり、死亡したり、一定以上の障害を持っていたりする場合に、ひとり親世帯で子どもを育てる家庭に対して支給される手当です。
児童扶養手当の対象になるのは、18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある子ども(障害児の場合は20歳未満)で、手当がもらえるのは、子どもを世話する父母または祖父母等です。
児童扶養手当の支給額は児童の数によって異なっていますが、支給されるのは、年に6回(1月、3月、5月、7月、9月、11月)です。
児童扶養手当の支給額(2024年度)は、以下のとおりです。
《子ども1人あたりの月額》
・全部支給:4万5500円
・一部支給:1万740円~4万5490円
《子ども2人目からの加算額》
・全部支給:1万750円
・一部支給:5380円~1万740円
《子ども3人目からの加算額》
・全部支給:6450円
・一部支給:3230円~6440円
なお、子ども3人目からの加算額は2024(令和6)年11月から、児童2人目と同額になります。
●児童扶養手当の所得制限限度額(収入ベース・前年の所得に基づき算定)
・全部支給(2人世帯):160万円(2024年11月分より190万円)
・一部支給(2人世帯):365万円(2024年11月分より385万円)
収入の目安が「全部支給の所得制限限度額」より少ない場合は全部支給に該当します。また、全部支給の所得制限限度額よりは多くても「一部支給の所得制限限度額」より少ない場合には、一部支給に該当します。
なお、所得制限限度額は2024(令和6)年11月から、括弧内の所得額以下、「全部支給(2人世帯)は190万円」、「一部支給(2人世帯)は385万円」に変更となります。
児童扶養手当を受給するには、自治体の窓口での申請が必要です。請求理由ごとに書類などが異なるので、詳しくは窓口に確認しましょう。
年収300万円世帯が国からもらえるお金④:3~5歳の子どもが通う幼稚園・保育所などの無償化
幼稚園や保育所などへの給付や地域の実情に応じた子育て支援などを行う「子ども・子育て支援新制度」。このうち年収300万円世帯が確実に対象になるのは、子どもが3~5歳の場合です。
子どもが3~5歳で通う幼稚園が子ども・子育て支援新制度の対象となる幼稚園・保育所・認定こども園等であれば、利用料が無料になります。子ども・子育て支援新制度の対象にならない幼稚園に通っていれば、月額利用料が2.57万円まで無償になります。
子どもが0~2歳の場合は、年収300万円世帯のうち、住民税非課税世帯のみが、幼稚園・保育所・認定こども園等の保育料が無償化となります。
住民税非課税世帯に該当しなくても、2人以上子どもを持つ世帯の子育て負担を軽減のため、保育所等を利用する最年長の子供を第1子とカウントして、0歳から2歳までの第2子は半額、第3子以降は無償になります。ただし、年収360万円未満相当世帯については、第1子の年齢は問いません。
保育料無償化を利用するには、お住まいの市町村から「保育の必要性の認定」を受ける必要があります。申請は、原則、通っている幼稚園・保育所・認定こども園等を経由して行います。
年収300万円世帯が国からもらえるお金⑤:高等学校等就学支援金
高校へ進学すると、高等学校等就学支援金がもらえます。高等学校等就学支援金は、国が高校などの授業料を支援してくれる制度です。支給される年額は、通う高校に応じて違いがあり、以下のとおりです。
・公立高校:11万8800円
・私立高校:39万6000円
<高等学校等就学支援金の支給額のイメージ>
文部科学省の資料より
なお、高等学校等就学支援金は返還する必要がありません。
●高等学校等就学支援金の対象となる人
高等学校等就学支援金には所得制限があります。上の図は両親・高校生・中学生の4人家族で、両親の一方が働いている場合の目安で、年収が590万円以下であれば最大39万6000円、910万円以下であれば11万8800円となることを示しています。もし、年収300万円の世帯であれば、公立・私立ともに満額もらえます。
年収300万円世帯が国からもらえるお金⑥:給付型奨学金と授業料の免除
奨学金は、経済的理由で進学を諦めることのないように、学費などを支援する制度。一定の基準を満たした大学や専門学校へ通う場合に利用できます。たとえば、日本学生支援機構が行う奨学金の制度には、返済義務のない給付型の奨学金や、返済義務のある貸与型の奨学金(第一種は無利子、第二種は利子がつく)があります。
このうち、給付型の奨学金には、現金で支払われる奨学金と、授業料が減免される2つの制度があり、両方を同時に受けることもできます。支援を受けられる金額は世帯年収や家族構成により異なります。
<給付型奨学金の支援額>
日本学生支援機構の資料より
上記の表より、年収300万円の世帯は、給付型奨学金・授業料免除・減額制度の満額の2/3の支援が受けられます。また、年収380万円の世帯は、給付型奨学金・授業料免除・減額制度の満額の1/3の支援が受けられます。
支援を受けられるかどうかは、原則、本人と父母(父母がいない場合は、代わって生計を維持している者)の収入や資産を確認して支援対象になるか判断されます。
詳しくは、日本学生支援機構「進学資金シミュレーター」で調べるとよいでしょう。
申し込み・受給にあたっては、学校の成績が一定以上であることに加えて、面接やレポートなどによる審査なども行われます。年収の要件だけでなく、本人の「勉強しよう」という意思なども条件となります。
年収300万円世帯が国からもらえるお金⑦:高額療養費制度
高額療養費制度は、医療費の自己負担額が一定の金額を超えたとき、その超えた分が支給される制度です。70歳未満の場合、5つの所得区分ごとに、自己負担額の上限が異なります。また、直近1年間で3回以上(3か月以上)高額療養費の支給を受けている場合、4回目(4か月目)からは「多数回該当」となり、自己負担限度額がさらに減額されます。以下は、70歳未満の高額療養費一覧です。
●高額療養費制度の自己負担額(70歳未満)
厚生労働省の資料より
たとえば、年収300万円世帯では、1か月の医療費の自己負担限度額は5万7600円になります。実際に、1か月の医療費が100万円かかった場合でも、高額療養費制度があるおかげで、医療費の最終的な負担は「5万7600円」だけです。
年収300万円世帯が国からもらえるお金⑧:定額減税
2024年6月から始まった定額減税では、1人あたり所得税3万円、住民税1万円の4万円が減税されます。
定額減税は、所得税の場合、2024年6月から12月の7か月間にわたって減税が行われます。住民税の場合は、2024年6月分は徴収せず、7月分から2025年5月分までの11か月間で減税が行われます。
この間、もともと支払う税金が少なければ、減税分を差し引くことができません。この場合、差し引くことができなかった金額を「調整給付」という給付金の形で受け取ることができます。調整給付は、差し引きできない分のうち、1万円未満の金額を切り上げして1万円単位で給付されるので、なかには1万円近く得をする方もいるでしょう。
国の試算によると、年収300万円世帯の場合夫婦と子1人(大学生)の世帯で年収575万円程度、夫婦と子2人(小学生)の世帯で年収535万円程度以下であれば、定額減税+調整給付の対象となっているので、年収300万円の子育て世帯であれば調整給付がもらえる可能性が高いでしょう。詳しくは、お住まいの自治体にご確認ください。
対象になる制度はもれなく申し込もう
年収300万円世帯の場合、特に子育てしている世帯であれば、さまざまな給付金がもらえることを紹介してきました。これらの制度の申請については、行政から案内のあるものもあれば、自己申告が必要なものもあります。詳しくは自治体の窓口や、ホームページなどで確認しましょう。
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舟本美子 ファイナンシャルプランナー
「大事なお金の価値観を見つけるサポーター」
会計事務所で10年、保険代理店や外資系の保険会社で営業職として14年働いたのち、FPとして独立。あなたに合ったお金との付き合い方を伝え、心豊かに暮らすための情報を発信します。3匹の保護猫と暮らしています。2級ファイナンシャル・プランニング技能士。FP Cafe登録パートナー
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