23/12/12
役職定年になると、給与はいくら下がるのか
会社によっては役職定年を導入しているところがありますが、役職定年になった後、給与や退職金が減ってしまうのかどうか気になりますよね。そこで今回は、役職定年について導入に至る背景と、年収がどのように変わるのかをお伝えするほか、もし役職定年で収入減になる見込みがある場合に備えておきたい対策をご紹介します。
役職定年が導入された背景は?
2021年4月に高年齢者雇用安定法が改正され、65歳までは継続して働けるようになっています。また最近では、老後の生活費を稼ぐため長く働く人も増えています。
このように、今でこそ65歳定年が当たり前になりつつありますが、約50年前の1970年代は55歳定年が当たり前の時代でした。そんななか、1980年代に入ると定年年齢の55歳から60歳への引き上げが努力義務化されました。そして、高年齢者雇用安定法が改正されて1998年には60歳定年が義務化されたのです。
それまでは55歳で定年退職していたシニア社員は60歳まで働くようになり、役職に就いていた人は、そのまま役職を継続するようになったのです。その結果、企業の人件費は増加していきました。それだけでなく、シニア社員が役職に就いたまま60歳まで働くことから、組織の若返りが図れなくなり、若い世代の社員はモチベーションが下がり、なかには離職する人も出てきたのです。
そんな状況に対して、企業は新たに役職定年を導入するところが増えていきました。
役職定年とは、企業が決めた年齢に達した課長や部長などの役職者がその役職から外れる制度のことです。役職定年は50歳代後半から60歳までの間に設定されますが、55歳を役職定年とする企業が多くなっています。
役職定年になると年収や退職金はどうなる?
2017年(平成29年)に人事院が行った「民間企業の勤務条件制度等調査」によると、役職定年制のある企業は16.4%で、従業員が500人以上の企業では30.7%が役職定年制を導入しています。
では、役職定年で給与はどのくらい下がるのでしょうか?
実は、役職定年で給与がいくら下がったかを示す公的なデータはほとんどありません。
2007年(平成19年)に人事院が行った「民間企業の勤務条件制度等調査」によると、82.5%の人が役職定年後に年収水準が下がったと答えています。そのうち約75~99%減少した人は78.2%、約50~74%減少した人は20.4%、約50%未満の人は1.4%でした。
また減額されたものは、基本給が36.6%、管理職手当が30.7%、賞与が33.1%という結果が出ています。さらに、管理職手当や賞与が廃止になったと答えている人もいます。
古い調査結果なので現在の状況とは異なるかもしれませんが、役職定年を迎えると、多くの場合、年収が減額となることが考えられます。
事実、民間の調査データにも、年収が減ることを示すものが複数あります。
2018年のダイヤ高齢社会研究財団「50代・60代の働き方に関する調査報告書」によると、役職定年経験者の9割以上が年収減、役職定年後の年収は4割の人が年収50%未満となったと紹介されています。
また、週刊ダイヤモンドの2023年11月25日号の特集「役職定年 部長・課長の残酷」でも役職定年による月給・ボーナス・年収減少幅は「11%〜30%減」が最多で約半数、「31%〜50%減」も2割弱というアンケート結果が示されています。
ただ、役職定年の有無や給与、賞与への影響は企業によります。自分の勤務先では役職定年が導入されているか、また、その場合の待遇はどうなるかについては確認しておいた方がよいでしょう。
なお、退職金については企業により退職金制度が定められているでしょう。そのため役職定年により退職金が減るのか否かは明言できません。自分の勤務先では退職金制度でどのような取り決めになっているか確認することをおすすめします。
役職定年による収入減に備えてやっておきたいこと
役職に就いていた時代は安定した収入があっても、役職定年で基本給や管理職手当、賞与が下がり年収が減るようになると、生活に支障が出る可能性があります。
そんなとき、急に手取りが減って慌てるのではなく、できるだけ早いうちから対策をしておきたいものです。
そのためには、自分の勤め先の役職定年の有無とその後の待遇を確認しておくことです。どれくらい収入が減る見込みなのかを知っておくと、備えるお金の目安が決まります。
また、役職定年で収入が減額されるのであれば、早めに生活費の補てん分を確保できるようにしておきましょう。
その際できることは以下の通りです。
・ライフプランの確認
・生活費の見直し
・NISAを利用して資産運用
・副業が可能であれば検討してみる
家族のライフプランを確認し、教育費や住宅ローンの返済状況などをチェックして、さらに老後の生活費や介護費用、家のリフォーム費用など、考えられる出費を洗い出しておきましょう。そのうえで、今から役職定年になるまでの間に貯蓄を増やしておきたいです。そのためには、生活費を見直して、余分な出費を削る方法を考えてみましょう。
また、お金を運用して増やすならNISAがおすすめです。2024年からは新NISAになり、年間の非課税投資枠が拡大し、非課税期間も無期限化となります。なかでも、つみたて投資枠ならリスクの軽減が期待できる長期・積立・分散投資を実践できるのでおすすめです。預貯金と投資の合わせ技で収入減に備えてお金を確保しておきましょう。
役職定年による収入減に備えよう
勤め先が役職定年を導入している場合、その後の待遇で年収が減る可能性があります。役職定年による収入減は企業にもよりますが、企業によっては年収が50%近く減るところもあるようです。まずは自分の勤め先では役職定年があるかどうか、またその後の待遇について確認しましょう。そして、収入減が見込める場合は、ライフプランや生活費を見直し、生活費を補てんするためにNISAと預貯金による資産運用をできるだけ早く始めることをおすすめします。
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前佛 朋子 ファイナンシャル・プランナー(CFP®)・1級ファイナンシャル・プランニング技能士
2006年よりライターとして活動。節約関連のメルマガ執筆を担当した際、お金の使い方を整える大切さに気付き、ファイナンシャル・プランナーとなる。マネー関連記事を執筆するかたわら、不安を安心に変えるサポートを行うため、家計見直し、お金の整理、ライフプラン、遠距離介護などの相談を受けている。
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