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23/12/02

相続・税金・年金

年収300万円の人が年金を月15万円もらうには、年収をいくら上げなくてはいけないのか

年収300万円の人が年金を月15万円もらうには、年収をいくら上げなくてはいけないのか

老後にもらえる年金額は、大まかにいうと年収が多いほど増えます。では、年収300万円の人が年金を月15万円もらうには、年収をいくら上げなくてはいけないのでしょうか。また、年収が上げられなかった場合でも年金を月15万円にするにはどうしたらいいのでしょうか。一緒に考えてみましょう。

年金額はどうやって決まる?

日本の公的年金には、国民年金と厚生年金があります。国民年金は、20歳から60歳までの人が加入する年金。厚生年金は、会社員や公務員が勤務先経由で加入する年金です。
会社員や公務員は国民年金の「第2号被保険者」といって、毎月の給与から厚生年金保険料(国民年金保険料を含む)を支払っています。それによって老後、国民年金と厚生年金の両方から「老齢年金」をもらうことができます。なお、国民年金の老齢年金を「老齢基礎年金」、厚生年金の老齢年金を「老齢厚生年金」といいます。

老齢基礎年金と老齢厚生年金では、年金額の計算方法が異なります。
老齢基礎年金は、原則20歳〜60歳までの40年間にわたって国民年金保険料を支払えば、満額が受け取れるしくみ。2023年度の満額は79万5000円(67歳以下)となっています。保険料の払込期間が40年に満たない場合は、その分年金が減額されます。

対する老齢厚生年金は、「平均年収÷12×0.005481×加入月数」という式で大まかに計算できます。つまり、平均年収が高く、加入月数が多いほどもらえる年金額が増えます。

厳密には平均年収ではなく、毎月の給与を下の表に当てはめることでわかる「標準報酬月額」から算出する「平均標準報酬月額」(2003年4月以降はこれに賞与を含めた「平均標準報酬額」)をもとに計算されます。

●標準報酬月額の一覧表

日本年金機構のウェブサイトより

もっとも、計算は複雑ですし、自分でできるようになる必要はありません。ご自分の年金額は日本年金機構の「ねんきん定期便」「ねんきんネット」などで確認してください。

公的年金を毎月15万円もらうには?

公的年金を毎月15万円もらうには、年額で180万円の受給が必要です。2023年度の金額で考えた場合、国民年金が満額で79.5万円もらえるので、厚生年金で残りの100.5万円をもらうようにすれば「年金月15万円」が実現します。

たとえば、次のような条件のAさんがいたとします。

【条件】
Aさん(32歳)
・現在、年収300万円(月収25万円)
・23歳から32歳までの10年間の平均年収は300万円
・賞与なし
・国民年金には全期間加入(未納なし)

Aさんが、仮に60歳までの38年間ずっと年収300万円だった場合、もらえる厚生年金の年金額(年額)は、

26万円(月収25万円の標準報酬月額)×0.005481×456か月=約65万円

ですから、年金額の合計(国民年金+厚生年金)は79.5万円+65万円=144.5万円となります。毎月の年金額は12万円ほどとなる計算です。このとき、Aさんが年金を月15万円もらうためには、32歳以降の年収をいくらにすればよいでしょうか。

●60歳まで働いた場合

まずは60歳まで働いた場合を考えてみましょう。
23歳から32歳までの厚生年金額は、
26万円(月収25万円の標準報酬月額)×0.005481×120か月=約17.1万円
ですので、残りの83.4万円をもらうために必要な標準報酬月額を算出すればいいことになります。

◯万円(標準報酬月額)×0.005481×336か月=83.4万円

より、標準報酬月額は45.3万円と算出できます。
しかし、標準報酬月額には「45.3万円」という金額はなく、44万円の次が47万円(上の表の26等級)となっています。標準報酬月額47万円の人の月収(報酬月額)の下限は45.5万円です。したがって、Aさんが厚生年金を100.5万円にするには、32歳から60歳までの年収を単純計算で546万円にしなくてはならないというわけです。年収が倍、まではいきませんが、約1.8倍ですから、かなり厳しそうです。

●65歳まで働いた場合

厚生年金には70歳まで加入して加入期間を伸ばし、もらえる年金額を増やすことができます。Aさんが仮に65歳まで働いて年金を月15万円もらうための年収を同様に計算すると、

◯万円(標準報酬月額)×0.005481×396か月=83.4万円

より、標準報酬月額は38.4万円と算出できます。
標準報酬月額の等級は、38万円の次が41万円(上の表の24等級)です。標準報酬月額41万円の人の月収(報酬月額)の下限は39.5万円ですから、Aさんは32歳から65歳までの年収を474万円にしなければなりません。60歳までよりはいくらか下がりましたが、それでも170万円以上も年収を上げなくてはいけない、というわけです。

●70歳まで働いた場合

では、Aさんが70歳まで働いて年金を月15万円もらうための年収はどうでしょうか。

◯万円(標準報酬月額)×0.005481×456か月=83.4万円

より、標準報酬月額は33.4万円と算出できます。
標準報酬月額の等級は、32万円の次が34万円(上の表の21等級)です。標準報酬月額34万円の人の月収(報酬月額)の下限は33万円ですから、Aさんは32歳から70歳までの年収を396万円にしなければなりません。必要な年収は下がりましたが、60歳以降の再雇用では年収が下がることが多いのが実情です。

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年金を繰り下げ受給するとどうなる?

このようにみていくと、年収アップでの年金額増は厳しいものがあります。よほどの出世をしたり、転職で給与のベースが急上昇したりすれば話は別ですが、それはレアケースでしょう。そこで、年金を繰り下げ受給することを考えましょう。

国民年金・厚生年金の受給開始は原則65歳ですが、希望すれば60〜75歳の間で受け取りを開始することができます。このうち、66〜75歳で年金の受け取りを開始する繰り下げ受給では、1か月繰り下げるごとに0.7%ずつ年金額が増やせます。最長で75歳まで繰り下げでき、年金額は84%増やせます。

Aさんが65歳まで厚生年金に加入して働き、68歳まで3年間国民年金・厚生年金を繰り下げたとします。このとき、年金額は25.2%増えます。国民年金は79.5万円から約99.5万円に増えますので、厚生年金が64.3万円(繰り下げ後の年金額で約80.5万円)になればいい、ということになります。すると、

◯万円(標準報酬月額)×0.005481×396か月=64.3万円

より、29.6万円と算出できます。
標準報酬月額は、28万円の次が30万円(上の表の19等級)です。標準報酬月額30万円の人の月収(報酬月額)の下限は29万円ですから、Aさんは32歳から65歳までの年収を348万円にすればいい、というわけです。繰り下げ受給の効果が大きいことがお分かりいただけると思います。

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年金の繰り下げを視野に入れよう

もらえる年金額を増やすには、年収(=年収から算出される平均標準報酬額)を増やす必要があるのですが、年収はそう簡単に増える時代ではありません。年金額を増やすには、年金の繰り下げを検討した方が現実的でしょう。60歳以降も働くことでもちろん給与ももらえますので、年金の繰り下げも選びやすくなります。年金額を増やすためにも、ぜひ積極的に検討してみてください。

畠山 憲一 Mocha編集長

1979年東京生まれ、埼玉育ち。大学卒業後、経済のことをまったく知らないままマネー本を扱う編集プロダクション・出版社に勤務。そこでゼロから学びつつ十余年にわたり書籍・ムック・雑誌記事などの作成に携わる。その経験を生かし、マネー初心者がわからないところ・つまずきやすいところをやさしく解説することを得意にしている。2018年より現職。ファイナンシャル・プランニング技能士2級。教員免許も保有。趣味はランニング。

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年齢:夫 48歳、私 37歳
住居:賃貸マンション
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貯金:夫(彼) 約4000万円、私 約2500万円
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▼プロフィール
年齢:私 53歳、妻 37歳 娘 小学校6年生
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