23/11/25
新NISAで予想分配金提示型の投資信託を買ってもいい?予想分配金提示型が爆売れしているのはなぜ?
分配金を支払う投資信託のタイプに「予想分配金提示型」と呼ばれるものがあります。
実は、予想分配金提示型の中には、純資産総額が2兆円を超えるほどの人気を集めている商品もあります。今回は、予想分配金提示型の投資信託の仕組みや特徴を確認し、新NISAで予想分配金提示型の投資信託を買ってもいいのかについて、一緒に考えます。
分配金の仕組みはどうなっている?
分配金には、普通分配金と元本払戻金の2種類があります。
普通分配金は得られた運用益から支払われる分配金です。それに対して元本払戻金は、元本の一部を取り崩して支払う分配金です。「特別分配金」とも呼ばれます。
●普通分配金と特別分配金の違い
(株)Money&You作成
分配金が100円だった場合、運用益から100円の普通分配金が出せるときは問題ありません。しかし、普通分配金が50円しか出せないような場合は問題です。このとき、50円の元本払戻金を支払うことで100円の分配金は確保できますが、その分元本は減り、9950円になってしまいました。なお、普通分配金には20.315%の税金がかかりますが、元本払戻金は預けたお金がただ返ってくるだけなので、税金はかかりません。
相場は上げ下げが常なので、どんなプロの投資家であっても、毎月運用益をあげて一定額の分配金支払いをずっと続けることはほぼ不可能です。そのため、毎月分配型・隔月分配型の投資信託は、元本払戻金から分配金を捻出しているケースが多い、というわけです。
元本を取り崩してまで分配金を出してしまうと、投資信託の資産そのものは減ってしまいますし、複利効果も生かせなくなってしまうので、資産そのものが増える期待もできなくなってしまいます。したがって、資産形成層は手を出すべき商品ではありません。
しかし、年金生活者など、一部の人たちには「毎月お金がもらえる商品」のニーズがあるのも事実です。いくらニーズがあるといっても、「元本を取り崩す」だけなのに、高い信託報酬を払うという状態は避けたいですよね。この「元本取り崩し」にならない仕組みとして登場したのが、予想分配提示型の投資信託なのです。
予想分配金提示型ってどんな投資信託?
予想分配金提示型は、投資信託の値段(基準価額)の水準に応じて分配金の金額が決まっている投資信託です。
予想分配金提示型の投資信託で人気がある投資信託のひとつが、「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信D コース毎月決算型(為替ヘッジなし)予想分配金提示型」です。
「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信」にはAコースからEコースまでの5コースがあります(2023年11月17日時点)。下図はこのうち、2023年10月に新規設定されたEコースを除く4コースのデータをまとめたものです。
●アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信
「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信」の目論見書をもとに(株)Money&You作成
アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信の信託報酬はいずれも年1.727%と高いのですが、4コースとも純資産総額が1000億円超。なかでも人気のDコースの純資産総額は2兆円を超えています。そして、5年トータルリターンはAコースとCコースが9%台、BコースとDコースが18%台と、大きく利益を出していることがわかります。
このうち、CコースとDコースが予想分配金提示型の投資信託です。Cコースは為替ヘッジあり、Dコースは為替ヘッジなしという違いがあります。
●「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信」C・Dコースの分配方針
「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信」の目論見書より
アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信の目論見書によると、分配金は「原則毎月 15日の前営業日の基準価額」によって支払われる分配金の額が決まります。
たとえば、今月の基準価額が1万2000円だったとすると、今月の1万口あたりの分配金は300円になります。そして、翌月は1万1000円になった場合、翌月の分配金は200円になります。さらに1万1000円未満になると、「基準価額の水準等を緩和して決定」となっています。
では、CコースとDコースの分配金が実際にどんな感じだったのかを見てみましょう。
●「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信」Cコースの分配実績
「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信」の目論見書をもとに(株)Money&You作成
目論見書によると、Cコースの基準価額は9337円で、分配基準となる1万1000円に達していません。そのため、分配金は2023年2月から6月までの間は0円と、支払われていないことがわかります。
●「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信」Dコースの分配実績
「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信」の目論見書をもとに(株)Money&You作成
一方、Dコースの基準価額は11786円と、分配基準に達しています。分配の推移を見ると、2023年2月と3月は0円でしたが、4月と5月は100円、6月は200円となっています。
運用成績によって、分配金が出ていない月があることが分かります。
予想分配金提示型は、どういう場合に分配金があるのか明示されているので、わかりやすいのが特徴です。隔月分配型では予想分配金提示型の商品はまだ少ないですが、今後増えてくる可能性はありそうです。
新NISAで予想分配金提示型の隔月分配型投資信託を買ってもいい?
アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信のDコースは「毎月分配型」に該当するため、新NISAの「つみたて投資枠」「成長投資枠」ともに購入できません。
しかし、隔月分配型であれば、新NISAの「成長投資枠」で購入できます。
隔月分配型の予想分配金提示型の投資信託は、2023年11月17日時点で7本あります。2023年10月に新規設定された「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信Eコース」は隔月分配型の予想分配金提示型の商品で、新NISAの成長投資枠で購入することができます。今後も隔月分配型の予想分配金提示型は商品数が増えてくる可能性は高いと見ています。
予想分配金提示型の投資信託は元本の取り崩しを少なくして分配金が受け取れる商品なので、一定の利用価値はありますが、分配金を出す以上は複利効果が得られず、効率的にお金を増やすのには向きません。また、購入手数料や信託報酬などの手数料が高い点にも注意が必要です。
信託報酬の控除後のリターンが大きくプラスの状態を維持・継続できるのであれば、新NISAでも買う価値はあると考えます。今後の運用に注目したいところです。
予想分配金提示型は利用価値はあるが複利効果・手数料の面は要注意
予想分配金提示型の投資信託は、基準価額の水準によって支払われる分配金の額が決まります。運用成績によっては分配金がない月もあり、元本払戻金での分配を避ける仕組みになっています。予想分配金提示型は、元本取り崩しが少なく分配金が受け取れるため、利用価値はあります。ただ、複利効果が得られず、手数料が高い点はデメリット。利用する際には注意が必要です。
今回の内容は動画でも紹介しています。ぜひご覧ください。
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頼藤 太希 マネーコンサルタント
(株)Money&You代表取締役。中央大学商学部客員講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生命保険会社にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に現会社を創業し現職へ。ニュースメディア「Mocha(モカ)」、YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」、書籍、講演などを通じて鮮度の高いお金の情報を日々発信している。『はじめての新NISA&iDeCo』(成美堂出版)、『定年後ずっと困らないお金の話』(大和書房)、『マンガと図解 はじめての資産運用』(宝島社)、など書籍100冊、累計170万部超。日本証券アナリスト協会検定会員。宅地建物取引士。ファイナンシャルプランナー(AFP)。日本アクチュアリー会研究会員。X(旧Twitter)→@yorifujitaiki
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