23/08/08
夫婦で年金を月30万円もらうために年収はいくら必要なのか
将来もらえる年金は、老後の暮らしを支える重要なものです。生命保険文化センターが2022年に行った調査によると、老後の最低日常生活費は月額平均23.2万円という結果が出ています。この結果から考えると、年金が月30万円あれば少しは暮らしに余裕が出てきそうです。ただ、1人の年金だけで月30万円もらうのは難しいかもしれません。でも夫婦2人分の年金を合わせれば、月30万円は実現できそうに思いませんか?そこで今回は、夫婦で年金を月30万円もらうのに必要な年収を調べてみました。
夫婦で年金を月30万円もらうための年収
夫婦で年金を月30万円もらうにはどれくらいの年収が必要なのでしょうか?ここでは月30万円が見込める年収を試算してみます。
会社員が将来もらえる年金は、老齢基礎年金と老齢厚生年金から成り立っています。国民年金(就職後は厚生年金)に40年間加入すれば、満額の老齢基礎年金をもらうことができます。老齢基礎年金の満額は、2023年度は79万5000円です。これを月額に換算すると6万6250円です。夫婦共に国民年金(厚生年金)に40年加入している場合、夫婦2人分の老齢基礎年金は以下のようになります。
老齢基礎年金の月額6万6250円×2人=13万2500円(※2023年度の場合)
つまり、老齢厚生年金(報酬比例部分)で以下の金額をもらえれば、年金月30万円を実現できるということです。
30万円-13万2500円=16万7500円
では、老齢厚生年金を月額16万7500円もらうための年収を試算してみましょう。
厚生年金の加入期間は40年(480月)とします。
老齢厚生年金は以下の計算式で求めます。※2003年(平成15年)4月以降、厚生年金に加入した場合
★平均標準報酬額×5.481/1000×2003年4月以降の加入期間の月数
X×5.481/1000×480月=16万7500円×12ヵ月
X=76万4003円
平均標準報酬額は、各月の標準報酬月額と標準賞与額の総額を加入期間で割った金額なので、これを年額に換算すると以下の通りです。
76万4003円×12ヵ月=916万8036円
つまり、年金を月30万円もらうために必要な年収は【916.8万円】ということがわかりました。
なお、標準報酬月額は年収762万円(報酬月額63万5000円)で上限に達します。つまり、年収762万円に加えて、賞与を年154.8万円以上、40年にわたってもらっている必要があるのですから、実際に達成するには極めてハードルが高いことがわかります。
共働き世帯は年金月30万円を実現しやすい?
1人で年金30万円はほぼ不可能ですが、「共働き夫婦で年金月30万円」であれば、2人の平均年収が合わせて916.8万円になればいいので実現できそうです。
たとえば、以下のような組み合わせであれば、月30万円は実現できるかもしれません。
・夫の年収700万円+妻の年収217万円
・夫の年収600万円+妻の年収317万円
・夫の年収500万円+妻の年収417万円
ただ、2人の年収を合わせても約916.8万円に満たない場合は、月30万円は実現できないかもしれません。
たとえば、年収400万円の場合、もらえる老齢厚生年金は年額で約87万6800円、月額に換算すれば約7万3000円です。
夫婦共に年収400万円の場合、
・2人分の老齢基礎年金13万2500円+2人分の老齢厚生年金(7万3000円×2)=27万8500円
となり、月30万円には2万1500円足りません。
こんなとき、夫婦どちらかの年金を繰り下げ受給すれば、月30万円は実現できるかもしれません。
たとえば、夫の老齢厚生年金のみを68歳7ヵ月まで繰り下げれば、3年7か月で30.1% 増額できます。
夫の老齢厚生年金 7万3000円×1.301=9万4973円
すると、68歳7ヵ月以降の夫婦2人の年金は以下のように変わります。
・2人分の老齢基礎年金13万2500円+夫の老齢厚生年金9万4973円+妻の老齢厚生年金7万3000円=30万473円
これで年金月30万円は実現できます。
繰り下げ待機期間中はもらえる年金が減るため、その間の生活費を補てんするための蓄えが必要です。それでも繰り下げ受給で年金を増額させれば、月30万円は実現できる可能性があるのです。
ぜひ、ねんきん定期便で夫婦2人の年金額を確認して、年金月30万円を実現するための受給タイミングを考えてみることをおすすめします。
専業主婦世帯は繰り下げ受給で月30万円を目指す
専業主婦世帯では、妻は老齢基礎年金しかありません。そのため年金を月30万円もらうために、夫は916.8万円の年収が必要になります。こうなると、夫の年収によっては月30万円が実現できないかもしれません。
そこで、できるだけ夫婦の年金を月30万円に近づけるための工夫が必要です。そこで活用したいのが年金の繰り下げ受給です。たとえば妻の老齢基礎年金のみを繰り下げ受給するのも1つの方法です。
老齢基礎年金は40年間国民年金に加入していれば、月額6万6250円もらえます。(※2023年度の場合)
これを70歳まで繰り下げると、42%増額できます。
・6万6250円×1.42=9万4075円
これに夫の老齢基礎年金を合わせれば、以下のようになります。
・9万4075円+6万6250円=16万325円
こうすると、夫の老齢厚生年金が約14万円あれば、月30万円が実現できます。
ここで、夫の老齢厚生年金が14万円になる年収(厚生年金の加入期間は40年間)を試算してみましょう。
X×5.481/1000×480月=14万円×12ヵ月
X=63万8569円
これを年収に換算すると、63万8569円×12ヵ月=766万2828円
夫が年収約766万円であれば、妻の老齢基礎年金を70歳まで繰り下げれば、年金を月30万円もらえるようになるのです。さらに、夫も年金を繰り下げることで、年収のハードルを下げることが可能です。
専業主婦世帯の場合、夫の年収にもよりますが、妻の老齢基礎年金を繰り下げ受給し、繰り下げ待機期間中の蓄えを準備しておけば、年金月30万円に近づけることはできます。また、妻もパートなどで働き厚生年金に加入すれば、年金月30万円は実現しやすくなります。一度、夫婦で年金額を増やすためにできることを話し合ってみましょう。
まとめ
今回、年金を月30万円もらうための年収は試算の結果、916,8万円であることがわかりました。共働き夫婦であれば、2人の年収を合わせて916,8万円になれば、月30万円は実現できます。しかし、専業主婦世帯では実現は難しくなります。そこで夫婦どちらかの年金を繰り下げ受給すれば、月30万円の年金をもらえる可能性が出てきます。もらえる年金が増えれば、その分老後の暮らしは楽になります。どうすれば年金を月30万円もらえるようになるのか、ねんきん定期便を確認しながら夫婦で話し合ってみてはいかがでしょうか。
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前佛 朋子 ファイナンシャル・プランナー(CFP®)・1級ファイナンシャル・プランニング技能士
2006年よりライターとして活動。節約関連のメルマガ執筆を担当した際、お金の使い方を整える大切さに気付き、ファイナンシャル・プランナーとなる。マネー関連記事を執筆するかたわら、不安を安心に変えるサポートを行うため、家計見直し、お金の整理、ライフプラン、遠距離介護などの相談を受けている。
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