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24/05/03

相続・税金・年金

iDeCo「70歳未満まで延長」で掛金・節税額はいくら増やせる?

iDeCo「70歳未満まで延長」で掛金・節税額はいくら増やせる?

iDeCo(個人型確定拠出年金、イデコ)に加入できる要件が現状の「65歳未満」から「70歳未満」に拡大される見通しだと日本経済新聞が報じていました。
現状、原則65歳から公的年金をもらうことができますが、「働けるうちは働く」という方が増えています。もし、iDeCoの加入期間が長くなれば、より長い期間、節税でき、さらに将来もらうiDeCoの年金を増やすことができます。65歳時点で、老後資金をあまり貯められなかった…という人にとって、嬉しい知らせなのではないでしょうか。
今回は、iDeCoの制度拡大の内容についての解説と、実際に5年延長された場合の節税額と受給額の試算をご紹介します。

iDeCoの掛金を出せる年齢が「65歳未満」から「70歳未満」に延長される見通し

2022年5月から、会社員・公務員など(国民年金第2号被保険者)で60歳以上65歳未満の方や、60歳以上65歳未満で国民年金に任意加入している方などが、iDeCoへの新規加入することができるようになりました。

会社員や公務員など(国民年金第2号被保険者)においては、2022年5月時点でiDeCoに加入していれば、60歳以降も引き続き国民年金第2号被保険者の場合、iDeCoに継続的に加入できます。
自営業者や専業主婦(夫)などの国民年金第1・3号被保険者でiDeCoに加入している方は、60歳以降に任意加入被保険者となる場合においてのみ継続できます。

<iDeCoの加入可能年齢>

厚生労働省の資料より

今回新たに、iDeCoに加入できる要件を「70歳未満」に延長しようとしています。図のように、厚生年金・確定給付企業年金(DB)、企業型確定拠出年金(企業型DC)などの加入可能年齢は70歳未満までですが、iDeCoは65歳未満までになっています。70歳未満となれば、他の制度と足並みが揃うことになります。

なお、報道によると、iDeCoの掛け金の支払い期間の延長とともに、掛け金の上限(1年間に拠出できる金額の上限)を引き上げることも検討されています。老後のお金をより手厚く用意できるようになるかもしれません。

iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)をおさらい

iDeCoは自分で出した掛金を運用して老後の年金を作る制度です。60歳以降、国民年金に加入する場合(会社員・公務員・国民年金の任意加入者)は65歳未満まで掛金を出すことができます(その他の方は60歳まで)。

iDeCoでは、毎月一定の金額を積み立て、あらかじめ用意された預金・保険・投資信託などの金融商品を自ら運用します。月額5000円からはじめることができ、上限は、加入者の職業等で違いがあります。
iDeCoの最大の特徴は、拠出時、運用時、受取時に税制優遇が受けられることです。具体的には、次のとおりです。

・拠出時
iDeCoでは、毎年拠出した積立金がすべて所得控除の対象になるため、所得税や住民税を安くすることができます。
・運用時
iDeCoの運用で得た利息、投資での利益には税金がかかりません。
・受取時
iDeCoの資産は、一時金でまとめて受け取るときは退職所得控除、年金で分割して受け取るときは公的年金等控除の対象になり、所得税を抑えることができます。

このようにiDeCoは、老後資金を合理的に準備するにはうってつけの方法といえます。

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仮に「70歳未満」まで5年延長された場合の節税額と受給額を試算

iDeCoの掛け金を出せる期間が、仮に70歳未満まで伸びた場合、どのくらい節税ができ、さらにiDeCoの年金がいくらもらえるのか試算してみましょう。

●iDeCoが5年延長になったら、どのくらい節税できる?

iDeCoで積み立てた掛け金は、全額が「小規模企業共済等掛金控除」という所得控除の対象になります。そのため積立額の「掛け金×12か月分」が、所得税率に応じて節税ができます。以下の条件で、どのくらい節税できるのかざっくりと確認してみましょう。

【条件】
・職業:会社員(企業年金なし)
・年齢:40歳(配偶者なし・扶養家族なし)
・年収:360万円(所得税率5%・住民税率は所得にかかわらず一律10%)
・70歳まで同じ年収で働き続け、iDeCoの掛金を支払ったと仮定

iDeCoの掛け金の月額1万円(年額12万円)を「小規模企業共済等掛金控除」に含めると、次のとおり所得税や住民税を安くすることができます。

・65歳までiDeCoに加入した場合の掛け金に対する所得税・住民税の節税額
(所得税6000円+住民税12000円)×25年=45万円
・70歳までiDeCoに加入した場合の掛け金に対する所得税・住民税の節税額
(所得税6000円+住民税12000円)×5年=9万円
40歳から65歳までの所得税と住民税を合わせた節税額は「45万円」です。さらに5年長くiDeCoを続けることができれば、さらに「9万円」多く節税できます。

●iDeCoで、仮に3%運用できれば、どのくらい資産が増える?

iDeCoの掛け金を毎月1万円・2万円ずつ出して投資信託で運用し、年3%ずつ増やせたとします。40歳から65歳までの25年間運用した場合と、70歳まで30年間運用した場合で、増える金額は次のように変わります。

【40歳~65歳までの25年間3%で運用した場合】
・毎月1万円(年間12万円):元本300万円→元本+運用益約446万円
(+所得税・住民税の節税額合計45万円)
・毎月2万円(年間24万円):元本600万円→元本+運用益約892万円
(+所得税・住民税の節税額合計90万円)

【40歳~70歳までの30年間3%で運用した場合】
・毎月1万円(年間12万円)元本360万円→元本+運用益約583万円
(+所得税・住民税の節税額合計54万円)
・毎月2万円(年間24万円)元本720万円→元本+運用益約1165万円
(+所得税・住民税の節税額合計108万円)

運用期間が5年間延びると、掛金が毎月1万円の場合「約137万円」、毎月2万円の場合はその倍ですから「約273万円」もの差が生まれることがわかります。しかも投資で得た利益(運用益)には通常であれば「20.315%」の税金がかかりますが、iDeCoの運用益は非課税であるため、税金はゼロです。

なお、iDeCoには定期預金がありますが、上記のような投資信託などを使った資産運用もできます。資産運用を行った場合、持っているお金が一時的に目減りしてしまうリスクもあることを認識しておきましょう。

【確定拠出年金(iDeCo)専用】SBI証券

自営業者などにはiDeCo「延長」の恩恵は少ない?

iDeCoの加入期間を70歳未満に延長する案が検討されていることを紹介しました。ただし、これらの対象になるのは厚生年金に加入している人・国民年金に任意加入している人のみです。自営業者など厚生年金に加入しない人や国民年金に任意加入していない人は現状、60歳以降にiDeCoに加入できないため、今回の見直しによる恩恵は少ないといえます。もっとも、詳しい内容はまだ発表されていませんので、今後の動向に注目しておきましょう。

舟本美子 ファイナンシャルプランナー

「大事なお金の価値観を見つけるサポーター」
会計事務所で10年、保険代理店や外資系の保険会社で営業職として14年働いたのち、FPとして独立。あなたに合ったお金との付き合い方を伝え、心豊かに暮らすための情報を発信します。3匹の保護猫と暮らしています。2級ファイナンシャル・プランニング技能士。FP Cafe登録パートナー

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