23/07/20

この記事のライター

鈴木靖子

夏のエアコン「ドライ」「冷房」「送風」の正解は？「エアコン＋扇風機」はお得なのか

夏が近づき、エアコンをつける機会が多くなったご家庭も多いでしょう。昨今の電気代高騰の影響もあり「少しでもお得にエアコンを使いたい」とお考えではないですか？夏のエアコンには「ドライ」「冷房」「送風」の3つの機能がありますが、電気代のかかり方や適した使い方はそれぞれ異なります。

今回は夏のエアコンのそれぞれの機能に触れたうえで、電気代や快適さの面から、どの機能を使うのがおすすめかご紹介します。また、エアコンを扇風機と併用する効果や夏のエアコンの省エネ術も紹介するので、節電しながら快適にエアコンを使いたい人はチェックしてみてください。

エアコンの機能1:室内の水分を外に出す「ドライ」（除湿）

エアコンのドライ（除湿）は、目標の湿度になるまで室内の水分を外に排出する機能です。湿度の高い空気を吸い込んで、エアコン内の熱交換器を使って空気中の水分を集めて外に排出します。

●エアコンのドライ機能には3種類ある

エアコンのドライには「弱冷房除湿」「再熱除湿」「ハイブリッド除湿」の3つがあります。

弱冷房除湿はエアコンが空気中の水分を集める際に下がった空気の温度をそのまま室内に戻します。そのため弱い冷房をかけたように室内の温度も下がるのが特徴です。

一方で再熱除湿は温度の下がった空気をエアコンが温めなおしてから室内に戻します。ですから、弱冷房除湿のように室温が下がることはありません。

「ハイブリッド除湿」は空気中の水分を集めて冷やした空気を、部屋の空気と混ぜて送風する仕組み。近年の高性能なエアコンで見られるタイプです。室温に近づけた空気が部屋に送られるため、室内が寒くなりにくいのが特徴です。

お使いのエアコンにどのタイプのドライ機能が搭載されているかは、エアコンのメーカーや機種によって異なります。エアコンの取扱説明書やリモコンなどに記載されていることが多いので確かめてみましょう。

エアコンの機能2：室内の温度を下げる「冷房」

エアコンの冷房は設定した温度まで室内の空気を冷やす機能です。エアコンが空気中の熱い空気を吸い込んで室外に排出し、冷たい空気を室内に戻します。そのため冷房をつけているときは、室外機から熱い空気が出てきます。

エアコンが温度を下げることを最優先するため、ドライ（弱冷房除湿）よりしっかり室内を冷やす効果があります。

エアコンの機能3：温度や湿度を変えずに空気を巡らせる「送風」

エアコンの送風は室内の空気を巡らせることに特化した機能です。温度や湿度は下がりません。扇風機やサーキュレーターのようなものだと考えてよいでしょう。

また冷房やドライ機能を使ったあとに、送風運転することでエアコン内部のカビを防ぐ効果もあります。エアコン内部のカビを放置すると嫌な臭いだけではなく、アレルギーなどの健康被害につながる可能性もあるので、温度や湿度以外の面でも有用な機能です。

エアコンの機能は「送風」が最もお得だが、「使い分け」も意識して

エアコンの機能を電気代の面で見た場合、最もお得なのは送風です。前述のとおり風が出ているだけなので、冷房やドライより大幅に電気代を抑えられます。冷房をつけるほどではないけど、少し涼みたいときは送風機能がお得です。天井に溜まった暖かい空気をエアコンで循環させたい場合にも便利です。

では、エアコンのドライと冷房では、電気代の面ではどちらがお得なのでしょうか。
東京電力エナジーパートナーの過去の検証データによると、設定温度24度のときの各モードのエアコンの電気代は、次のようになっています。

●設定温度24度のときの電気代比較

※上記検証時(2002年)より現在は電気代が値上がりしているため、金額は冷房とドライの電気代を比較するための参考値として使用しています。

ドライと冷房で比較すると、ドライ（弱冷房除湿）が一番安く、次に冷房、最も電気代がかかるのはドライ（再熱除湿機能）です。ドライでも、再熱除湿の場合は冷房よりも電気代がかかることがわかります。

ただし、エアコンの電気代ばかり気にしすぎると快適さが損なわれたり、熱中症になってしまったりする危険性もあるので注意が必要です。前述のとおり、冷房とドライではそもそもの目的や特徴が異なります。気温が高い日は冷房、蒸し暑い日はドライ、というように無理をせずエアコンを使い分けましょう。

なお、近年は除湿・冷房・送風を自動で切り替えてくれるエアコンも登場しています。AI技術を搭載したエアコンが室内の温度や湿度を感知し、状況に応じて運転モードを切り替えてくれます。モードを自分で切り替える手間がなく、省エネ効果も期待できるので、エアコンを買い替える予定のある方は、このような機能のあるエアコンを選ぶのも一案ですよ。

エアコンをお得に利用するために省エネ術

エアコンは使い方を工夫することで電気代を節約できます。以下の方法は東京電力エナジーパートナーや環境省でも推奨されているので、ぜひ試してみましょう。

●快適に節電するなら「エアコン＋扇風機」の組み合わせが◎

快適さを保ちつつ節電したいなら、エアコンと扇風機を組み合わせて使うのがおすすめです。
環境省によるとエアコンの冷房の設定温度を1℃上げると約13%の消費電力の削減につながるとのこと。扇風機によって空気が巡ることで体感温度は2～3℃下がるといわれているので、エアコンの設定温度を上げても快適さは保たれるでしょう。

扇風機の消費電力はエアコンの約10～20%（機種によって異なります）と圧倒的に少ないので、扇風機の電気代を加味しても「エアコン＋扇風機」の組み合わせはお得といえます。

これらを併用する際のポイントは、扇風機の置き場所と向きです。暖かい空気は天井に、冷たい空気は床に溜まりやすいという特徴があります。そのため室内の冷たい空気を効率よく循環させるために、扇風機はエアコンと向き合うように置き、首を上に向けて使いましょう。

また睡眠中は体温が下がりやすく、体が冷えすぎたり体調不良を起こしたりする危険性があるため、風を体に直接当てないように扇風機の置き場所や向きを工夫することも大切です。

扇風機の代わりに、室内の空気を循環させる目的に特化しているサーキュレーターを使うのもおすすめですよ。

●ちょっとした工夫でさらにお得に

エアコンの冷房やドライ機能を使う際に、ちょっとした工夫をすることで電気代を抑えられます。
たとえば、カーテンやブラインドを閉めると外の熱気を遮断できるので、効率よく室内の温度を下げられます。
またエアコンのフィルターを定期的に掃除するのも効果的です。フィルターにホコリがつまると冷房が効きにくくなり無駄な電力がかかってしまいます。月1回か2回を目安に掃除しておきましょう。東京都「家計の省エネハンドブック2023」によると、フィルターの掃除だけで年間1120円の節約につながるとのことです。

室外機のまわりにモノを置かないことも大切です。室外機の吹き出し口の前にモノがあると効率的に排熱できず、余計な電力を消費してしまうためです。室外機に直射日光が当たるのも排熱効率が悪くなる原因なので、すだれや室外機カバーなどを使って日陰を作るのもおすすめですよ。

まとめ

エアコンの機能の適した使い方は、気温や湿度などによって異なります。電気代の面では送風がもっともお得ですが、エアコンの電気代を過剰に気にして体調を崩しては本末転倒です。気温が高いときには冷房、蒸し暑い日はドライと、エアコンを使い分けるようにしましょう。
また、エアコンと扇風機を併用するなど、工夫することで冷房効率があがりますし、電気代を抑えることにもつながります。
猛暑のなかで節電も求められる今夏ですが、エアコンの機能を正しく理解して、賢く使い分けましょう。

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鈴木靖子 ファイナンシャルプランナー（AFP）、2級DCプランナー（企業年金総合プランナー）

銀行の財務企画や金融機関向けコンサルティングサービスに10年以上従事。企業のお金に関する業務に携わるなか、その経験を個人の生活にも活かしたいという思いからFP資格を取得。現在は金融商品を売らない独立系FPとして執筆や相談業務を中心に活動中。
HP：https://yacco-labo.com

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