23/05/01
加給年金がもらえなくなる7つのケース
加給年金とは、年下の配偶者や未成年の子がいる場合に、老齢厚生年金に加算して受け取れる「家族手当」です。ただし、加給年金を受給するには、一定の条件を満たさなければなりません。本記事では、加給年金を受給する条件や加給年金がもらえなくなる7つのケースについて説明します。
加給年金とは?
厚生年金には「加給年金」という家族手当のような制度があります。加給年金は、65歳に到達して老齢厚生年金をもらうとき、その人によって生計を維持されている家族がいる場合に加算される金額です。
加給年金を受け取る条件は、基本的に次の3つです。
1. 厚生年金加入期間が20年以上
2. 65歳到達以降、老齢厚生年金を受給
3. 生計を維持している65歳未満の配偶者または18歳未満(※1級・2級の障害状態にある場合には20歳未満)の子がいる
なお、加給年金は厚生年金加入者に適用される制度です。自営業者などで厚生年金に加入していない人は、加給年金の対象にはなりません。また、加給年金は自動的に支給されるものではなく、受け取るには年金事務所に届出して手続きする必要があります。
2023年度(令和5年度)の加給年金の金額は、次のとおりです。
●加給年金の金額
筆者作成
なお、配偶者の加給年金額には、上記金額に加え、本人の生年月日によって一定額の特別加算が行われます。
1943年(昭和18年)4月2日以降生まれの人の場合、特別加算額は16万8800円です。配偶者がいて条件を満たしている人は、特別加算を含め、毎年39万7500円の加給年金をもらえることになります。
加給年金がもらえなくなるケースとは?
加給年金は条件を満たしていればもらえますが、条件に該当しなくなった場合には支給停止になります。以下、年下の妻がいる65歳以上の夫を想定し、加給年金がもらえなくなる7つのケースを紹介します。
●加給年金がもらえなくなるケース①:妻が65歳になった
妻が65歳になると、夫に対する加給年金支給は打ち切られます。その代わり、加給年金打ち切り後は、妻自身が65歳以降で受け取る老齢基礎年金に一定額を加算する「振替加算」が行われます。
●加給年金がもらえなくなるケース②:妻の年収が850万円以上
妻の年収が多い場合、夫に生計維持されているとはみなされません。具体的には、妻の年収が850万円以上になれば、加給年金は支給停止になります。
●加給年金がもらえなくなるケース③:妻と別居し生活費を渡していない
加給年金をもらうには、配偶者と生計同一でなければなりません。妻と同居していれば生計同一とみなされます。しかし、妻と別居している場合には、仕送りしている、健康保険の扶養家族となっている等の事情がなければ生計同一とみなされません。別居で財布を完全に別にしてしまうと、加給年金をもらえなくなる可能性があります。
●加給年金がもらえなくなるケース④:離婚した
加給年金は、受給する時点で配偶者がいなければもらえません。妻と離婚したら、その時点から加給年金をもらえなくなります。
●加給年金がもらえなくなるケース⑤:妻が亡くなった
妻と死別したときにも、生計を維持する必要がなくなるため、加給年金は支給停止になります。
●加給年金がもらえなくなるケース⑥:妻の厚生年金加入歴が20年以上で老齢厚生年金を受け取っている
厚生年金加入歴20年以上の妻が老齢厚生年金の受給を開始すると、妻が65歳になっていなくても、加給年金は支給停止になります。
なお、2022年3月までは、妻が老齢厚生年金を受け取る権利を持っていても、実際に受け取っていない限り、夫に加給年金が支給されていました。2022年4月以降は、妻が老齢厚生年金を受け取る権利を持っていれば、在職による支給停止などで受け取っていなくても、夫の加給年金は支給停止になります。
ただし、この扱いには経過措置があり、2022年3月まで加給年金をもらっていた夫は、継続して加給年金を受け取れます。
●加給年金がもらえなくなるケース⑦:老齢厚生年金を繰り下げている
65歳になっても老齢厚生年金を受け取らず繰り下げしている場合、繰り下げている期間中に加給年金のみを受け取ることはできません。加給年金は老齢厚生年金とセットで受け取るものだからです。また、加給年金には、繰り下げによる増額はありません。
繰り下げ受給を選択する場合には、繰り下げにより増える年金と、減ってしまう加給年金を比較して検討しましょう。
まとめ
加給年金を受け取れる期間は限られていますが、条件をみたすならぜひ受け取りたいものです。加給年金をもらい始めても、条件をみたさなくなると支給停止になってしまいます。急に年金受給額が減ることになって慌てないよう、どんな場合に加給年金を受け取れなくなるかも把握しておきましょう。
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森本 由紀 ファイナンシャルプランナー(AFP)・行政書士・離婚カウンセラー
Yurako Office(行政書士ゆらこ事務所)代表。法律事務所でパラリーガルとして経験を積んだ後、2012年に独立。メイン業務の離婚カウンセリングでは、自らの離婚・シングルマザー経験を活かし、離婚してもお金に困らないマインド作りや生活設計のアドバイスに力を入れている。
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