23/03/26
年金平均月額「14万円」もらえない人は全体の何%か
老後にもらう年金。「実際に、年金はいくらもらえるのか?」と、疑問に思うことがあるのではないでしょうか。年金の受給額は加入期間や現役時代の給料などが影響するため、個々に異なります。
今回は、もらえる年金額の平均・分布と「平均ほどもらえない人」の割合をみてみましょう。あわせて、月10万円ほどの年金をもらえる人が、平均以上を目指すための方法も紹介します。
年金、いくらもらっている?
厚生労働省年金局「令和3年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、2021年度(令和3年度)の厚生年金に加入している人のうち、民間企業のサラリーマンが対象となる第1号厚生年金被保険者の厚生年金受給権者数は1618万445人です。
これらの人々が、毎月いくら年金をもらっているのか、1万円ごとの月額階級で示した分布図で確認してみましょう。
●男女別年金月額階級別老齢年金受給権者数
※国民年金+厚生年金の金額
厚生労働省年金局「令和3年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」より作成
平均年金月額は、
・全体:14万3965円
・男性:16万3380円
・女性:10万4686円
となっています。
後述しますが、国民年金は年収に関係なく保険料を納めることで満額もらえます。一方、厚生年金は基本的に年収が高く、加入期間が長いほどもらえる金額が増えるため、受給額は人によって大きく違います。
男性と女性の平均年金月額を比較すると、約6万円の差があります。女性の場合、結婚後、扶養の範囲内で働き、厚生年金には入らないケースがあります。その場合、もらえる年金は老齢基礎年金のみになってしまったり、厚生年金の加入期間が短かったりするのが、平均年金月額が少なくなる理由になると考えられます。
年金を平均額ほどもらえない人の割合は?
年金を平均額ほどもらえない人(全体13万円、男性15万円、女性9万円以下)の人数、割合は以下のとおりです。
●年金を平均額ほどもらえない人の人数・割合
厚生労働省年金局「令和3年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」を参考に筆者作成
男性は43.3%、女性は47.9%、全体で見ると48.1%の方が、年金を平均額ほどもらえないことがわかります。老後にもらえる公的年金は一生涯支給されるため、受給額が多ければ多いほど長生きリスクへの準備ができているといえます。つまり、年金はできるだけ多くもらえるように心掛けることが大切です。
国民年金と厚生年金合わせて「月額14万円」の年金、その年収を試算
会社員や公務員だった人がもらう老齢年金は、1階が老齢基礎年金、2階が老齢厚生年金の2階建てで構成されています。
老齢基礎年金は、20~60歳までの40年間、国民年金に加入していれば、誰もが等しく、満額(2023年度:年額79万5000円・月額6万6250円、67歳以下の場合)がもらえます。
老齢厚生年金は、次の計算式で計算されます。なお、ざっくり計算するため、2003(平成15)年4月以降の計算式のみ表示し、スライド率等については含みません。
●平均標準報酬額×5.481/1000×平成15年4月以後の加入期間
月額14万円の年金をもらう場合の年収を計算するにあたり、前提条件は、次のとおりです。
【前提条件】
会社員(2003年(平成15年)4月以降に就職)
厚生年金保険の加入期間は40年
年金を月14万円もらう場合に必要な老齢厚生年金の月額は「14万円-6万6250円=7万3750円≒7万4000円」(年額88万8000円)
老齢厚生年金を月額7万4000円(年額88万8000円)もらうための年収は、次のとおりです。
●計算式
平均標準報酬額×5.481/1000×480月=88万8000円
平均標準報酬額≒33万7529円
標準報酬月額は34万円(標準報酬月額の21等級となる)
34万円で報酬比例部分を計算すると、89万4499円≒月額7万4000円
老齢基礎年金の月額6万6000円+老齢厚生年金の月額7万4000円=14万円
これより、国民年金と厚生年金を合わせて年金を14万円もらう場合、現役時代の年収は34万円×12ヶ月=408万円以上が目安とわかります。
年金月9~11万円の人が全体の平均「年金月14万円」以上を目指すには
女性の年金額の平均は10万4686円でした。先に紹介した分布図でも、9万円〜11万円の人が多くいることがわかります。この方々は、もう少しの工夫で平均年金月額14万円以上の年金額を達成できそうです。ここでは、年金を増やす方法を4つ紹介します。
●年金を増やす方法1:年金を5年ほど繰り下げる
公的年金は、原則65歳から受給できます。とはいえ、就業先があり、収入の目途があるのであれば、年金の受給開始を繰り下げして、将来もらえる年金を増やすことを目指してみてはどうでしょう。
年金の繰り下げは、66~75歳までの間、1ヶ月単位でできます。年金を繰り下げると、1ヶ月あたり0.7%多く年金をもらえます。
もし70歳まで繰り下げをすると、0.7×60ヶ月=42%、75歳まで繰り下げをすると、0.7×120ヶ月=84%も年金を増額できます。
また、年金の繰り下げは、老齢基礎年金、老齢厚生年金の両方ではなく、どちらか一方だけをえらぶことも可能です。仮に、老齢基礎年金の月額6万6250円だけを70歳まで繰り下げた場合「6万6250円×1.42=9万4075円」となり、毎月もらう年金が2万7825円増えます。さらに、75歳まで繰り下げれば「6万6250円×1.84=12万1900円」となり、毎月もらう年金が5万5650円増えます。
年金の受給開始を繰り下げすれば、その分多くなるといっても、全くもらわずに過ごすのは、難しいかもしれません。そんなときは、どちらか一方だけをもらうようにするだけでも、将来もらう年金は増やせます。
●年金を増やす方法2:60歳以降も働き厚生年金を掛ける
年金を繰り下げるといっても「生活するお金がなければ繰り下げなんてムリ」という方もいるでしょう。その際に考えたいのが、70歳まで働き続けることです。
2021年4月から高年齢者雇用安定法が改定となり、雇用主は70歳まで就業機会を確保することが努力義務となっています。その影響により、最近ではシニアの働き口も増えてきました。この機会を利用しない手はありません。
もし、60~65歳で会社を退職したとしても、再任用で70歳まで働くことを検討してはどうでしょう。そうすれば、給料で生活費が得られるので、年金の繰り下げも選びやすくなります。そのうえ、厚生年金を掛け続けることができ、年金の受給額をさらに増やすことができます。
たとえば、年収240万円で1年間働くと年金額は「20万円×5.481/1000×12か月=1万3154円(年額)」増えます。仮にそのまま、5年間働けば「1万3154円×5年間=6万5772円(年額)」増額します。月額では5481円しか増額にならないかもしれません。
しかし、長く現役でいれば規則正しい生活ができることで、健康が得られます。また、様々な人と接することで、活き活きとした気持ちのハリも得られるでしょう。まさに、一石二鳥といえます。
●年金を増やす方法3:未納している年金があれば任意加入する
国民年金は、20~60歳まで40年間が加入期間です。しかし、20~22歳までの2年間、学生だったため、国民年金を納めていない期間があったり、転職などで年金納付に空白期間があったりする場合があるかもしれません。将来もらう年金は、納付した分だけ支払われるため、保険料納付期間が40年よりも少ないと、その分、もらえる年金が減額されます。
もし、事前に保険料の免除や猶予を受けていれば、10年前までさかのぼって追納できます。しかし、もう追納期間が過ぎているのであれば、年金の任意加入をして40年間を満たすようにしましょう。加入期間が1年増えれば、年金額はおよそ年2万円増えます。ただし、任意加入ができる期間は60~65歳までの5年間だけです。
未納期間の心当たりのある方は、毎年誕生日ごろに送られてくる「ねんきん定期便」で確認しておくようにしましょう。
●年金を増やす方法4:iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)で準備する
iDeCoは自分で出した掛金を運用して老後の年金を作る制度です。60歳以降国民年金に加入する場合(会社員・公務員・国民年金の任意加入者)は65歳未満まで掛金を出すことができます(その他の方は60歳まで)。
iDeCoでは、毎月一定の金額を積み立て、あらかじめ用意された預金・保険・投資信託などの金融商品を自ら運用します。月額5000円からはじめることができ、上限は、加入者の職業等で違いがあります。
iDeCoのメリットは、拠出、運用、受取のタイミングで税金の節約ができること。より効率よく自分年金を準備できます。ただし、iDeCoは老後資金を準備するのが目的となっているため、原則60歳まで引き出すことはできない点は注意が必要です。
まとめ
50歳以上になったら、自分が将来いくらの年金をもらうのか、確認しておきましょう。誕生月に送付される「ねんきん定期便」に目安の受給額が記載されています。もし、少ない場合は、具体的にどんな方法で年金を増やすか検討しましょう。早めの取り組みが年金アップの確実性を高めます。
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舟本美子 ファイナンシャルプランナー
「大事なお金の価値観を見つけるサポーター」
会計事務所で10年、保険代理店や外資系の保険会社で営業職として14年働いたのち、FPとして独立。あなたに合ったお金との付き合い方を伝え、心豊かに暮らすための情報を発信します。3匹の保護猫と暮らしています。2級ファイナンシャル・プランニング技能士。FP Cafe登録パートナー
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