23/03/08
夫が亡くなった後、年金いくらもらえる?iDeCoや退職金はどうなるのか
もしも夫が亡くなったとき、妻がもらえる年金がどうなるのか気になりますね。特に、自分が65歳になって老齢年金をもらえるようになった際、遺族年金はどうなるのでしょうか?そこで今回は、夫に先立たれ残された妻がもらえる年金がどうなるのか、「共働き世帯」「専業主婦世帯」「自営業世帯」の3つのケースについて見ていくとともに、夫が加入していたiDeCoや企業型DCの扱いについてもご紹介します。
夫が亡くなったときにもらえる遺族年金
夫が先に亡くなったとき、残された妻がもらえる年金は遺族年金です。この遺族年金には「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」があります。
●遺族基礎年金
遺族基礎年金とは、国民年金や厚生年金の加入者が亡くなったとき、保険料納付済期間(免除期間を含む)が加入期間の3分の2以上であることなどの要件を満たしている場合に、配偶者あるいは子がもらえる年金です。子の定義は、18歳になった年度の3月31日までの子となっています。また、遺族基礎年金は20歳未満の障害等級が1級または2級の状態にある子がいる場合も同様にもらうことができます。ただ、配偶者には年収850万円未満という所得制限があるので留意しておきましょう。
遺族基礎年金の年金額は、2022年4月からは「77万7800円+子の加算額」となっています。子の加算額は、1人目、2人目の子どもは22万3800円、3人目以降は7万4600円です。年金額は、物価や賃金の変動に応じて毎年見直しが行なわれます。
●遺族厚生年金
遺族厚生年金は、厚生年金の加入者であること、保険料納付済期間が加入期間の3分の2以上であることなどの要件を満たす場合に、配偶者や子など遺族がもらえる年金です。受給には次のような優先順位があり、より順位の高い人が受給します。
1位 子のある妻・子のある55歳以上の夫・子
2位 子のない妻・子のない55歳以上の夫
3位 55歳以上の父母
4位 孫
5位 55歳以上の祖父母
子のない30歳未満の妻は5年間のみの受給です。また、夫・父母・祖父母は55歳以上という年齢制限があり、かつ受給できるのは60歳からとなります。
遺族厚生年金の年金額は、次のように計算します。
・遺族厚生年金の年金額=(A+B)×3/4
A:2003年(平成15年)3月31日以前の加入期間
平均標準報酬月額×7.125/1000×2003年3月31日までの加入期間の月数
B:2003年4月1日以降の加入期間
平均標準報酬額×5.481/1000×2003年4月1日以降の加入期間の月数
このとき、厚生年金の加入期間が300月(25年)未満の場合は、300月とみなして年金額を計算します。
夫に先立たれた妻は、子がいれば遺族基礎年金を、夫が会社員であれば遺族厚生年金をもらえることがわかりました。では、妻が65歳になり自身の老齢年金をもらえるようになったとき、どれくらいの遺族年金を受給できるのか気になりますね。
そこで「共働き世帯」「専業主婦世帯」「自営業世帯」の3つのケースにおいて、妻自身の年金と遺族年金がどうなるか見ていきます。
共働き世帯の妻がもらえる遺族厚生年金は減額になる?
亡くなった人が会社員の場合、遺族厚生年金は次の(1)(2)による計算で求めた額のうち、高いほうに決まります。
(1)(A+B)×3/4で求める年金額
A: 平均標準報酬月額×7.125/1000×2003年3月31日までの加入期間の月数
B: 平均標準報酬額×5.481/1000×2003年4月1日以降の加入期間の月数
(2)(A+B)×3/4で求めた額の3分の2と、妻の老齢厚生年金の2分の1を合計した額
共働きの夫が亡くなったとき、遺された妻がもらえる年金は、自身の老齢厚生年金は全額を受給できますが、遺族厚生年金は年金額が調整されます。どのように調整されるのかというと、遺族厚生年金のうち、妻の老齢厚生年金に相当する額が支給停止になるのです。
支給停止について、次の事例で見てみましょう。
・夫の遺族厚生年金:80万円
・妻の老齢厚生年金:100万円
このように妻の老齢厚生年金のほうが高額になるときは、夫の遺族厚生年金は支給停止となります。
この場合、妻がもらえる年金は、「妻の老齢基礎年金+妻の老齢厚生年金100万円」です。
・夫の遺族厚生年金:120万円
・妻の老齢厚生年金:100万円
この場合、遺族厚生年金から妻の老齢厚生年金に相当する額が支給停止となります。
120万円-100万円=20万円
妻がもらえる年金は、「妻の老齢基礎年金+老齢厚生年金100万円+遺族厚生年金20万円」となります。
会社員の夫が亡き後、専業主婦の妻がもらえる年金は?
夫が会社員で先に亡くなった場合、専業主婦の妻は次の年金をもらうことができます。
●中高齢寡婦加算
中高齢寡婦加算は、夫の死亡時に妻が40歳~65歳未満の場合、
・子のない妻
・子が18歳になった年度の3月31日に達し、遺族基礎年金の受給がなくなった妻
がもらえるものです。
中高齢寡婦加算の額は、58万3400円(2022年度の場合)で、65歳になるまで加算されます。この額は毎年改定となります。
●老齢基礎年金+遺族厚生年金
専業主婦の場合、65歳からは自身の老齢基礎年金と夫の遺族厚生年金を全額受給できます。
自営業の夫が亡くなったときにもらえる妻の年金は?
会社員の夫が亡くなれば遺族厚生年金がもらえますが、自営業の夫が亡くなったときは、妻は自身の老齢基礎年金のみとなります。ただ、次の2つの年金のうち、どちらか一方をもらうことができます。
●寡婦年金
寡婦年金は、国民年金に加入していた夫の保険料納付済期間と保険料免除期間の合計が10年以上のとき、婚姻期間が10年以上の妻が60歳~65歳になるまでもらうことができる年金です。
受給できる年金額は、夫の加入期間のみで計算した老齢基礎年金の4分の3となります。
ただし、夫が老齢基礎年金もしくは障害基礎年金を受給したことがある場合、妻が老齢基礎年金を繰上げ受給している場合は、寡婦年金を受給できません。
●死亡一時金
夫の死亡時、保険料納付済期間が36月以上(3年以上)あるときは、保険料の納付月数に応じて12万円~32万円の死亡一時金をもらうことができます。また、夫が付加保険料も36月以上納めていたときは、死亡一時金に8,500円が加算されます。
ただし、夫が老齢基礎年金もしくは障害基礎年金を受給したことがある場合は、死亡一時金を受給できません。
また、死亡一時金は死亡した日の翌日から2年以内に請求しないと受給できなくなるので注意しましょう。
夫が残したiDeCo・企業型DC・死亡退職金はどうなる?
亡くなった夫がiDeCoや企業型DCに加入していた場合、積み立てていた資金はどうなるのでしょうか?また、会社からもらえる死亡退職金の扱いについてもご紹介します。
●夫が加入していたiDeCoの受取人は?
夫がiDeCoに加入していた場合、遺族は死亡一時金をもらうことができます。その際、死亡一時金の受取人は、指定されている人が最優先でもらえます。受取人が指定されていない場合は、以下のような順位となります。
・第1順位:配偶者
・第2順位:死亡した人と生計を維持していた①子②父母③孫④祖父母⑤兄弟姉妹(数字はもらえる順番)
・第3順位:第2順位以外で死亡した人と生計を維持していた人
・第4順位:死亡した人とは生計を維持していなかった①子②父母③孫④祖父母⑤兄弟姉妹
●iDeCoの死亡一時金、税制優遇はある?
iDeCoの一時金は死亡から3年以内にもらうと「みなし相続財産」となります。
この場合、「500万円×法定相続人の数」が非課税です。このとき、法定相続人の数には相続放棄した人も含みます。
死亡後3年以上5年以内に受け取った場合は、受取人の「一時所得」となるため、所得税の納税が必要となります。
死亡後5年を経過した後に受け取った場合、死亡一時金は「相続財産」として扱われるため、他の相続財産と合わせて相続税の手続きが必要です。
iDeCoの死亡一時金は、3年以内にもらえば税制優遇があるということを覚えておきたいですね。
●夫が加入していた企業型DCはどうなる?
企業型DCの加入者が死亡したときは、遺族が死亡一時金をもらえます。受取人は指定された人が最優先となりますが、通常は以下のように順位が定められています。
・第1順位:配偶者
・第2順位:死亡した人と生計を維持していた①子②父母③孫④祖父母⑤兄弟姉妹(数字はもらえる順番)
・第3順位:第2順位以外で死亡した人と生計を維持していた人
・第4順位:死亡した人とは生計を維持していなかった①子②父母③孫④祖父母⑤兄弟姉妹
●企業型DCの死亡一時金、税制優遇は?
企業型DCの死亡一時金もiDeCoと同じで、以下のような扱いになります。
・死亡後3年以内の受け取り
みなし相続財産となり、「500万円×法定相続人の数」が非課税となります。法定相続人の数は相続放棄した人も含まれます。
・死亡後3年以上5年以内の受け取り
受取人の一時所得となり、所得税の対象となります。
・死亡後5年経過後の受け取り
この場合は相続財産となるため、他の財産と合わせて相続税の手続きが必要になります。
企業型DCの場合も、3年以内に受け取って税制優遇を受けたいですね。
●死亡退職金の扱いはどうなる?
死亡退職金は、会社の退職金規程によって受取人が定められています。基本的には、法定相続人が受取人となるでしょう。
また、死亡退職金は「みなし相続財産」となるため、「500万円×法定相続人の数」が非課税となります。このときの法定相続人の数には相続放棄した人も含みます。非課税枠を超えた分は相続税の対象となるため、他の相続財産と合わせて手続きをします。
ただし、死亡退職金は死亡後3年以内に支給が確定したものが対象です。死亡後3年が経過した後に死亡退職金を受け取った場合は、受取人の「一時所得」になるため、所得税の納税が必要です。
まとめ
もしも夫に先立たれた場合、夫の働き方や子の年齢、妻の年齢に応じて、遺族基礎年金や遺族厚生年金、中高齢寡婦加算などがもらえます。また共働き世帯の場合は、妻がもらう老齢年金との調整が入ることは覚えておきたいですね。
そして夫がiDeCoや企業型DCの加入者の場合は、夫の死後3年以内に死亡一時金をもらえば、みなし相続財産の非課税枠が使えるので、早めにもらうようにしたいです。死亡退職金もみなし相続財産で非課税枠があることを忘れないようにしましょう。
いずれにせよ、万が一の場合、自分はどのような遺族年金をもらえるのか確認しておくことをおすすめします。
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前佛 朋子 ファイナンシャル・プランナー(CFP®)・1級ファイナンシャル・プランニング技能士
2006年よりライターとして活動。節約関連のメルマガ執筆を担当した際、お金の使い方を整える大切さに気付き、ファイナンシャル・プランナーとなる。マネー関連記事を執筆するかたわら、不安を安心に変えるサポートを行うため、家計見直し、お金の整理、ライフプラン、遠距離介護などの相談を受けている。
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