23/09/13
住宅ローン「変動金利」を選ぶ人が想定すべき“最悪の事態”
2022年からの資源高、物価高の影響により、じわじわと長期金利が上昇しています。この金利上昇の影響は、住宅ローンの固定金利型にも影響を与えています。しかし、金利上昇局面では、多くの人が利用しているローンだから大丈夫だとは言えず、変動金利型ローンのほうが返済負担が増えるリスクが高まります。
今回は、変動金利型住宅ローンの基本的なしくみを押さえたうえで、今後どのようなことが起こり得るのか考えておきましょう。
住宅ローンの金利の種類
住宅ローンにつく金利には、大きく分けて固定金利と変動金利の2種類があります。
固定金利型のローンは、最初に決めた期間は金利が変わりません。固定金利の期間が長いほど、金利が高く設定されています。全期間固定金利型は、住宅ローンを借りた時から返済が終わるまで、金利がずっと変わりません。返済額が変わらないので、マネープランが立てやすいといえます。ただし、全期間固定金利型のローンは、変動金利よりも目先の金利が高めに設定されています。長期の固定金利型は、一般的に新発10年物国債の利回りである長期金利の影響を受けます。
一方、変動金利型のローンは、返済の途中で金利が見直されるタイプです。変動金利型は、固定金利型よりも金利が低めに設定されていて、0.3%台の超低金利の金融機関もあります。ただし、将来的に金利が上がっていくと、返済額が増えてしまうというデメリットがあります。変動金利型のローンは、短期金利がベースで、短期プライムレート(銀行が信用力の高い企業に1年以内に貸し出すときの優遇金利)が指標になります。
変動金利型住宅ローンのしくみ
変動金利型のローンの借入時の金利は、当初半年間だけ適用され、それ以後は金利が上がれば利息の負担が増えるしくみになっています。年2回、適用金利の見直しが行われますが、返済額の見直しは金利が上がるたびに変わるわけではなく、5年単位で再計算されます。この毎月の返済額が5年ごとに見直されるしくみを「5年ルール」といいます。
実は金利上昇局面では、「5年ルール」は不利に働きます。適用金利が上がれば利息の負担は増えるからです。しかし、毎月の返済額が増えずに一定なので、元金の支払いに充てられる額が減り、返済を行っていてもローン残高が予定どおりに減らなくなるのです。
さらに、6年目以降の返済額は、「1.25倍ルール」と呼ばれる規定が設けられていて、どんなに返済額が増える場合でも、直前の返済額とくらべて1.25倍までが次の5年間の返済額の上限になります。金利が上がっても返済額が一気に上昇することはありませんが、返済額に占める利息の割合が増えてしまいます。
変動金利型住宅ローンの金利上昇リスク
超低金利が魅力の変動金利型の住宅ローンですが、金利上昇局面のリスクについて、深く考えないで契約をしているという場合もあるようです。実際、目先の金利水準が低いため、住宅金融支援機構の住宅ローン利用者の実態調査では、72.3%の人が変動金利型を選択しています。
変動金利型のローンを利用した場合に考えておくべきことは、未払い利息のことでしょう。もし、急激な金利上昇があれば、負担する利息のほうが返済額より多くなるかもしれません。
この返済額を超えた部分の利息を「未払い利息」といいます。
未払い利息が発生すると、返しても元本が減らないだけではなく、未払いの利息分だけローン残高に組み込まれます。しかも、住宅ローンの最終返済時に、元本の未払いがあれば金融機関から未返済部分の返済を求められます。この場合にローン期間の延長はないので、返済できなければ家を失うという結果になるかもしれません。もし、退職金などで手当できたとしても、老後破綻の予備軍になるのは必至です。
今後の金利動向をどう読むか?
先ほどお話ししたように、固定金利型の住宅ローンと変動金利型の住宅ローンでは、指標となる金利が違います。一般的に金利上昇局面では、市場の動向に左右される固定金利型の方が、変動金利型より先に上がります。変動金利型で借りている人が、変動金利型が上がってきたから固定金利に借換えしようとしても、もうすでに金利が上がってしまって手遅れなのです。
また、2023年7月28日の日銀の金融政策の修正を受け、10年物固定型の住宅ローンの金利を上げることを決めた金融機関もあります。2023年9月は、大手5行(三菱UFJ銀行・三井住友銀行・みずほ銀行・りそな銀行・三井住友信託銀行)がいずれも8月の金利より引き上げを決定しました。
短期金利については、マイナス0.1%を維持するとしていますが、いつマイナス金利が解除されるかは不透明です。物価高や賃金高に伴いインフレ観測が強まれば、いずれ短期金利も上昇することが予想されます。
変動金利型のローンが、金利が低いからという理由で選ぶ時期はすでに終わったと覚悟したほうがよさそうです。
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池田 幸代 株式会社ブリエ 代表取締役 本気の家計プロ®
証券会社に勤務後、結婚。長年の土地問題を解決したいという思いから、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー(AFP)を取得。不動産賃貸業経営。「お客様の夢と希望とともに」をキャッチフレーズに2016年に会社設立。福岡を中心に活動中。FP Cafe登録パートナー
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