21/09/03
親が亡くなったあとの手続きでもらえる・戻ってくるお金6選
50歳を過ぎると、親との別れを経験する方が多くなります。親が亡くなると、多くの手続きに追われることになります。悲しむ間もないほど忙しいかもしれませんが、お金に関する手続きも、忘れてはいけません。
親が亡くなったあとの手続きでもらえる・戻ってくるお金は、申請しないと受け取れないものも多く、知っているかどうかが明暗を分けます。今回は、親が亡くなったときにもらえるお金・戻ってくる6つのお金を解説します。
親が亡くなったときにもらえるお金3選
親が亡くなったときにもらえるお金には、次のようなものがあります。
●親が亡くなったときにもらえるお金1:埋葬料・葬祭費
埋葬料は、亡くなった親が全国健康保険協会の健康保険や各種健康保険組合に加入している場合に支払われる給付金です。支払われる給付額は5万円です。
埋葬料以外に、葬祭費という名目の給付金もあります。葬祭費は、亡くなった親が75歳以上で後期高齢者医療制度の加入者の場合に支払われる給付金です。給付額は自治体によって違いがあり3~7万円が目安となります。埋葬料も葬祭費も申請するのは、喪主など葬式を執り行った人です。
埋葬料も葬祭費も申請をする際は、埋葬料支給申請書や葬祭費支給申請書に必要事項を記入し、葬儀の領収書などを添付します。葬儀を行った人の保険証や運転免許証のコピーなども忘れず準備しましょう。提出の窓口は、社会保険事務所、健康保険組合、市区町村役場などです。
●親が亡くなったときにもらえるお金2:未支給年金
未支給年金とは、亡くなった方が受け取れるはずだった、まだ受け取っていない年金のことです。
老齢基礎年金や老齢厚生年金などの年金を受けている親が亡くなると、年金を受ける権利がなくなります。年金給付は、毎年2月、4月、6月、8月、10月、12月の6期に、それぞれの前月までの分が支払われることになっており、支給されるのは、親が亡くなった月までです。仮に、親が9月に亡くなったのであれば、10月に受け取るはずの8月と9月分の年金が未支給年金となります。この未支給年金は、亡くなった親と生計を同じくしていた子が申請すれば受け取ることができます。
未支給年金を申請する際は、亡くなった親の年金の受給を停止する年金受給権者死亡届と未支給年金・未支払給付金請求書に必要事項を記入し、亡くなった親の年金証書、戸籍謄本のコピー、亡くなった親と生計を同じくしていたことがわかる子の世帯全員の住民票などを添付します。
提出の窓口は、住所を管轄する年金事務所や街角年金相談センターです。これらの手続きの期限は、親が亡くなった日から10~14日以内です。手続きが遅れると、親が亡くなっても生きているとみなされ、場合によっては年金を多く受け取りすぎることもあります。そうなると、後で返金手続きをする必要がでてきますのでご注意ください。
●親が亡くなったときにもらえるお金3:生命保険の死亡保険金・医療保険の入院給付金
亡くなった親が被保険者で生命保険や損害保険などの契約をしている場合、生命保険から支払われる死亡給付金、医療保険から支払われる入院給付金や手術給付金などがあります。
それぞれの給付金、受取人などは、契約内容が記された保険証や保険会社から毎年送付される「ご契約内容のお知らせ」などで確認することができます。実際に給付手続きをする際は、契約先の保険会社に連絡し、申請に必要な書類を取り寄せます。あわせて、死亡診断書や戸籍謄本、給付金の申請をする人の運転免許書のコピーなどが必要になります。
親が亡くなったときに戻ってくるお金3選
親が亡くなったときに戻ってくるお金には、次のようなものがあります。
●親が亡くなったときに戻ってくるお金1:健康保険の過誤納付金
亡くなった親は、国民健康保険や後期高齢者医療制度(75歳以上)に加入しています。その際の保険料は、前納する仕組みになっており、親が亡くなった時点で払い過ぎとなっていれば戻ってきます。国民健康保険料などは、住民税の所得額がベースで決まるため、払い戻される保険料の額は個々に違います。
過誤納付金の手続きは、親が亡くなってから14日以内に、市区町村役場に資格喪失届を提出して行います。そのとき、親の健康保険証、戸籍謄本や死亡届のコピー、手続きをする人の運転免許証なども準備します。手続き後、戻ってくる健康保険料があれば、市区町村から過誤納付金還付請求書兼口座振込依頼書が届きます。そこに必要事項を記入し返送すれば、後日保険料が払い戻されます。
●親が亡くなったときに戻ってくるお金2:高額療養費
国民健康保険や後期高齢者医療制度には、高額療養費という支払った医療費の一部が戻ってくる制度があります。この制度では、1ヶ月間に支払った医療費が自己負担する上限を超えると戻ってくることになっています。
70歳以降になると、さまざまな病気にかかりやすくなり、外来での受診や入院などで医療費が家計にとって大きな負担となるケースがあります。しかし、高額療養費制度を使えば、自己負担限額を越えた分の医療費は払い戻してもらえます。
払い戻しされるボーダーラインは所得によって異なります。一覧にすると以下のようになります。
【高額療養費限度額等一覧表】
厚生労働省のホームページより筆者作成
多数回該当とは、過去12ヶ月以内に3回以上上限額に達した際、4回目から上限額が下がる制度です。
例えば、上記の「一般」区分で確認すると、外来を利用した場合、1ヶ月の上限は1万8000円で、年間の上限は14万4000円になります。もし、外来と入院などがあれば1ヶ月5万7600円が自己負担額の上限となります。しかし、年に3回以上該当すれば、4回目からは4万4400円が自己限度額の上限となり、1万3600円が安くなります。
亡くなった親が高額療養費の多数回該当に該当する場合は、手続きすることで戻ってくるお金が多くなる可能性があります。
手続きは、医療機関窓口に、健康保険証、高齢受給者証を提示して行います。
●親が亡くなったときに戻ってくるお金3:高額介護サービス費
介護保険が適用されるサービスの利用料は、所得に応じ1~3割を負担することになります。補助があるとはいえ、様々な介護サービスを利用すると、自己負担が大きくなってしまうことがあります。
そんな時、1ヶ月の自己負担が限度額を超えると、高額介護サービス費制度で、支払った介護費が戻ってくるため、負担を軽くすることができます。介護を受ける方の年収により月に負担する費用の上限に違いがあります。一覧にすると以下のようになります。
【高額介護サービス費一覧表】
厚生労働省のホームページより筆者作成
一般的な収入の方であれば、介護サービス利用料が月額4万4400円以上となれば、差額が戻ってきます。亡くなった親がこれらの介護サービスを利用していた場合は、お金が戻ってくる可能性があります。
手続きは、高額介護サービス費支給申請書に必要事項を記入し、介護保険被保険者証を添付して行います。提出の窓口は、市区町村役場です。
まとめ
最近、独身の方の割合が増える傾向にあります。総務省統計局「国勢調査報告」によると、2015年の50歳時の未婚割合(生涯未婚率)は男性23.37%、女性14.06%となっています。親が亡くなったあとの手続きを1人ですることになる人も、今後増えてくるでしょう。そうすると、手続きに手が回らないことはもちろん、お金が受け取れなかった・戻ってこなかったということもあるかもしれません。大変ではありますが、必要な手続きの確認は怠らないようにしましょう。
もっとも、手続きに必要な書類は似たり寄ったりです。原本ではなくコピーで対応できるものもあるため、事前にどんな書類が必要になるのか整理しておくと、慌てず速やかに手続きができるでしょう。
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舟本美子 ファイナンシャルプランナー
「大事なお金の価値観を見つけるサポーター」
会計事務所で10年、保険代理店や外資系の保険会社で営業職として14年働いたのち、FPとして独立。あなたに合ったお金との付き合い方を伝え、心豊かに暮らすための情報を発信します。3匹の保護猫と暮らしています。2級ファイナンシャル・プランニング技能士。FP Cafe登録パートナー
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