21/01/30
退職した翌年は確定申告しなさい! 払いすぎた税金が戻ってくる可能性大
確定申告とは、一定の所得がある人が納めなければいけない所得税を、年に一度計算して国に申告することを言います。会社員のときは不要でしたが、なかには退職した翌年に自分で確定申告をすると払いすぎた税金分のお金が戻ってくる可能性がある人もいるのです。
そこで、確定申告をするべきケースと具体的なメリットを紹介します。自分はあてはまるのかを簡単なフローチャートで確認してください。あてはまった方は、退職後の確定申告をもれなく行い、払いすぎた税金分のお金を取り戻しましょう。
昨年退職したこんな人は確定申告をしよう
「なぜ退職したら確定申告が必要なの?」と疑問に思う人もいることでしょう。
会社員のときは給与額や扶養家族の人数などに応じて、毎月の給料から所得税が天引きされ(源泉徴収)、11~12月に会社が年末調整を行うことで所得税額の過不足が正しく精算されています。そのため特定の場合を除き、ほとんどの会社員は確定申告が不要となっています。しかし退職後、年内に再就職しなかった場合、会社は年末調整を行ってくれませんので、自ら確定申告をし、所得税額の過不足を精算する必要があるのです。
もし退職後、年内にほかの会社に転職すれば、年末調整の対象者となるため、再就職先の会社で以前に勤めていた会社の分の源泉徴収票を提出すれば、前職分も含めて年末調整を行ってもらうことができます。
確定申告を行うと税金の還付が受けられる可能性があるパターンをフローチャートにまとめてみました。ご自身のケースはあてはまるかを確認してみてください。
●税金の還付が受けられる可能性をチェック
それでは、確定申告が必要なケースを見ていきましょう。
●①会社を辞めて退職金を受け取った(申告書未提出の場合のみ)
退職金を受け取るときには、「退職所得の受給に関する申告書」を勤務先に提出する必要があります。この申告書を提出しなかった人は、確定申告が必要です。退職金と一般的な給与は課せられる税額が違うため、確定申告によって多く納めた分を還付してもらったり、少なく納めた分を追加で納税したりする必要があるからです。
ただし、退職金をもらったときに「退職所得の受給に関する申請書」を勤務先に提出していれば、退職手当が支払われる際に支払う側の手続きによってきちんと税金の計算が行われているため、原則、確定申告は必要ありません。
●②年の途中に退職して、無職のまま年末を迎えた
年の途中で退職した人は、勤めていた職場で年末調整が受けられません。さらに年内に再就職していない人は、勤務先がないために年末調整の対象外となります。そのため、年末調整の代わりに確定申告を行います。
給与やボーナスの源泉徴収は概算です。実際に源泉徴収された所得税の合計額は本来納めるべき1年間の税額と一致せず、納め過ぎていることがあります。確定申告をすれば、納めすぎた所得税が返ってくるというわけです。
●③結婚退職して、専業主婦(夫)になった
「専業主婦(夫)になったら夫(妻)の扶養に入っている」という認識から、確定申告は無関係と思いがちです。ですが、年内は会社員として働いていた人に限っては確定申告が必要です。その理由は上記②のケースと同じ。手続きの準備をしておきましょう。
また、体調を崩して退職をしたなど何らかの事情があって配偶者の扶養に入った人も上記②のケースと同様になるため、確定申告が必要です。
●④中途退職して転職したものの前職の源泉徴収票が間に合わなかった
年の途中で退職し年内に再就職した人は、前職場を退職する際にもらった源泉徴収票を新しい職場に提出し、前職分と合わせて年末調整を受けます。
しかし、早くから年末調整の作業を行う会社もあるので、年末ギリギリに再就職した場合など、タイミングによっては前職の源泉徴収票の提出が間に合わないことも。そのときは会社のルールにもよりますが、前職の収入に限らず再就職先での収入についても自分で確定申告をしなければいけません。
退職後に確定申告をするメリットとは
退職した年に転職先が決まり、前職の源泉徴収票を提出した人は、再就職先で年末調整が行われるため確定申告は不要です。上記の条件に当てはまる人の中でも、確定申告の手続きをわずらわしく感じる人もいるでしょう。しかし、時間をかけて取り組んだ分だけ良いこともあります。
●①払いすぎた所得税の一部が戻ってくるチャンス
確定申告が必要な退職ケースでは、いずれにおいても前職の給与やボーナスから源泉徴収された所得税のうち、納め過ぎになっている分を取り戻すことができます。また、生命保険料や医療保険料などの控除を受けられるため、併せて申告することで払いすぎた税金が戻ってきます。
ただし、取り戻すためだけの申告は義務ではありません。手続きにも手間がかかるため、戻ってくる税金と申請にかかる時間を秤にかけて、取り組んでみようと思えたならぜひ行ってみてはいかがでしょうか。
●②翌年の国民健康保険料や住民税の支払額が下がることも
確定申告で確定する所得は、次年度の国民健康保険料や住民税などを算出する際の基準にもなっています。社会保険料は、会社員時代は給料からの天引きですが、退職後は全額自己負担となり、重くのしかかってきます。確定申告によって明らかになった合計所得金額によっては、翌年の国民健康保険料や住民税の支払額が下がることもあります。また、結婚退職などで退職時期と婚姻届の提出にブランクがあり、その間は自分で国民健康保険料や保険料を支払っていた人は社会保険料控除の対象になります。
まとめ
退職は人生の変わり目。さまざまな変化に追われてつい忘れてしまいがちですが、確定申告のような手続きもしっかりと行いましょう。初めての確定申告は大変かもしれませんが、億劫がらずできるだけ早めに取り掛かることをおすすめします。
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KIWI ファイナンシャルプランナー・社会保険労務士
長年、金融機関に在籍していた経験を活かし、個人のキャリアプラン、ライフプランありきのお金の相談を得意とする。プライベートでは2児の母。地域の子どもたちに「おかねの役割」や「はたらく意義」を伝える職育アドバイザー活動を行っている。
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