21/01/21
外貨預金でも確定申告が必要? 確定申告が必要となる3つのケース
外貨預金は米ドルやユーロなどの外国の通貨で預ける預金で、利息と為替差益による利益が期待できる金融商品です。外貨預金で得た利益には円預金と同じように税金がかかりますが、確定申告不要の円預金と異なり確定申告が必要な場合があります。
今回は、外貨預金はどのような時に確定申告が必要になるのかについて解説します。
外貨預金の税金はどのくらいかかる?
毎月のお給料に税金がかかるのと同様に、外貨預金で利益が出た場合にも税金がかかります。
外貨預金の利益には2種類あります。
一つは「利息」です。利息は、円の普通預金でも預けていれば自動的に得られます。
もう一つは「為替差益」です。為替差益は、満期時の為替レートが預金スタート時より円安になっていれば利益として得ることができます。逆に円高になれば為替差損となりマイナスが発生します。
たとえば、1ドル=100円のときに100万円分(1万ドル)外貨預金を行い、満期時に1ドル=110円になっていたら、110万円となるので、10万円の利益が生まれます。逆に満記事に1ドル=90円になってしまうと、90万円となるので、10万円の損失が生じるというわけです。
これら外貨預金の利息と為替差益には、税金がかかります。
税金は「所得」から計算されます。所得は、収入からいろいろな経費を差し引いた残りの金額のこと。その性質によって10種類に分類されます。
① 利子所得…公社債、預貯の利子などの所得
② 配当所得…株式の配当金などの所得
③ 不動産所得…家賃、地代収入などの所得
④ 事業所得…農業、漁業、サービス業、その他事業などの所得
⑤ 給与所得…給料、賃金、賞与などの所得
⑥ 退職所得…退職手当などの所得
⑦ 山林所得…山林の伐採または譲渡などの所得
⑧ 譲渡所得…資産(商品、山林などを除く)の譲渡などの所得
⑨ 一時所得…懸賞の賞金、生命保険の満期返戻金などの所得
⑩ 雑所得…上記①~⑨以外の所得
このうち、外貨預金の利息は「利子所得」、為替差益は「雑所得」に分類され税金が計算されます。
外貨預金で利息が得られた場合、利子所得となります。利子所得には20.315%の税金がかかります。
また、為替差益が得られた場合、雑所得となります。雑所得は総合課税といって、他の収入との合計によって税率が5〜45%までの7段階(+住民税10%)と変わります。
外貨預金で確定申告が必要となる3つのケース
円預金の場合、利息にかかる税金は源泉徴収で自動的に引かれますが、外貨預金は利用している金融機関が国内か外国かにより取扱が異なり、確定申告が必要になる場合があります。
また為替差益、為替差損についても確定申告が必要な場合が出てきます。
具体的には、次の3つのケースがあります。
●①給与所得、退職所得以外の所得と為替差益の合計が20万円を超える場合
給与所得、退職所得以外の所得の合計が20万円を超える場合、確定申告が必要です。外貨預金の為替差益が20万円を超えた場合はもちろん、その他の所得との合計で20万円を超えた場合は確定申告が必要になります。
ただし、満期時点の為替レートをあらかじめ決める「為替予約」をしている場合は、源泉徴収されるので確定申告は不要になります。
●②外国の金融機関で外貨預金をしている場合
円預金の利息は源泉分離課税といって、源泉徴収されるので確定申告不要です。しかし、外国の金融機関口座で外貨預金をしている場合、外貨預金から得られる利息は源泉分離課税の対象にならず利子所得として総合課税の対象となるので、確定申告が必要です。
ただ外国の金融機関の外貨預金で利息が出た場合、まず、現地で課税されるのが一般的です。日本で確定申告をすると二重で税金を払うことになります。この二重課税を調整するための外国税額控除の制度があり、外国で納めた一定額までの税金をその年の所得税額から差し引くことができます。
●③為替差損が出て損益通算する場合
給与所得、退職所得以外の所得と為替差益の合計が20万円以下の場合には確定申告不要を選ぶことができますが、外貨預金から為替差損が出た場合、損益通算を使い他で生じている雑所得から外貨預金の損失分を差し引くことができます。
例えば、為替差損が10万円、他の雑所得が15万円あるとします。この場合、本来、課税対象となる雑所得15万円と為替差損10万円を相殺して、5万円にすることができます。
ただし、雑所得同士でなければ損益通算できませんのでご注意ください。
確定申告をしないとどうなるの?
通常、確定申告期間は2月16日から3月15日です。たとえば、2020年中に外貨預金が満期を迎えて為替差益が20万円を超えた場合などには、2021年の確定申告期限内に申告をする必要があります。
うっかり申告を忘れてしまった場合でも、税務署に指摘されると申告によって納める税金のほかに無申告加算税もかかってきます。同じ預金でも円預金は確定申告の必要がないので、外貨預金も確定申告不要と思い込みがちです。為替差益を受け取った場合などは特に申告を忘れてしまいやすいので注意が必要です。
外貨預金から得た利益の確定申告が必要か不要かの判断に迷う時は、早めに税務署や税理士などの専門家に相談するのが一番スムーズです。間違えて無駄なペナルティを支払うようなことがないよう、十分ご注意ください。
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小林 裕子 ひろファイナンシャルプランニング代表 CFP ・1級FP技能士
2008年FP相談業務開始。2014年事務所運営スタイルを金融機関等からの紹介手数料を一切得ず、報酬は顧客からの相談料のみとするフィーオンリーへ移行。「ファイナンシャルプランニングは100人100様」をモットーにライフプランの実行支援を行っている。
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