20/09/20
年収1000万円のサラリーマンと自営業、手取り額はどのくらい変わるのか
年収が1000万円のサラリーマンと自営業の手取りはどのくらい変わってくるのでしょうか?ここでは手取り額を左右する税金や社会保険料などの違いを確認し、サラリーマンと自営業の手取りの違いを見ていきます。
サラリーマンの手取り額はいくら?
まずは基礎知識として、「年収」と「手取り」の違いについて見ておきましょう。
年収とは、税金や社会保険料などが差し引かれる前の年間の総支給額のことです。そして、年収から税金や社会保険料などを差し引いた額が手取りになります。
サラリーマンは源泉徴収票を見れば年収と手取りを確認することができます。自営業の人は社会保険料と税金の金額を確認することで、手取り額を計算することができます。
では、サラリーマンの手取りを試算してみましょう。
<設定内容>
年収1000万円のサラリーマン(年齢38歳・配偶者なし・扶養家族なし)
月収:625,000円×12ヶ月=7,500,000円
賞与:2ヶ月分を6月と12月の2回 1,250,000円×2回=2,500,000円
収入合計10,000,000円
・健康保険料:492,513円
・厚生年金保険料:909,510円
・雇用保険料:30,000円
・所得税(復興特別所得税):816,600円
・住民税:618,700円
注)上記は「全国健康保険協会」に加入している人として試算しています。
健康保険料は勤務先の企業が加入する健康保険組合により異なります。
※出典:全国健康保険協会 令和2年度保険料額表(令和2年9月分から)東京都の場合
サラリーマンの手取りは、年収から社会保険料(健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料、40歳以上の人は介護保険料も)と所得税、住民税を差し引いて求めます。
○上記の設定内容から算出した手取り額
10,000,000円-(492,513円+909,510円+30,000円+816,600円+618,700円)
=7,132,677円
年収1000万円のサラリーマンの手取りは【7,132,677円】と試算できました。
自営業の手取り額は経費で変わる
では、年収1000万円の自営業の場合、手取りはどのくらいになるのでしょうか?
自営業の手取りを左右するのは「経費」です。経費とは、事業を行って収入を得るためにかかる費用のことです。
サラリーマンでも所得税や住民税などを計算する際、この経費に相当するものがあります。「給与所得控除」といいます。年収1000万円の人の場合、給与所得控除は195万円。年収からこれを引いた額805万円から社会保険料や基礎控除などの所得控除(※)を差し引き、課税所得を求めます。これに税率を掛けることで、所得税と住民税が決まるのです。
(※)所得控除とは?
所得(年収から経費分を引いた額)の合計金額から差し引くことができるもののこと。使える控除が多いほど、所得税を減らすことができます。
基礎控除・社会保険料控除・配偶者控除・配偶者特別控除・扶養控除・医療費控除・寄附金控除・生命保険料控除・地震保険料控除・障碍者控除・勤労学生控除・寡婦・寡夫控除・小規模企業共済等掛金控除・雑損控除の14種類。
自営業の場合、年収1000万円から経費を差し引き、社会保険料(国民年金保険料、国民健康保険保険料)や基礎控除、青色申告特別控除(青色申告を申請している人の場合)などの所得控除を差し引いて課税所得を算出し、所得税と住民税を求めます。自営業に認められている経費は上限額が設定されているわけではないため、経費の額によって国民健康保険料や所得税、住民税の額が変わってきます。
ではここで、経費の違いによってどのくらい手取りが変わるのかを見てみましょう。
●経費が0円の場合
仮に、経費が0円だったとしたら、手取りは次のようになります。
<設定内容>
年収(年間の売上)が1000万円の自営業者(年齢38歳・配偶者なし・扶養家族なし)
1年間にかかった経費を0円と想定。
・国民健康保険料:964,600円
・国民年金保険料:198,480円(2020年度の国民年金保険料は1ヶ月あたり16,540円)
・所得税(復興特別所得税):1,183,600円
・住民税:785,600円
注)国民健康保険料は東京都世田谷区の計算方法を参照。
自営業の手取り額は、年収から社会保険料(国民健康保険料、国民年金保険料、40歳以上の人は介護保険料も)と所得税、住民税を差し引いて求めます。
○上記の設定内容から算出した手取り額
10,000,000円-(964,600円+198,480円+1,183,600円+785,600円)
=6,867,720円
年収1000万円(経費は0円)の自営業の手取りは【6,867,720円】と試算できました。
経費がないと、サラリーマンよりも手取りが減ってしまいますね。
●経費が100万円の場合
もっとも、事業を行うのに経費が0円ということはまずありえないでしょう。仮に、経費が100万円かかった場合、手取りは次のように変わります。
<設定内容>
年収(年間の売上)が1000万円の自営業者(年齢38歳・配偶者なし・扶養家族なし)
1年間にかかった経費を100万円と想定。
・国民健康保険料:870,300円
・国民年金保険料:198,480円
・所得税(復興特別所得税):972,700円
・住民税:695,100円
注)国民健康保険料は東京都世田谷区の計算方法を参照。
○上記の設定内容から算出した手取り額
10,000,000円-1,000,000円ー(870,300円+198,480円+972,700円+695,100円)
=6,263,420円
年収1000万円(経費は100万円)の自営業の手取りは【6,263,420円】と試算できました。見かけ上の手取りは経費ゼロのときより減ってしまいました。とはいえ、経費として100万円使っていても、手取りは100万円減ってはいません。
自営業の人は、経費をきちんと計上することによって節税ができます。ただ、いくら節税になるからといって、不法な経費の計上だけは絶対にやめましょう。
自営業が経費にできるものとは?
自営業に認められている経費にはさまざまなものがあります。ここで、主な経費をご紹介します。
「売上原価」:仕入れにかかった費用。
「通信費」:携帯電話代やインターネットのプロバイダー料、切手代、ハガキ代など。
「消耗品費」:パソコン関連のものや備品など10万円未満のものが対象となります。
「旅費交通費」:仕事による移動で交通機関を利用した際の運賃。
「広告宣伝費」:チラシやダイレクトメール、インターネット広告などによる宣伝費用。
「支払手数料」:金融機関の振込手数料や事務手数料、各種証明書の発行手数料など。
「租税公課」:事業税、固定資産税、自動車税、印紙税、登録免許税、不動産取得税など。
「減価償却費」:パソコンなど10万円以上の物品は減価償却で処理します。
「給与賃金」:従業員への給与。
「諸会費」:同業者団体や商工会などの会費。
「会議費」:会議や打ち合わせ時の飲食代など。
「新聞図書費」:仕事に必要な書籍や新聞、雑誌などの購入費。
「地代家賃」:事務所や店舗の貸借料、レンタルオフィスの使用料、月極駐車場代など。
また、次のものは事業で使用している割合を「家事按分」として計上することが可能です。
水道光熱費・地代家賃(自宅の家賃)・携帯電話代・ガソリン代など。
以上のように、さまざまなものが経費で計上できます。事業で使用したものについては領収書やレシートを保管しておきましょう。
ただし、下記のものは経費にはなりませんのでご注意ください。
敷金、所得税、住民税、贈与税、相続税、延滞税、加算税、罰金、事業主本人の給与、事業主の国民年金・健康保険料、健康診断の費用、福利厚生のためのスポーツクラブの会費、住宅ローンの元本など。
経費で計上できるもの、できないものをよく確認し、正しく計上して節税に役立てましょう。
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前佛 朋子 ファイナンシャル・プランナー(CFP®)・1級ファイナンシャル・プランニング技能士
2006年よりライターとして活動。節約関連のメルマガ執筆を担当した際、お金の使い方を整える大切さに気付き、ファイナンシャル・プランナーとなる。マネー関連記事を執筆するかたわら、不安を安心に変えるサポートを行うため、家計見直し、お金の整理、ライフプラン、遠距離介護などの相談を受けている。
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