16/06/04
結婚・離婚・死別… 知っておきたい!人生の転機にかかわる法律知識
6月になりました。ジューンブライドと言われるように、結婚する人が増える時期でもあります。今回は、同時期に幸せな結婚をスタートした2人の女性(架空の人物)を登場させて、その後の人生を辿りながら、人生の転機にかかわる法律知識(民法)について分かりやすくお伝えしていきます。
いざという時に知っておけば、自分の選ぶ道がみえてきます。
人生の大きな転機「結婚」
大好きな彼からの待ちに待ったプロポーズ。
これから始まる彼との新しい人生にウキウキしながら、結婚式の準備をすすめる期間は、本当に幸せな時間です。
A子とB子は、それぞれ付き合っていた彼と結婚することになりました。
結婚には、婚姻届を提出しますが、民法では、このように定められています。
民法739条
婚姻は、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その効力を生ずる。
前項の届出は、当事者双方及び成年の証人2人以上が署名した書面で、又はこれらの者から口頭で、しなければならない
A子は18歳、彼は23歳です。
未成年の結婚にはどんな決まりがあるのでしょうか?
民法737条
未成年の子が婚姻をするには、父母の同意を得なければならない。
父母の一方が同意しないときは、他の一方の同意だけで足りる。父母の一方が知れないとき、死亡したとき、又はその意思を表示することができないときも、同様とする。
A子の場合、父親が大反対でしたが、母親が同意して、婚姻届に署名・捺印してくれたので、形式上、結婚が成立しました。あくまで形式上の結婚成立なので、大反対の父親に対しては、根気よく結婚を許してくれるよう説得することが必要です。
B子は25歳、彼は29歳です。B子は1人娘なので、彼に苗字を変えてもらうことになりました。
民法750条
夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。
夫婦の苗字については、様々な意見があり、長きにわたってさまざまな議論がされています。
「離婚」する際の法律はどうなっているのか
A子の結婚生活は幸せでした。大好きな彼との生活、苦手だった料理も義母に教えてもらい一生懸命覚えました。しかし結婚して2年後、長女が生まれた頃から、意見が衝突することが多くなり、結婚から4年後、ついに離婚を決意します。
2歳の長女の親権はどうなるのでしょうか?
民法819条(抜粋)
父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その一方を親権者と定めなければならない。(2~4項省略)
協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、父又は母の請求によって、協議に代わる審判をすることができる。
子の利益のために必要があると認めるときは、家庭裁判所は、子の親族の請求によって、親権者を他の一方に変更することができる。
A子と夫は話し合いの末、A子を親権者としました。
離婚によってA子の苗字はどうなるのでしょうか。
民法767条
婚姻によって氏を改めた夫又は妻は、協議上の離婚によって婚姻前の氏に復する。
前項の規定により婚姻前の氏に復した夫又は妻は、離婚の日から3箇月以内に戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、離婚の際に称していた氏を称することができる。
離婚によって、変更していた苗字は当然、結婚前の苗字に戻ります。
でも、離婚から3ヶ月以内に届け出ることによって、結婚時の苗字を名乗り続けることもできるということです。
A子は、結婚前の苗字に戻り、親権者として娘を育てていくことになりました。
「死別」した場合はどうなるのか
一方、B子は婿養子という形で結婚し、3人の子宝にも恵まれ、幸せに暮らしていました。しかし、結婚して10年後、突然、B子の夫が事故で他界します。
夫の死後、事務処理や裁判など手続きは数年に渡り、その間にB子と夫の両親との関係は悪化していきました。B子は、いつしか夫の親族と縁を切りたいと考えるようになりました。
夫の親族と正式に縁を切れるのでしょうか?
民法728条
姻族関係は、離婚によって終了する。
夫婦の一方が死亡した場合において、生存配偶者が姻族関係を終了させる意思を表示したときも、前項と同様とする。
結婚によって生じた姻族関係は、離婚すれば当然なくなります。
しかし、死別の場合は、残った配偶者が「姻族関係終了届」を提出しない限り、姻族関係は続き、法的に扶養などの義務をおう可能性が残るのです。
B子は、役所に行って、「姻族関係終了届」を提出しました。
法律だけでなく、何事も例外があることを知っておくべき
ここまで、人生の転機にかかわる法律知識の話をしてきました。
役所に届ける書類・書き方などは、法律によって細かく決められていますが、結婚にも離婚にも、人それぞれ様々な事情があります。
法律で、提出期限が決まっているものに遅れても、例外的に認められることもありますし、法律の文言だけでなく、実際に裁判で出た判決をもとに例外として認められる可能性もあります。
人生の転機にさしかかったとき、進むべき道を選ぶためには、曖昧な情報に振り回されず、法律で裏付けていくことが1番の近道となります。
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杼木 美絵 お金のことから法律までの身近なアドバイザー
CFP®(日本FP協会認定)、行政書士
いざという時に社会保障のしくみが解らず困った経験からCFP®を取得。その後、司法書士事務所の補助者を経て、2014年とちぎFP・行政書士事務所を開業。行政書士として主に許認可申請をしながら、FPとして相談、執筆、セミナーなど滋賀を中心に活動中。1児の母。趣味は掃除。ペットは猫と犬。特技はフルート。
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