18/09/01
募金をしたら税金が安くなる 寄附金控除を賢く利用するには
ある日突然やってくる天災。地震や水害など大きな災害の復旧には時間もお金もかかります。その時私達ができる支援策のひとつが「募金」ですが、実は募金と税金は深く関係しています。そこで、今回は募金をすると税金がどうなるのかを一緒に確認していきましょう。
節税になる募金の種類
「募金」と言っても、駅など街頭での募金や町内・地域での募金、その他NPOやNGO等の団体への募金などいろいろありますが、募金の目的やお金の使い方は様々。「募金するならどこでも同じでしょう?」と思うかもしれませんが、実はそうではありません。
募金には節税になる募金とならない募金があります。
では、どのような募金が節税になるのでしょうか?節税になる募金、それは「控除」を受けられる募金です。
たとえば、日本ユニセフ協会、日本赤十字、自動車安全運転センター、国立大学法人、私立学校法人、社会福祉法人、交通遺児育英会、認定NPO法人等(内閣府ホームページに掲載)などがあります。ただし、学校の入学に関してするものは対象とはなりません。
税金が安くなる仕組み
募金をしたら税金が安くなる仕組みは、「控除」の活用です。控除には所得控除と税額控除の2つがありますが、所得控除は所得から差し引く控除、税額控除は税金から差し引く控除です。
ここで、まず一般的な会社員の税金について見ていきましょう。会社員は毎月の給料やボーナスから税金や社会保険料が天引きされますが、生命保険料や地震保険料などの控除は毎月の給料やボーナスでは考慮されていません。
そこで、年末調整で生命保険料などの控除を引いて1年間の税金を計算します。こうして、あらかじめ天引きされている税金から控除に相当する分の税金が戻ってくることになります。
下記の図〈所得税の計算の流れ:会社員の場合〉で確認していきましょう。
左側に1年間の給料・ボーナスがあります。そこから給与所得控除と、所得控除(①)を差し引いて課税所得を計算します。
そして、課税所得に税率をかけて税額を計算します。その税額から税額控除(②)を差引いて、納める税金が算出されます。
①と②が増えると納める税金が少なくなりますので、手取りは多くなります。
図:所得税の計算の流れ:会社員の場合
募金が①の所得控除の対象となる場合には「寄附金控除」、②の税額控除の対象となる場合には「寄附金特別控除」を受けることができるということです。
募金をする時には控除の対象になるのかどうか、確認しておくといいですね。
寄附金控除を活用する
では、実際にどのくらい節税できるかを見ていきましょう。計算は次のように行います。本来、所得税の他に復興特別所得税、住民税がかかりますが、簡便的に所得税だけで比較します。
所得税の税額=(課税所得-所得控除)×税率
寄附金控除=募金額(年間所得×40%限度)-2000円
つまり、1年間に2000円よりも多く募金すると節税ができます。
(1)年収400万円で一般的な所得税率を5%とすると
1万円募金すると(1万円-2000円)×5%=400円
2万円募金すると(2万円-2000円)×5%=900円の節税となります。
(2)年収500万円で一般的な所得税率を10%とすると
1万円募金すると(1万円-2000円)×10%=800円
2万円募金すると(2万円-2000円)×10%=1800円の節税となります。
(3)年収600万円で一般的な所得税率を20%とすると
1万円募金すると(1万円-2000円)×20%=1600円
2万円募金すると(2万円-2000円)×20%=3600円の節税となります。
募金には税額控除の対象となるものもあり、寄附金税額控除といずれか有利な方を選択することができます。
寄附金税額控除額=(募金額-2000円)×40%(所得税額×25%限度)
寄附金控除、寄附金税額控除とも年末調整では控除を受けることができないため、医療費控除などと同様に確定申告が必要となります(確定申告の際には領収書や税額控除の証明書が必要です)。
この他、自治体の条例で住民税の寄附金控除の対象となる場合がありますが、自治体によっては寄附金控除の対象とならない場合がありますので必ず確認しましょう。
まとめ
募金は「支援したい」という想いを、お金を通じて具体的に実行できるものです。
募金先は様々ありますが、節税ができることで募金する側にとってはより支援がしやすくなり、募金する人の輪も広がりやすくなります。
しかし、募金ならどこでも節税できるというわけではないので注意が必要です。
また、募金によっては所得控除だけが対象となるもの、寄附は対象だが義援金は対象外などということもあります。どのような控除が受けられるかは変更される場合があります。気になる募金先がありましたら、ホームページやパンフレットで確認してみてください。
中島 典子
税理士・社会保険労務士・CFP。
大手外資系会計事務所の税務部門を経て独立。個人・オーナー経営者・起業家のお金の悩みごとをワンストップでトータルサポート。子どもからシニアまでの金融経済教育で活動。ファイナンシャル・プランナー中島典子税理士事務所・広尾麻布相続センター 代表。FP Cafe登録パートナー
記事提供:moneliy
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moneliy マネリー
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