18/08/07
遠距離介護で貯蓄が激減、43歳お子なし女性の悩み
親の老後が気になり始める40代。趣味や旅行に飛び回っている元気な親がいる一方で、病気やケガがきっかけで、入院や自宅療養になるケースもあります。
そんなとき、「子ども世代は仕事や子育てなどの事情でUターンは難しい」「親世代は住み慣れた家や地域で今まで通りの生活をしたい」という具合に対立してしまうことも。
そこで、間をとって遠距離介護を選択する方もいます。しかし、これはこれで大変です。
▼冴子(仮名)さんのプロフィール
年齢:女性 43歳(既婚)
家族:夫 50歳
職業:派遣社員 手取り18万円、ボーナスなし
貯蓄:100万円(普通預金)
月の支出:15万円
[内訳] 生命保険1.5万円、昼食代・雑費2万円、通勤交通費1.5万円、遠距離介護にかかる費用10万円
今回の相談者は、大阪にお住まいの冴子さん(43歳)。宮崎県居住のお母様が「がん」で入院したことをきっかけに、遠距離介護が始まりました。冴子さんは月に3回帰省し、治療の説明や意思決定に付き添ったり、家事が全くできない父のために食事を作り置きしたりしています。帰省にかかる費用はすべて自分のお給料から。このままでは貯蓄ができず、自分の老後が心配と相談に来られました。
割引制度で交通費を節約する
遠距離介護の悩みのひとつに帰省にかかるお金があります。今までは夫の収入で生活し、冴子さんのお給料はできるだけ貯蓄。老後資金の準備は万全だと思っていました。けれども母の入院以降、家計は一変。貯蓄をする余裕はありません。交通費を減らそうと高速バスを利用しても、疲れが残り体力的にも限界が来ています。
そこで冴子さんにお勧めしたいのが、飛行機の介護割引制度。時期にもよりますが、介護目的の移動であれば35%前後の割引が受けられるため、とても魅力的です。
利用できる人の範囲は「JAL」や「ANA」など会社ごとに違っています。たとえば満12歳以上で要介護または要支援認定された方の「二親等以内の親族の方」と「配偶者の兄弟姉妹の配偶者」ならびに「子の配偶者の父母」のように取り決めがあります。なお、スターフライヤーやソラシドエアにも同様の制度はありますが、使える便は少なめです。
申し込みの際は「戸籍謄本・抄本」や「本人確認書類」、「介護保険証・介護認定通知」など書類が必要です。介護認定されていない場合は、たとえ介護のためでも利用できないことに注意しましょう。
申し込みから手続き完了までは1週間程度かかります。時間のある時に手続きだけでもしておくと、急な呼び出しにも慌てず楽に帰省ができるでしょう。新幹線や在来線にも年齢による割引制度や往復割引などがあり、介護認定されていない場合でも使えます。
介護保険制度を利用し人の手も借りる
子どもがおらず仕事も非正規の冴子さん。自由がきくと思われて、こちらの都合はお構いなしで気軽に呼ばれることも負担になっています。他人に力を借りたくない親は多いのですが、いつまで続くか先が見えない遠距離介護。続けていくには、周囲を巻き込むことも考えたいですね。
それにはまず、市町村役場や居住地を管轄している「地域包括支援センター」を訪ねてみてはどうでしょうか。使える制度や、「配食サービス」など民間が行う高齢者向けサービスを教えてもらえます。介護保険の申請も一緒にお願いしておくと、判定によっては「要介護」や「要支援」に認定され、一部負担で介護保険サービスを受けられるようになるかもしれません。
また、有給休暇は限られるので、仕事を続けられないと介護離職を選ぶ人も。仕事と介護の両立のため、会社に介護休暇の申請をすることも検討しましょう。
介護休暇は病気・怪我や高齢などの理由で、家族に介護が必要になった際に取得できる休暇のことで、買い物、通院の付き添い等を行うためにも利用できます。基本無給なのが残念ですが、要介護認定を受けていなくても、病気などによって2週間以上常時介護が必要な場合は取得が可能です。有給とは別枠で1年に5日まで(対象家族が2人以上の場合は10日まで)半日単位で取得することができます。
そもそも介護費用は親自身のお金で賄うことが基本。親のためだとあきらめず、交通費の負担をお願いするなど、相談することも大切です。親も、どのような介護を望むかによって、かかる費用や負担に違いがあるのか理解できるのではないでしょうか。
ひとりで抱え込まないように親子でよく話し合い、無理なく悔いなく介護に取り組みましょう。
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辻本 由香 おふたりさまの暮らしとお金プランナー
企業の会計や大手金融機関での営業など、お金に関する仕事に約30年従事。27歳で阪神大震災、43歳で乳がんを発症した経験から、備えることの大切さを伝える活動を始める。現在は奈良で独立系のFP事務所を開業。セミナーを主としながら、子どものいないご夫婦(DINKS・事実婚)やシングルの方の相談業務、執筆も行っている。著書『がんを生きぬくお金と仕事の相談室』(河出書房新社)。
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