17/08/03
資産運用しないこともリスクに。インフレは忘れた頃にやってくる
日銀総裁がインフレ率を2%にすると高らかに宣言してから4年以上経つのに、インフレ率は概ねゼロにとどまっています。
市場が将来のインフレ率をどの程度と予測しているのか、推測するための数字であるBEIも低位安定しています。BEIとは、物価連動国債の価格から市場参加者の予想しているインフレ率を逆算した値です。インフレが来るかもしれないという事を皆が忘れてしまったのかもしれませんね。
しかし、筆者はインフレの可能性が高いと考えて、金融資産はインフレに強いものを多く持つようにしています。その理由をご説明しましょう。
労働力不足で賃金が上がり、物価も上がる
景気が回復し、労働力不足が深刻化しつつあります。既に非正規労働者の時給は上昇していますし、中小企業も人材確保のために賃金を上げざるを得ない状況です。大企業も、採用難から初任給を引き上げる動きが広まりつつあるようです。こうした状況下、宅配便業界などでは人件費高騰に耐え切れずに値上げをする動きが広がりつつあります。
今後も、景気が回復を続ければ、賃上げが続き、インフレになって行く事が予想されるでしょう。
少し長い目で見れば、景気動向とは別に、少子高齢化による労働力不足が深刻化し、賃金には上昇圧力がかかり続けるでしょう。もしかすると、好況時には賃金が大きく上がり、不況時にも賃金が少し上がるというような経済になるかもしれません。
労働力不足が物不足へ、その結果物価上昇になるかも
労働力不足は、賃金上昇を通じるインフレのみならず、供給不足によるインフレをもたらすかもしれません。極端に言えば、「現役世代は高齢者の介護に忙しくて、他の産業で働ける人がいない」時代が来るかも知れないのです。物なら輸入すれば良いでしょうが、サービスは輸入出来ないので、宅配便の値段などは大幅に上がるかもしれませんね。
これまで上がらなかったから今後も、と考えるのは危険
「アベノミクスで景気が回復を始めて4年経ってもインフレにならないのだから、今後も上がらないだろう」と考える人がいるかもしれませんが、そうでは無いと思います。これまでは、景気回復で失業者が減ってくる過程だったのですが、失業者がいなくなると、給料が上がりだすのです。
氷を熱すると氷が溶けますが、氷が溶け終わると水温が上がります。それと同じイメージです。
大地震のリスクも考えて資産運用したい
大地震が来れば物価が何倍にもなりかねません。復興資材が大量に必要となる一方で、生産能力が激減するかも知れないからです。輸入すれば良いと思うでしょうが、輸入のための外貨購入が殺到すると、外貨が何倍にも値上がりするかも知れません。
可能性は小さいでしょうが、そうなったら老後資金がいくら貯めてあっても足りなくなってしまうでしょう。
以上を総合すると、貯めたお金はインフレに強い資産で持っておく方が安全ですね。
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塚崎 公義 経済評論家
1981年東京大学法学部卒後、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。主に経済調査関係の仕事に従事した後、2005年に銀行を退職して久留米大学へ。現在は久留米大学商学部教授であるが、当サイトへの寄稿は勤務先とは関係なく個人として行っているため、肩書きは経済評論家と記す。
「退職金貧乏 定年後の『お金』の話」「老後破産しないためのお金の教科書」「増補改訂よくわかる日本経済入門」「世界でいちばんやさしくて役立つ経済の教科書」「日本経済が黄金期に入ったこれだけの理由」など著書多数。
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