25/12/19
高額療養費制度「外来特例」見直しによる自己負担の増額は意外と大きい

2025年11月21日に開かれた厚生労働省の社会保障審議会「高額療養費制度の在り方に関する専門委員会」では、高額療養費制度における70歳以上の「外来特例」の見直しが議題となり、世代間の給付と負担のバランスを鑑み見直すべきだという意見が相次ぎました。そこで政府は12月中に方向性をまとめる方針を示しており、議論の行方が注目されています。もし外来特例の見直しが実施されたら、医療費の自己負担額はどれくらい増えるのでしょうか?
外来特例とは?なぜ今、見直しが議論されているの?
「外来特例」とは、高額療養費制度において70歳以上で所得が一定以下の人に対し、外来受診費の上限額を引き下げるしくみのことです。高齢になると外来を受診する機会が増える傾向にあり、家計への負担を抑えるために外来特例が設けられました。
しかし、政府は2024年12月に高額療養費制度の見直し方針を公表し、外来特例を含めた自己負担上限額の引き上げを提示していました。当初は2025年8月から自己負担上限額が引き上げられる予定でしたが、患者団体などの反発が強く、2025年3月に見送りとなっています。
高額療養費制度の見直しは見送られましたが、現役世代が納める社会保険料の負担が膨らむ問題が消えたわけでなく、政府では高額療養費制度についての議論が続けられています。
外来特例の見直しで自己負担額はいくら増える見込みなの?
外来特例の見直しは決定したわけではないので、どれくらいの負担増になるのか正式な金額は未定です。そこで、2024年12月に公表された高額療養費制度の見直し案における外来特例の引き上げ額から、どれくらい負担が増える見込みなのか見てみましょう。
<外来特例の引き上げ額(2024年12月の見直し案)>

厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」「高額療養費制度の見直しについて」「大阪府後期高齢者医療広域連合 自己負担割合」をもとに筆者作成
2024年12月の見直し案では、住民税非課税世帯(年週80万円以下)に関しては変更なしですが、住民税非課税世帯(年収80万円超)においては8000円→1万3000円で、月々の負担は5000円増、年間では6万円増となっていました。
医療費が1割負担の人たちは1万8000円→2万円で月々2000円増、年間では2万4000円増となりますが、2割負担の場合は1万8000円→2万8000円で月々1万円増、年間では12万円増となります。
年収によっては外来受診費が大幅な引き上げとなるため、外来特例の見直しが決まれば家計へのダメージは避けられないでしょう。
外来特例の見直し、今後の行方は?
外来特例が2024年12月の高額療養費制度の見直しと同程度の引き上げになると、年収によっては医療費の負担が大幅に増すことになるかもしれません。それに気になる議論があります。2025年11月5日に実施された財務省の財政制度審議会の分科会において、現役世代の負担軽減を優先する観点から、医療費における70歳以上の負担割合を3割に引き上げる案が示されました。この案については後日、厚生労働大臣が現実的ではないと否定的な考えを示していましたが、今後どうなるかは未定です。
高額療養費制度の見直しに動く背景から見えてくること
当初実施する予定だった高額療養費制度の見直しは、現役世代の社会保険料の負担を軽減すための施策でした。医療費の自己負担上限額が引き上がれば公的医療制度の給付を削減できるため、現役世代の社会保険料の負担が軽減できる見込みです。また、2025年11月21日の専門委員会では世代間の給付と負担のバランスを鑑みると見直しが必要との意見が相次いでいることから、高額療養費制度の見直しは避けられないかもしれません。政府がどのような方向で進めていくのか、今後の動向に注目していきましょう。
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前佛 朋子 ファイナンシャル・プランナー(CFP®)・1級ファイナンシャル・プランニング技能士
2006年よりライターとして活動。節約関連のメルマガ執筆を担当した際、お金の使い方を整える大切さに気付き、ファイナンシャル・プランナーとなる。マネー関連記事を執筆するかたわら、不安を安心に変えるサポートを行うため、家計見直し、お金の整理、ライフプラン、遠距離介護などの相談を受けている。
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