24/12/29
定年後「年金以外」の収入源5選
「こんなはずじゃなかった」。悠々自適な毎日を過ごすはずが、時間を持て余してしまいすることがない。そして、お金は出ていくばかりで、資産は目減りする一方…。
定年退職後の具体的な老後の過ごし方がイメージできていない人は、理想とはかけ離れた老後を過ごすことになるかもしれません。昔とは違って退職すると同時に年金をもらうことはできないし、退職金も大きく増えていません。退職したら、ひとまず旅行にでも行って、一度ゆっくりしてから老後のことを考えようと思っていませんか。
定年後のことは、会社を辞めてから考えても何とかなっていたのは昔の話です。豊かな老後を過ごすためには、公的年金では足りない部分をどう補い準備していくかどうかで、心配なく暮らせるかが決まります。
今回は、定年後の年金以外の収入源を考えていきましょう。
高齢者の暮らしぶりはどうなっている?
老後の暮らしがなかなか想像できないという人は、総務省の「家計調査報告(家計収支編)2023年」の統計を参考にしてみましょう。
この調査の65歳以上の夫婦のみの無職世帯の平均は、毎月28万2496円の支出に対して、公的年金が21万8441円、その他の収入が2万61399円で、不足分が3万7916円になっています。2022年の調査にくらべると、不足分は約1万5000円増えています。
一方、65歳以上の単身無職世帯の平均の場合は、毎月の支出が15万7673円に対し、公的年金が11万8230円、その他の収入が8675円、不足分が3万768円です。単身世帯の場合も不足額は2022年の調査にくらべると、約1万円増えています。
この1年間においても、食料品など生活に欠かせないものが数回にわたって値上がりし、私たちの生活に大きく影響を与えています。いずれにおいても、毎月年金だけでは暮らせていない実状が見えてきます。そうなると年金で足りない分は、自分でどうにかしなくてはなりません。
<65歳以上の夫婦のみの無職世帯>
総務省「家計調査報告(家計収支編)2023年」より
<65歳以上の単身無職世帯>
総務省「家計調査報告(家計収支編)2023年」より
また、厚生労働省「国民生活基礎調査」によれば、公的年金、恩給が家計収入のすべてとなっている世帯の割合は2021年が24.9%、2022年が44.0%、2023年が41.7%となっており、2022年以降は4割以上の世帯が年金のみで暮らしていることがわかります。
平均的な暮らしぶりでも公的年金だけでは賄えていませんし、物価の上昇もあるので、年金だけだとより苦しい生活をせざるを得ないということになります。
これからの物価上昇も考慮に入れると、年金以外の収入源を考えておかなければなりません。年金以外の収入があれば、単純に生活が安定し、心にゆとりが生まれます。
年金以外の収入源には、たとえば次のものがあります。
年金以外の収入源1:再雇用制度
会社が定年を定める場合には、60歳以上とする必要があり、定年の年齢を65歳未満にしている会社は、65歳までの安定した雇用機会を確保しなければなりません。厚生労働省の「令和5年高年齢者雇用状況等報告」によれば、全企業の66.4%が60歳定年としていますが、その割合は前年よりも1.7%減少。かわりに、定年を65歳とする企業が1.3%増の23.5%、70歳とする企業が0.2%増の2.3%などと、増加傾向にあります。
再雇用制度は、一度退職した従業員を再雇用する制度です。本人が希望する場合には、定年後も引き続き働くことができます。「令和5年高年齢者雇用状況等報告」によれば、60歳定年の企業において、令和4年6月1日から令和5年5月31日までの1年間では、定年になった者のうち、継続雇用された人は87.4%と前年にくらべ0.3ポイント増加しています。高齢化の進展とともに、60歳を超えて働くことが普通になってきました。最近では、2割程度の会社で65歳定年を導入しており、60歳定年に次いで多くなっています。
定年まで働いた従業員は、その会社で長年にわたって培った専門知識やスキル、経験などを持っています。新たに採用したり、教育したりするコストがかからず、人手不足の解消になります。しかし、再雇用制度では正社員から契約社員・嘱託社員などに雇用形態を変えて働くため、給与水準は前の50~70%程度になることが多いようです。
国税庁の「民間給与実態統計調査」令和5年分の年齢階層別の平均給与は、
【男性】
・55~59歳 711万8000円
・60~64歳 572万5000円
・65~69歳 456万2000円
【女性】
・55~59歳 545万1000円
・60~64歳 445万1000円
・65~69歳 353万6000円
となっており、年齢が高くなるほど給与が減る傾向にあります。
頭ではわかっていても、50歳代より60歳以降の給与はガクンと下がることを心情的にも受け入れなければなりません。
もっとも、会社などで働いて加入条件に当てはまれば、健康保険や厚生年金保険に加入することができます。健康保険の負担は労使折半なので、国民健康保険よりも自己負担を軽減でき、給与をもらいながら年金を増やせるメリットがあります。
年金以外の収入源2:パートやアルバイト
令和6年版高齢社会白書によれば、60歳以降は、男女ともに非正規で働く比率が上昇しています。男性の場合、60~64歳で44.4%、65~69歳67.6%となっています。女性の場合では、60~64歳で73.3%、65~69歳で84.8%となっていて、男性より女性の方が非正規で働く比率は高くなっています。しかし、収入のある仕事をしている人の約4割が「働けるうちはいつまでも働きたい」と回答しています。何らかの仕事をすることによって、収入を得られることが「やりがい」や「生きがい」につながっているのです。
働くといっても、現役世代のように仕事中心ではなく、自分の趣味や余暇を楽しみながら週2~3日働いたり、1日3時間だけ働いたりするという具合に、すきま時間で働くパートやアルバイトという就業形態もあります。時間給で働くことが多いので大きな金額の給与は望めませんが、社会とのつながりを持ちながら、体力的に負荷がかからずに働けるメリットがあります。
年金以外の収入源3:シニア起業
老後は自分の得意とする分野や技能を活かして、起業するという選択肢もあります。会社に雇われるのではなく、自分のペースで働くので、ストレスが比較的少ない働き方ができます。
政府の施策では、年齢に関係なく働ける社会の実現を目指して、環境整備を行っています。その1つとして高齢期の起業の支援があります。たとえば、起業セミナーを開催して起業に必要な知識を伝えたり、起業のアイディアや仲間を見つけたりできるようにしています。また、日本政策金融公庫が新規開業資金の融資を特別利率で行っています。
開業するために資格が必要な場合は、定年前から資格取得のために勉強を始めておく必要があります。事業が軌道に乗るまでに時間を要しますし、開業資金も準備しなくてはならないので、定年前からの計画的な準備が必要になります。
雇用保険には、教育訓練給付制度があります。一定の受給要件を満たす方が、厚生労働大臣の指定を受けた教育訓練を受講・終了した場合に、その費用の一部が教育訓練給付金として支給されるものです。仕事をしながらスキルアップを図るだけではなく、将来の起業につながる資格を取得しておくのもよいでしょう。
年金以外の収入源4:自分の時間やスキルを売る
インターネットの発達により、いろいろなプラットホームが登場しています。副業の中で注目されているのが、個人が持つ特技やスキルを他人に提供することでお金を稼ぐ方法の「スキルシェア」です。「ココナラ」「クラウドワークス」「ランサーズ」などのように、自分の知識・スキル・経験を気軽に時間単位で売り買いでき、仕事や相談につなげるサービスがあります。
たとえば、ハンドメイドアクセサリー作りや料理、語学、写真などの趣味の延長で学びたい人と教える人をつなぐものや、データ入力、文章作成、コンサルティングを依頼するといった感じのものです。在宅ワークができる案件も多く、「愚痴を聞きます」「話を聞きます」といった単発案件から業務委託までさまざまな仕事が集まります。
また、特別なスキルがなくても、個人の時間を30分単位で売買できるサービスやペットの散歩など日常のちょっとした用事を依頼できるサービスもあります。ガッツリ稼ぐのも、ムリのない範囲で働くのも自分の裁量次第で決められます。
年金以外の収入源5:自分年金を用意する
公的年金で老後の生活費をまかなえないのなら、iDeCo(個人型確定拠出年金)やNISA、個人年金保険で自分年金を用意するという考え方もあります。長い時間をかけて積立を行いながら運用していけば、分散投資ができるのでリスクを抑える期待ができます。
iDeCoは税制の優遇が大きい制度で、毎年の掛金を全額所得控除して所得税や住民税を安くすることができます。受け取る場合にも、税制で優遇措置があります。またNISAは2024年1月から生涯1800万円までの投資元本における運用益、利金・配当金に税金が無期限でかかりませんので、ぜひ利用したい制度です。高配当の株式を購入し、配当を受け取りながら値上がり益を目指したり、無理のない範囲でコツコツ積立投資を続けたり、自分の投資スタイルに応じて使い分けることができます。
年金以外の収入源を得るにあたって注意すること
老後の主な収入源は、公的年金以外には勤労収入と資産収入に分けられます。元気に働けるうちはいいのですが、年齢や体力によっては働けなくなる可能性があるので、複数の収入源を得ることが大切になります。勤労収入に頼り過ぎずに、健康面に気をつけながら身体にムリのない範囲で働きましょう。
また、投資で不労所得をねらって、投資初心者が退職金をつぎ込んでしまうケースがあります。退職金が入ると気が大きくなりますが、退職金は大切な生活資産です。生活資産でハイリスクな投資に挑戦しないことも重要です。不動産投資での家賃収入や株式の配当金に憧れるなら、それなりの勉強をして退職金以外の別のお金で準備しないと大やけどを負かねません。
いずれの方法で公的年金以外の収入を得るにせよ、どんな生活をしたいのか40代前後から理想を描き、イメージに近づくための行動を取らなければ「思いどおり」を叶えることはできません。年金制度や税制などの改正も頻繁に行われています。新しい改正情報も織り込みながら、自分のベストは何なのかを意識して人生100年時代のプランを思い描いておきましょう。
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池田 幸代 株式会社ブリエ 代表取締役 本気の家計プロ®
証券会社に勤務後、結婚。長年の土地問題を解決したいという思いから、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー(AFP)を取得。不動産賃貸業経営。「お客様の夢と希望とともに」をキャッチフレーズに2016年に会社設立。福岡を中心に活動中。FP Cafe登録パートナー
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