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23/08/19

相続・税金・年金

税負担が増え続ける無限増税、ターゲットになった「非課税所得等」って何?

税負担が増え続ける無限増税、ターゲットになった「非課税所得等」って何?

最近、話題になっている「サラリーマン増税」。政府税制調査会の中期答申では、税制のあり方を見直そうという案が発表されました。その中で、課税対象としてピックアップされているのがサラリーマンの通勤手当や現物支給であることから、サラリーマンの税負担が懸念されます。そこで、中期答申でどのようなものが課税対象のターゲットにされているのか見ていきます。

政府税制調査会の中期答申で税制の見直し案が浮上

2023年6月30日に、岸田首相の諮問機関である政府税制調査会から岸田首相へ中期答申が提出されました。そこには「わが国税制の現状と課題―令和時代の構造変化と税制のあり方―」としてまとめられています。

その中では、経済社会を巡る状況と今後の「あるべき税制」について考えていきたいということが書かれています。要するに、経済社会の構造変化に見合うように税制を見直す方向で動いていくのでしょう。今後は課税対象となるものが変わっていくのかもしれません。それが垣間見られるのが「経済社会の構造変化を踏まえた「あるべき税制」の構築」の対象として取り上げられた「非課税所得等」です。

個人の所得金額の中には、通勤費など給与所得者へ実費弁償としての性格を持つもの、社会保障給付など生活を保障する性格を持つものなど、その性質や政策的要請により非課税や免税となっている所得があります。それが「非課税所得等」です。

そんな非課税所得等に対し、中期答申では以下のように明記されています。

『本来、所得は漏れなく、包括的に捉えられるべきであることを踏まえ、経済社会の構造変化の中で非課税等とされる意義が薄れてきていると見られるものがある場合には、そのあり方について検討を加えることが必要です。
特に、政策的要請により非課税等とされている制度については、長寿命化により、そうした所得がこれまで以上に蓄積していく可能性等に鑑みれば、他の所得との公平性や中立性の観点から妥当であるかについて、政策的配慮の必要性も踏まえつつ注意深く検討する必要があります。』
税制調査会「わが国税制の現状と課題―令和時代の構造変化と税制のあり方―」より引用

つまり、非課税を続けることが経済社会の構造変化に見合っていないと思われるものは課税対象にされる可能性があります。また、平均寿命が延び続ける今、勤続年数の長期化で蓄積していく非課税所得があれば、課税対象に変わることが考えられます。岸田首相は、増税はしないと明言していますが、場合によっては私たちの負担が増える可能性はあるのです。

税制見直しのターゲットとなった「非課税所得等」とは?

今回の中期答申で見直しの対象として挙げられているのは、以下の非課税所得です。

・通勤手当
・サラリーマンの現物支給の社宅貸与、食事支給、従業員割引
・失業等給付
・遺族年金
・給付型奨学金
・生活保護給付 など

ここで、上記に挙げたものがなぜ非課税になるのか解説しましょう。

●通勤手当

サラリーマンは、少ない家賃負担で社宅に住むことができたり、昼食など従業員へ食事を提供したりと、金銭以外のものが支給される現物給与があります。その現物給与の中には金銭を受け取る給与とは性質が異なるものや、政策上特別の配慮を要するものがあります。そんな特定の現物給与は非課税となっているのです。

●失業等給付

会社を退職すると、次の職が見つかるまでは収入が途絶えてしまいます。そんなとき、生活費の心配をすることなく再就職活動ができるよう、生活保障として支給されているのが雇用保険の失業給付です。もし失業給付が課税されれば、額面が減ってしまい、生活が立ち行かなくなることがあるかもしれません。このように失業給付は生活保障という性質があることから、政策的配慮として非課税となっているのです。

●遺族年金

遺族年金は、亡くなった人に生活を維持されていた家族の生活を保障するために支給される年金です。これは生活保障のための支給であることから非課税になっています。

また、非課税であることは法律でも定められています。
遺族厚生年金は、厚生年金保険法第41条により、下記のように定められています。
「公課の禁止:租税その他の公課は、保険給付として支給を受けた金銭を標準として、課することができない。ただし、老齢厚生年金については、この限りでない。」

また、遺族基礎年金については、国民年金法第25条で、次のように定められています。 「公課の禁止:租税その他の公課は、給付として支給を受けた金銭を標準として、課することができない。ただし、老齢基礎年金及び付加年金については、この限りでない。」

このように、遺族年金は法律によって非課税所得と取り決められているのです。

●給付型奨学金

所得税法第9条では、「学資に充てるため給付される金品」は非課税所得と定められています。給付型奨学金は学費に充てられるものであり、かつ奨学金の返済に充てられるものであるため、政策的配慮として非課税所得になると認められています。

●生活保護給付

生活保護費は最低限の生活を送るために支給されるものです。最低限の生活保障という観点から、政策的配慮として生活保護給付は非課税所得となっています。

以上のように、非課税所得とされているものは、政策的配慮や法律により非課税となっていることは覚えておきたいですね。

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結局、私たちは増税・負担増を強いられるのか?

今回、課税対象候補とされている非課税所得をご紹介しましたが、本当に課税対象になるかどうかはわかりません。岸田首相も「サラリーマン増税は考えていない」と発言したと報じられています。

ただ、ターゲットにされている非課税所得が課税対象になったらどうなるのでしょうか? そもそも失業給付、遺族年金、生活保護給付、給付型奨学金は、最低限の生活を保障し、所得が少なくても学べる機会をつくるために設けられたものです。これらの背景には生活の困窮という問題があります。生活に困っている人を救うための給付に課税するのは避けてほしいですね。

また、通勤手当や現物支給などサラリーマンに関連するものが課税されるようになれば、私たちの生活はさらに厳しくなるでしょう。ただでさえ給与は上がらない中での食品の値上げやエネルギーの高騰で、私たちの家計は大きな打撃を受けています。実際、これ以上の負担は生活に支障が出る可能性があります。

政府は、中期答申に基づき税制を見直す前に、まずは国民生活の実情をよく見たうえで、適切な判断をしていただきたいものです。

前佛 朋子 ファイナンシャル・プランナー(CFP®)・1級ファイナンシャル・プランニング技能士

2006年よりライターとして活動。節約関連のメルマガ執筆を担当した際、お金の使い方を整える大切さに気付き、ファイナンシャル・プランナーとなる。マネー関連記事を執筆するかたわら、不安を安心に変えるサポートを行うため、家計見直し、お金の整理、ライフプラン、遠距離介護などの相談を受けている。

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