22/11/11
「生活が苦しい」高齢者世帯は半数以上、50代から準備すべき5つのこと
みなさんは「老後破産」や「下流老人」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。年金生活の実態はあまり知られていませんが、現役世代はいたって普通に暮らしていた人でも、年金生活に入るとささいなきっかけで貧困状態に転落する可能性があります。
今回は、厚生労働省のデータより65歳以上の高齢者世帯の年間所得額やその内訳などに着目し、50代のうちから備えておくべき5つのポイントを解説していきます。
高齢者世帯の収入の実態は?
厚生労働省が発表した「国民生活基礎調査の概況」(2021年)によると、「生活が苦しい」と感じている65歳以上の高齢者世帯は50.4%にのぼるという結果になりました。
●各種世帯の生活意識
厚生労働省「国民生活基礎調査の概況」(2021年)より
また、同調査によると、65歳以上の高齢者世帯の平均所得は約332万円でした。
●各種世帯の所得の種類別1世帯当たり平均所得金額
厚生労働省「国民生活基礎調査の概況」(2021年)より
表より、65歳以上の高齢者世帯の平均所得の内訳を抜き出すと、以下のとおりです。
総所得:332万9000円
・公的年金・恩給:207万4000円
・稼働所得:71万7000円(うち、雇用者所得58万7000円)
・財産所得:22万9000円
・年金以外の社会保障給付金:2万1000円
・仕送り・企業年金・個人年金・その他の所得:28万8000円
全体の約332万円のうち、公的年金は約207万円となります。
公的年金以外の他の収入源で一番多いのが、稼働所得約71万円です。また稼働所得のうち、一番多く占めるのが、会社に雇用され収入を得る雇用者所得約58万円です。ここには税金や社会保険料も含まれていますので、月換算すると、約5万円弱をパートやアルバイトで稼ぎ生活費の足しにするイメージです。
次に財産所得や仕送り・企業年金・個人年金・その他の所得といった、仕事以外による所得が合計で約50万円あります。
以上の統計データより、「年金収入では足りない分を稼働所得や財産所得で補いつつ、年間300万円ほどで暮らしているが、半数以上の世帯が「生活は苦しい」と感じている」というのが高齢者世帯の生活実態に近いイメージなのではないでしょうか。
年金生活に入る前に備えておくべき5つのこと
こうした実情を受け、年金生活に入る前にどのような備えをしておくのが良いでしょうか。
そこで、「定年後に使えるお金を増やす」、「定年後に必要な支出を減らす」という両方の側面から50代から準備すべきこととは何かを考えてみましょう。
●年金生活に入る前に備えるべきこと①:65歳以上でもできる限り長く働く
定年後の所得で年金の次に多かったのは稼働所得ですので、定年後も働いて消費支出の不足分を勤労収入(稼働所得)で補う方法をまず考えましょう。日本は人手不足であり、特にシニア世代の活躍が求められている時代背景もあり、65歳以上でも働くことは常識になりつつあります。ですが、退職後にあわてて再就職先を探すのではなく、あらかじめ自分のライフプランややりがいなどから定年後の就職先を検討しておけば、より良い条件で仕事につける可能性は高まるでしょう。また、シニア起業もひとつの選択肢となります。その場合には50代のうちから副業として個人事業を小さく始めておくとよいでしょう。
●年金生活に入る前に備えるべきこと②:老後にもらえる年金をできる限り増やしておく
65歳以上も働く方におすすめなのが、厚生年金保険料を払い続けて将来もらえる年金額を増やすことです。老齢厚生年金は払った保険料に応じてもらえる年金額が決まりますので、パートやアルバイトであっても厚生年金保険に加入できる条件で探してみましょう。また厚生年金保険に加入せずとも、40年の納付済期間がないため老齢基礎年金を満額受給できない場合などで年金額の増額を希望するときは、60歳以降でも国民年金に任意加入をすることができます。ただし、申出のあった月からの加入となり、遡って加入することはできませんので、50代のうちからねんきん定期便などを活用して自分の年金保険料の納付状況を調べておくと良いでしょう。
●年金生活に入る前に備えるべきこと③:働かなくても得られる不労所得を作っておく
65歳以降も元気で働けるうちはよいとして、高齢ともなると体力が続かないケースもあります。そのため、自分が働かなくても得られる所得(不労所得)を定年前から作っておくことをおすすめします。「不労所得」の代表的なものは株式や投資信託、不動産などの資産から得られる収入です。また国はiDeCoやNISAといった税制優遇制度も用意しています。知識がなければはじめにくいですが、50代であれば定年まで10年以上の運用期間が取れるため、人生100年時代を生き抜くためにもぜひ検討しましょう。
●年金生活に入る前に備えるべきこと④:規則正しい生活を送り、健康維持に努める
次は、支出を減らす方法を考えてみましょう。特に、若いころとは異なり、年をとるにつれて増える支出として、医療費や介護費があります。健康を損なうと、医療費や介護費がかさむ要因になります。これらの出費を抑えるためには、定年前から規則正しい生活を送り、健康を維持することが大切です。乱れた食生活や過度な飲酒、喫煙、運動不足などは健康を害するリスクがあります。運動の習慣をつけるなど、自分にできることから徐々に意識してみましょう。長く働き続けるためにも若いうちからの日々の健康管理は大事なポイントです。
●年金生活に入る前に備えるべきこと⑤:生活水準のダウンサイジングをする
現役時代と年金生活では、多くの場合、年間収入が大きく下がります。現役時代に高収入だった方は特にこのギャップが大きくなるため、いざ年金生活が始まってから、急に支出を削ることは苦痛と困難を伴います。普段から広い家や多い持ち物に慣れている方は、生活のサイズを小さくすることに抵抗があるかもしれませんが、子どもが巣立った50代であれば、いらないモノを手放す、持たず、買わないように意識を切り替えることや生活水準を下げることも比較的容易に実行に移せる年代だとも考えられます。
また、ダウンサイジングして小さく暮らしていると、生活支出が少なく済むため、老後に収入が減ってもどうにかなると思える精神的なゆとりが生まれることもメリットのひとつです。
まとめ
ゆとりある年金生活を送るためには、それ以前からしっかりと準備をおこなっていくことがなによりも重要です。年金生活に入ってから慌てることがないよう、いまから定年後の生活に備えてしっかりと準備をしておきましょう。
また収入や支出は、地域差や個人差なども大きいため、一般的な情報を参考にするだけでなく、個人個人の状況を踏まえてシミュレーションをすることも大事です。ファイナンシャルプランナーなどの専門家へ相談することも合わせて検討して、自分にあったお金の計画を立てておくことをおすすめします。
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KIWI ファイナンシャルプランナー・社会保険労務士
長年、金融機関に在籍していた経験を活かし、個人のキャリアプラン、ライフプランありきのお金の相談を得意とする。プライベートでは2児の母。地域の子どもたちに「おかねの役割」や「はたらく意義」を伝える職育アドバイザー活動を行っている。
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