22/06/01
定年退職した後の健康保険、4つの選択肢で一番お得なのは?
日本は、国民すべてが健康保険などの公的医療保険に加入するという医療保険制度になっています。会社に勤めているときは、加入する公的医療保険は健康保険の一択で、会社が手続きをしてくれます。しかし、定年退職後は、どの公的医療保険に加入するかを選択する必要があり、自ら手続きをしなくてはならない場合もあります。
定年退職後に加入できる公的医療保険の選択肢は4つ。今回は4つの選択肢それぞれの概要をご説明した上で、どの選択肢を選ぶのがお得なのかについてご紹介します。
定年退職後に加入できる公的医療保険「4つの選択肢」とは?
定年退職後に加入できる公的医療保険の選択肢は「再就職先の健康保険に加入する」、「退職前の会社の健康保険に加入する(任意継続する)」、「家族の健康保険に加入する」、「国民健康保険に加入する」の4種類があります。
●公的医療保険の選択肢
●再就職先の健康保険に加入する
定年退職後、再就職をする場合、その会社の健康保険に加入することができます。ただし、勤務時間が週30時間以上(従業員501人以上の会社の場合は週20時間以上)といった要件を満たす必要があります。正社員として再就職をする際には問題ありませんが、パート社員として再就職して、短時間勤務をする場合には加入できない場合もあります。手続きは、再就職先の会社を通じて行います。
●退職前の会社の健康保険に加入する(任意継続)
退職した会社の健康保険に継続して加入することができます。これを任意継続といいます。ただし、任意継続の期間の上限は2年です。
任意継続をする場合には、以下の2つの条件を満たす必要があります。
【任意継続の条件】
・資格喪失の日の前日まで継続して2か月以上被保険者期間があること
・資格喪失日から20日以内に手続きすること
なお、会社に在籍しているときの健康保険の保険料負担は労使折半といい、会社と自分で半分ずつ負担しています。しかし、任意継続の場合の保険料は、全額自己負担になります。
任意継続の手続きは、「健康保険任意継続被保険者資格取得届」を加入していた健康保険に自ら提出して行います。保険料の払い込みの管理も自己責任で行います。期日までに保険料の払い込みがなかったときは資格喪失となるため、注意が必要です。また、任意継続の場合、傷病手当金が対象外になります。
●家族の健康保険に加入する
配偶者や子など三親等内の家族の被扶養者(健康保険に加入する被保険者によって生計が維持されている者)となり、その家族が加入している健康保険に加入することができます。
健康保険は、被扶養者が増えても被保険者の保険料負担は増えません。もちろん被扶養者の保険料負担もありません。4つの選択肢の中では一番経済的ですが、以下のような条件があるため、加入できない場合もあります。
家族の被扶養者となるには、以下の条件を満たす必要があります。
【家族の被扶養者となる条件】
・原則として、年収130万円未満
※60歳以上またはおおむね障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は180万円未満
・(同居している場合)年収が健康保険に加入している被保険者の2分の1未満
・(同居していない場合)年収が被保険者からの援助による収入より少ない
手続きは、健康保険に加入している家族である被保険者が勤める会社を通じて行います。退職日から5日以内に手続きが必要なので注意しましょう。
●国民健康保険に加入する
上記の3制度に加入しない場合、自営業者やフリーランスの方が加入する国民健康保険に加入します。保険料は、前年の収入に応じて決まりますが、保険料方式と地方税による保険税方式があり、市区町村によって異なります。手続きは、お住まいの市町村窓口で自ら行います。
国民健康保険には被扶養者という概念がありません。そのため、会社在籍時に健康保険の被扶養者だった配偶者などがいる場合、各々が国民健康保険に加入する必要があるため、世帯全体の保険料の負担が増えます。
どの制度を選ぶのがお得なの?
どの制度を選ぶのがお得かは、定年退職後のライフスタイルや家族状況によって異なります。定年退職後、再就職をする場合には、「再就職先の健康保険に加入する」ことになります。また、再就職はしないものの家族が会社に勤めており、その家族の健康保険に加入できるのであれば「家族の健康保険に加入する」を選ぶと保険料負担はありません。
しかし、いずれの状況にも該当しない場合は、まずは「任意継続」を選択されるとよいでしょう。退職1年目の保険料は、一般的には国民健康保険よりも任意継続のほうが少なくて済むからです。しかし、退職後に働かない場合は、2年目は任意継続から国民健康保険に切り替えたほうがいい場合があります。任意継続の保険料は退職時の収入で決まりますが、国民健康保険の保険料は前年の収入によって決まるからです。
任意継続は従来、2年間の途中で脱退できませんでした。しかし、2022年からの制度変更によって途中で脱退することも可能になりました。したがって、退職1年目は「任意継続」、収入の下がった2年目は「国民健康保険」を選択することで、保険料が抑えられる可能性があります。お住まいの地域や収入でも結果が変わってきますので、詳しくは自治体などにご確認ください。
まとめ
定年退職後の公的医療保険について、退職が間近になったときに会社から意向を問われて、慌てて考えるケースも少なくないと思います。あらかじめ定年退職後の過ごし方を考えておき、定年退職後の公的医療保険の「4つの選択肢」のうち、どれを選択するのかもっともお得なのかを確認しておくことをおすすめします。
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キムラミキ 株式会社ラフデッサン 代表取締役
AFP・社会福祉士・宅地建物取引士。外資系生命保険会社、マンションディベロッパーの営業を経て独立。現在は、就労移行支援事業所Fine米子オフィス(うつや発達障がいのある方の就労サポート施設)の運営に携わり、経済的自立をしたいと考える方のサポーターとして活動中。得意分野はライフプラン、キャリアプラン、生命保険、不動産。BSS山陰放送ラジオパーソナリティ歴10年以上の顔も持つ。
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