22/05/30
年金を増やせて人気のiDeCoにある5つの落とし穴
iDeCoは、拠出時・運用時・受取時の3つの段階でそれぞれ税制面のメリットを受けながら老後資金を用意できることで知られています。一方で、iDeCoには利用するうえで知っておきたい「落とし穴」があることをご存じでしょうか。今回はiDeCoを活用するにあたって注意しなくてはいけない5つの落とし穴を解説します。
iDeCoの落とし穴1:手続き完了に2カ月程度かかる
1つ目の落とし穴は、口座開設が完了するまでに2カ月程度かかることです。
iDeCoに加入するには、運用する金融機関を決め、そこから送られてくる資料に必要事項を記載し、書類をそろえ返送し、審査に通過する必要があります。
金融機関に返送した書類は国民年金連合基金に送付され、審査が行われます。掛金の限度額など条件が個々で異なることから、提出から口座の開設まで通常1~2カ月ほど期間を要します。
また、企業にお勤めの方は必要書類の一つに「事業主の証明書」があります。事業主の証明書は勤め先に依頼して入手するため、ここでも時間がかかります。このように、iDeCoは始めようと思ってから実際にスタートするまで時間がかなりかかることが想定されます。早く始めたいならば、早く不備のないように手続きを進める必要があります。
iDeCoの落とし穴2:【拠出時】節税の手続きが必要
2つ目の落とし穴は、iDeCoの節税メリットを受けるためには年末調整や確定申告で手続きが必要になることです。
iDeCoの掛金は全額が「小規模企業共済等掛金控除」という所得控除の対象となります。給与天引きで掛金を拠出している場合は、給与計算の際にすでに控除されているため、個人での手続きは不要ですが、会社員や公務員の方で自身の口座から口座振替で掛金を拠出している場合は、自身で申告が必要です。
iDeCoの節税の手続きは年末調整でできます。
職場から受け取る年末調整の用紙にある「小規模企業共済等掛金控除」の欄にiDeCoの掛金額を記入し、郵送で届く「小規模企業共済等掛金払込証明書」を添付することで税金の還付を受けることができます。
また、自営業の方や、年末調整で手続きを忘れた方は、確定申告で「小規模企業共済等掛金控除」の欄に掛金を記載することで税金の還付を受けることができます。
年末調整や確定申告を忘れると所得控除が受けられないので注意が必要です。
iDeCoの落とし穴3:【運用時】元本確保型商品ではほとんど増えない
3つ目の落とし穴は、元本保証型の商品で運用しようとすると、増えないだけでなく、資産が減っていく可能性があることです。
iDeCoは口座開設すると管理費などの手数料を支払わなくてはいけません。運用期間中は、収納手数料として1回ごとの拠出に105円、委託した金融機関に事務委託手数料として月額66円支払う必要があります。さらには加入する金融機関によって運営管理手数料として毎月数百円支払わなくていけない場合もあります。年間にすると、最低でも2,052円の手数料の支払いが発生します。
iDeCoを定期預金などの元本保証型の商品で運用した場合、受け取る利息よりも手数料として支払わなくてはいけない金額の方が多くなる方がほとんどです。低金利の今、元本保証型の商品では資産を増やしていくことは難しいでしょう。iDeCoでお金を増やしていきたいのであれば、投資信託一択です。
iDeCoの落とし穴4:【受取時】60歳から受け取れるとは限らない
4つ目の落とし穴は、iDeCoの加入期間によっては資産を60歳から受け取れない場合があることです。
60歳から資産を受け取るには、60歳時点でiDeCoに10年以上加入していることが必要です。しかし、iDeCoの加入期間が10年未満の場合、60歳になっても積み立てたお金を受け取ることができません。
iDeCoの資産を受け取れる年齢は、60歳までの加入期間が
・8年以上10年未満の人:61歳から
・6年以上8年未満の人:62歳から
・4年以上6年未満の人:63歳から
・2年以上4年未満の人:64歳から
・1か月以上2年未満の人:65歳から
・60歳以降に加入した人:加入した日から5年経過した日から
受け取りとなります。iDeCoは必ずしも60歳から受け取れるというわけではないので注意が必要です。なお、iDeCoの受け取りは上記年齢から75歳になるまでの間で選択可能です。
iDeCoの落とし穴5:【受取時】受け取り方によって課税対象になる
iDeCoの受け取り方法は、一括で受け取る「一時金」形式、分割で受け取る「年金」形式、その2つを組み合わせた「一時金+年金」形式の3種類から選択することができます。
受け取り方によって適用される所得控除も変わります。一時金形式の場合は「退職所得控除」、年金形式の場合は、「公的年金等控除」が適用されます。
一時金形式で受け取るときの退職所得控除の金額は、勤続年数が20年以下の場合「40万円×勤続年数」(80万円に満たない場合は80万円)、20年超の場合「800万円+70万円×(勤続年数−20年)」で計算されます。
退職所得控除は、勤続年数が長いほど枠が大きくなっていきます。しかし、会社からの退職金とiDeCoの一時金を一緒に受け取ると、合算して退職所得の扱いとなってしまいます。退職所得が退職所得控除の金額より多くなると、一部が課税対象になってしまう場合があります。退職所得が退職所得控除の金額より多くなりそうな場合は、年金方式と組み合わせるなど、税金を減らす工夫を検討しましょう。
まとめ
せっかくiDeCoを利用して自分年金を積み立てていても、気づかぬうちに損をしてしまう可能性があります。落とし穴にはまるのは非常にもったいないので、よく確認して回避するようにしましょう。
【関連記事もチェック】
・iDeCo・企業型確定拠出年金で絶対に選んではいけない5商品
・30~40代平均年収での年金はいくら?iDeCoよりも高利回りで老後資金を増やす方法
・改悪が続いても楽天証券でつみたてNISA・iDeCoを始める人が多い理由
・50歳からでもiDeCoを上限いっぱい今すぐ始めるべき理由
・つみたてNISA・iDeCo・預貯金の積立配分はどうする?月5万円・8万円のロードマップ
渡部ナオコ ファイナンシャルプランナー
大学卒業後から現在まで金融業界一筋のアラサーワーママ。結婚・出産・子育て・マイホーム購入などの自身の経験から、一人でも多くの女性の悩みを解決したいと思い執筆を開始。
プライベートでは一人娘の育児に奮闘中。
この記事が気に入ったら
いいね!しよう