21/04/30
子供が早生まれ「経済的に損」は本当なのか
「早生まれの子は損」と言われることがあります。早生まれが損するのは発達の問題だけではなく、いろいろなところに影響が出てきます。
今回は、早生まれの子がいる家庭で経済的にデメリットになることについて説明します。どういうところで損するのかを知っておき、事前にとれる対策はとっておきましょう。
早生まれの子は不利になる?
早生まれの子どもは損、子どもを産むなら遅生まれの方がいいと考える人は少なくないと思います。早生まれが不利と言われることには、いろいろな理由があります。
●乳幼児期は月齢で発達に大きな差がある
小学校低学年くらいまでは、早生まれの子は同じ学年の遅生まれの子に発達が追いついていません。4月生まれと3月生まれでは、体格にも差があります。
集団生活が始まると、同じ学年の子同士が一緒に活動するようになります。発達の差は年々小さくなるとは言え、最初のうちは同じ学年の子についていけないかもしれないと、心配になる親は多いでしょう。
●早生まれか遅生まれかで将来が変わるかも
早生まれの不利は、幼い間だけにとどまりません。たとえば、受験の際にも差が出ることが考えられます。特に小学校受験では、早生まれは不利になるような気がしてしまいます。もし希望する学校に入れなかったら、その後の進学や就職に影響が出るのではないかと気がかりな人もいるでしょう。
スポーツなどでも、同じ学年の子同士を比較すると、早生まれの子は結果を出しにくいことがあります。早生まれのせいでレギュラーになれないこともあるかもしれません。一流のスポーツ選手になるのなら、遅生まれの方がいいように思えます。
●遅生まれに比べて所得が低いという研究結果も!
上に書いた早生まれの心配を裏付けるような研究が近年発表されました。東京大学大学院経済学研究科の山口慎太郎教授が、「早生まれの人は30~34歳の所得が遅生まれの人よりも約4%低くなる」という調査結果を報告しています。早生まれは学力以外の非認知能力(自己コントロール力や人とうまく協力できる力など)が低い傾向にあり、それが所得にも影響しているというのです。
早生まれが経済的に損することもある
上記の研究結果はあくまで統計上の傾向で、早生まれの子が損しているのかどうか本当のところはわかりません。そもそも、子どもの成長のスピードには個人差がありますから、あまり神経質にならない方がいいと思います。親が早生まれを気にして子どもに無理をさせると、むしろ逆効果になるような気がします。
早生まれによって将来の職業や収入に影響が出るかどうかはともかく、早生まれの子を持つ家庭では、経済的に損することが現実にあります。以下、国の制度などの関係上、早生まれの子を持つ家庭に生じる経済的なデメリットを3つお伝えします。
●経済的なデメリット1:児童手当が支給される期間が短い
子どもがいる家庭に、法律にもとづき支給される児童手当。早生まれの子がもらえる児童手当のトータルは、遅生まれの子よりも少なくなっています。
・児童手当の支給期間と支給額
現在、児童手当は原則として、3歳未満の子と小学校卒業までの第3子以降の子については1人につき月額1万5000円が、それ以外の子については1人につき月額1万円が支給されています。支給開始は出生後に申請を行った翌月からで、支給終了は子どもの15歳の誕生日の次の3月31日、つまり中学卒業時です。
・最大11万円の差
児童手当の支給開始は生まれ月の違いによりばらばらですが、支給終了は同じ学年の子はみんな同じ。3月生まれの子がいる親は、4月生まれの子がいる親よりも、トータルでもらえる額が11万円少ないことになります。
ただ、児童手当については12月生まれの子でも4月生まれの子よりは8万円少なくなるため、遅生まれだけが損しているとも言い難いでしょう。
●経済的なデメリット2:親が扶養控除を受けられる期間も短い
児童手当よりももっと不公平に感じるのが、税金を計算する際の扶養控除です。扶養している16~22歳の子がいれば親は扶養控除を受けられますが、ここで早生まれの子の親は損します。
・早生まれの高校1年生は扶養控除の対象外
扶養控除では、16~18歳の子がいる場合の控除額は38万円ですが、19~22歳の子は特定扶養親族となり控除額が63万円になります。
16~18歳と言うと高校生と思ってしまいますが、厳密にはそうではありません。扶養親族の年齢は、その年の12月31日時点の年齢で判断します。早生まれの子がいる場合、高校1年のときには扶養控除が受けられず、高校2年から大学1年までの3年間38万円の控除が受けられます。
なお、早生まれの子が22歳となるのは大学4年の翌年ということになりますが、その年にはもう就職していて、扶養の要件をみたしていないことが多くなります。つまり、早生まれの子の親が扶養控除を受けられる年数は、遅生まれの子の親よりも1年少ないことになります(下表参照)。
●経済的なデメリット3:税金の差は10万円以上になることも
上の表からもわかるとおり、早生まれの子の親は、控除額が大きい63万円の年が1年少なくなってしまいます。これによりどれくらい税額に差が出るのかをシミュレーションしてみましょう。
所得税率(※収入により変わる)を仮に10%とすると、特定扶養控除が1年受けられなければ6万3000円損することになります。さらに、住民税(税率一律10%)の特定扶養控除額は45万円ですから、住民税については4万5000円の損。ここでも11万円近く損する計算になります。
早生まれは「保活」で損することも
手当や税金における早生まれの損について説明しましたが、もう一つ、早生まれの子のいる家庭で経済的なデメリットとなりがちなことをご紹介します。それは、保育所へ入所するときのことです。
●0歳から認可保育所に入るのが難しい
子どもを0歳から認可保育所に入れたい場合、4月が最も入所しやすいタイミングです。遅生まれの子は4月入所を目指し、余裕を持って保育所の申し込みができます。
一方、早生まれの子が生まれる頃には、4月の保育所入所は遅生まれの子でいっぱいになっています。また、認可保育所は生後57日経過しないと入れないのが一般的なので、2月~3月生まれなら4月入所に間に合いません。つまり、早生まれは0歳から保育所に入れず、1年待たないといけないことが多くなります。
子どもを保育所に預けられず働けないとなると、収入が減ってしまうこともあるでしょう。認可外保育所に預けて働くという方法もありますが、保育料が高くなってしまいます。早生まれの子を持つ家庭にとっては、保育所の問題が経済的なダメージとなることもあるのです。
●育休から復帰するタイミングと合わないことも
育休を取っている人は、0歳から保育所に入れなくても問題はないでしょう。しかし、早生まれの子がいて、育休が1年の予定である場合には注意が必要です。育休は1歳の誕生日で終わるのに、4月まで保育所に入れないとなると、その間の預け先に困ってしまいます。
育休を延長して育児休業給付金がもらえれば心配ありませんが、そのためには早めに手続きをとっておかなければなりません。育休を取る場合には、スケジュールを考え、復帰直前に慌てないようにしておきましょう。
早生まれは本当に損?
上述のように、早生まれは経済的に損と言われていることはいくつかあります。ですが、長い目で見ると、早生まれの方が生涯賃金が多くなって得する可能性もあります。定年退職日が満60歳や満65歳の誕生日となっている場合、遅生まれの人よりも早生まれの人の方が長く勤めることになるからです。
また、制度上のこと以外では、早生まれの方が得していることも多いように思います。たとえば、4月生まれの子が誕生日を迎える時期はクラス替えがあったばかりで友達があまりできていないこともありますが、早生まれの子が誕生日を迎える頃には友達が増えてプレゼントをたくさんもらえるといったこともあるでしょう。
筆者には現在大学生の早生まれの子どもがいますが、子どもの20歳から就職までの国民年金保険料は親である自分が立て替えて払うつもりなので、その期間が短くて良かったとも思っています。これまでも早生まれで損と感じたことはほとんどありませんし、何より子どもが生まれてきてくれただけで、数字では測れない大きな得をしたと思っています。
親が子どものことでくよくよするのが、いちばん子どもに損をさせると思います。親の意識次第で子どもを100%得する子にできますから、早生まれだからと言ってあまり悩まないようにしてください。
まとめ
早生まれで経済的に損することがあることを説明しました。扶養控除については見直しも検討されているようですが、現状はまだ変わっていません。高校・大学は最も教育費がかかる時期ですから、税金の負担は親にとっては大きな問題でしょう。早生まれの子どもがいるなら、税金の負担も考慮して教育費の準備をしておくと安心です。
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森本 由紀 ファイナンシャルプランナー(AFP)・行政書士・離婚カウンセラー
Yurako Office(行政書士ゆらこ事務所)代表。法律事務所でパラリーガルとして経験を積んだ後、2012年に独立。メイン業務の離婚カウンセリングでは、自らの離婚・シングルマザー経験を活かし、離婚してもお金に困らないマインド作りや生活設計のアドバイスに力を入れている。
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