21/04/06
購入vs賃貸、どちらが経済的に有利かを判断する「150の法則」は使える?
住まいを考える時、購入するか賃貸にするか、悩む方は多いのではないでしょうか。
それぞれにメリットとデメリットがありますが、重要度は状況によって違いがあるため、なかなかの難問です。
今回は、昨今話題の「FIRE最強の早期リタイア術」から、購入か賃貸かを選択する決め手となる150の法則について考えます。
購入と賃貸は、払える金額で決めては損?
最近話題のFIREとは、「Financial Independence, Retire Early=経済的自立をして早期リタイアする」の頭文字をとった言葉です。
経済的に自立をすればお金のためだけに働くことから解放されて、より自分らしい暮らし方ができますね。同書ではその実現のために、株の配当や不動産収入などの不労所得を増やすことをはじめ、さまざまなことを説いています。その中から今回は、マイホームはどうしたらいいのか、というトピックに注目します。
マイホームの購入を検討する時、よく聞く話があります。
・賃貸はお金を払っても何も残らない
・持ち家は投資になる
・住宅価格はこれから上がる
購入の方がいいように感じる言葉が多いですね。そして、家賃とローンの支払い金額を比べてみるよう勧められるのではないでしょうか。
ローンの支払い金額が家賃と同じくらいなら、「十分払っていかれる金額」として気持ちが購入に傾くかもしれません。
しかし、住宅購入は「支払える金額」で決めるのではなく、賃貸と比べてどちらが経済的に有利か、しっかり計算して判断するべきです。
「FIRE最強の早期リタイア術」の150の法則とは?
そこで、FIREでは「150の法則」を用いて計算することを勧めています。
これは、毎月のローン返済額の150%の金額が賃貸の家賃を上回れば、賃貸のままのほうが損をしないという計算方法です。
住宅を購入すれば税金や保険、維持費などのコストがかかるので、単純にローンの支払い金額だけで考えると判断を誤ってしまいます。
FIREでは、コストは住宅ローンの支払い金額の50%として考えるとよいとしています。
たとえば、今住んでいる賃貸住宅の家賃が10万円だとします。
それに対して、買おうとしている物件の住宅ローンの返済額が8万円だったとした場合、その150%は12万円ですね。
8万円×150%=12万円
この両者を比べて、賃貸の家賃の方が安いなら、賃貸のままのほうがいい、という判断ができるということです。
12万円(ローンの150%)>10万円(現在の家賃)
逆算すると、現在の家賃が13万円だったら、購入した方がトクです。
12万円(ローンの150%)<13万円(現在の家賃)
仮にローンの支払いが家賃と同額でも、「無理なく払っていかれる!」と飛びつくのは禁物。
税金などのコストを考えると、トータルでの支払いは増えるので家計が厳しくなる可能性が高くなります。
FIREでは、住宅ローンの支払いとコストを合計した金額で考えて、そのうえで家賃のほうが高ければ購入しても損にはならないと考えています。
150の法則は日本でも使える?
ただし、150の法則は米国の事情を前提としていることに注意が必要です。
米国では同じ家に住み続けるのは平均して9年間。購入には住宅ローンを組みますが、標準的な30年ローンの場合、最初の9年間は返済額の約半分が利息です。
その利息と、税金や保険、修繕費などのコストが同等とのことです。
これらのことから、住宅を購入した場合に必要な支払いは、住宅ローンの1.5倍、つまり150%が実質の負担額であることが導かれています。
一方、日本では30年ローンを組んでずっと住み続け、老後の住まいとしても考えている人も多いと思います。
また、税率や保険料なども米国とは異なるため、150の法則をそのまま当てはめるわけにはいかないでしょう。
しかし、住宅購入を検討する際に、ローンの支払い金額だけではなくコストも含めた実質的な負担額を計算のもとにする、という考え方は共通して使えます。一般的な一戸建ての場合で年間のコストは約40万円、マンションだと約70万円という試算もあります。
たとえば、住宅ローンの毎月の支払い金額が10万円となるマンションを購入したとします。年間の支払い120万円に加え、コストは年70万円かかったとすると、毎月の支払額は合計で190万円ですから、月にすると約16万円です。
190万円÷12=約16万円
それに対し、たとえば現在の家賃が10万円だったら、賃貸のままのほうがいい、という判断ができるということです。
16万円(ローン+コスト)>10万円(現在の家賃)
つまり住宅ローン以外のコストを考慮せず、「ローンが家賃と同額なら購入して自分のものになったほうがいい」とばかりは言えないということです。
他にも、中古住宅を購入する場合には、修繕費は多めに見積もる必要があるでしょう。
保険料は、地域や建物の構造によっても異なります。住宅ローンの支払い金額だけで考えてはいけないのです。
また、日本にはすまい給付金や住宅ローン減税といった優遇制度もあります。
制度を活用し、コストも含めて考えたうえで総合的に判断したいですね。
そのためには不動産業者の言いなりは避けたいものです。
自分ひとりの判断に不安がある場合は、中立的な立場のファイナンシャル・プランナーへの相談も、ぜひ検討していただければと思います。
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タケイ 啓子 ファイナンシャルプランナー(AFP)
36歳で離婚し、シングルマザーに。大手生命保険会社に就職をしたが、その後、保険の総合代理店に転職。保険の電話相談業務に従事。43歳の時に乳がんを告知される。治療を経て、現在は治療とお金の相談パートナーとして、相談、執筆業務を中心に活動中。FP Cafe登録パートナー
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