21/03/12
「日本人は貯金が大好き」というのは嘘? 日本の家計貯蓄率は世界と比べひどかった
日本人はしばしば「貯金が大好き」と言われます。でも実際、お金が貯められているか、お金を増やせているかといえば、どうやらそうではないようです。「家計貯蓄率」の国際比較のデータを見ながら、これからお金を貯め、増やすにはどうしていったらいいのかを考えてみましょう。
大好きな割にはそんなに貯蓄できていない実態
家計貯蓄率とは、家計の可処分所得に占める貯蓄の割合のことです。可処分所得は、給与やボーナスなどの総支給額から税金や社会保険料などを差し引いて残る、いわゆる手取りの金額。ですから、家計貯蓄率は「手取りの金額に占める貯蓄の割合」というとイメージしやすいでしょう。家計貯蓄率が高いほど、貯蓄ができているといえます。
金融広報中央委員会のデータによると、日本の家計貯蓄率は近年低下しています。諸外国と比べても、その傾向が見て取れます。
●家計貯蓄率の国際比較
金融広報中央委員会「暮らしと金融なんでもデータ」より抜粋
日本の家計貯蓄率は、1999年時点では8%ほどありました。それが2000年代に入って2%〜4%程度のところを行ったり来たりするようになっています。
2014年には、家計貯蓄率がマイナスに。2014年4月の消費税増税(5%→8%)の際の駆け込み消費がその要因といわれています。家計貯蓄率がマイナスということは、家計は貯蓄できなかったどころか、それまでに貯めた資産を一部取り崩しているということになります。
その後は多少持ち直してはいるものの、諸外国と比べると低水準です。つまり、日本人は、「貯金が大好き」といえるほどには貯蓄できていないのです。
もっとも、貯蓄できていない要因は、他にもあります。それは、日本は際立って少子高齢社会だということです。高齢者は多くの場合年金だけでなく、それまでの貯蓄を取り崩しながら生活しています。ですから、高齢者の割合が高まることは、家計貯蓄率が下がる要因になります。
「日本人は貯金が大好き」はどこからきたのか
とはいえ、日本人が貯金好きと言われてきたのは紛れもない事実です。そうなった背景は、1945年にまでさかのぼります。
終戦を迎えた日本が戦後復興を果たすためには、まずは何よりお金が必要です。しかし、戦争でお金を使い果たしていたため、政府にはもうお金がありませんでした。そのお金を工面するために、政府は国をあげて銀行への預金を奨励しました。「銀行にお金を預ければ豊かな社会ができる」「貯蓄で生活が明るくなる」という具合です。そうして銀行に預けられたお金を、戦後復興のための融資に回していったのです。結果、日本は高度成長を果たしたのはご存じのとおりです。
また、今と違って昔は、銀行にお金を預けるだけで年数%ずつ増えました。郵便局の定額貯金などでは、預けるだけで年8%もの金利がつくこともあったのです。もし今でもこれだけの高金利が受け取れるのであれば、引き続き貯金さえしておけばいいでしょう。しかし、それはもうとっくの昔の話。現に、現在の大手銀行の普通預金金利はわずか0.001%ですから、全然増えていきません。
「お金は銀行に預けておけばいい」と言われたことのある方もいるかもしれませんが、もはや銀行に預けるだけでいい時代ではなくなっているのです。
日本と米国の資産の増え方はこんなに違う
銀行に預けるだけではお金は増えない。そのことを端的に示すデータを紹介します。
●日本と米国の総資産の推移
金融庁「つみたてNISA100万口座突破!」より作成
日本人とアメリカ人の総資産は、ここ20年でどちらも増えています。
日本人の1997年時点の総資産は1324兆円でした。これが、2017年時点では1854兆円となっていますので、およそ1.4倍に増えたことになります。
対するアメリカ人の1997年時点の総資産は3117兆円です。これが、2017年時点では9040兆円。なんと2.9倍にもなっているのです。
これほどの違いができた理由は、投資の有無にあります。
●家計の金融資産構成
日本銀行「資金循環の日米欧比較」より
日本人の直近の家計貯蓄率は減っているものの、それでも総資産の54.2%を現金・預金で保有しています。株式等・投資信託・債務証券(債券)といった投資商品は、合わせて14.4%しか持っていません。それに対してアメリカ人は投資商品の割合が50.8%、現金・預金が13.7%という具合に、日本人とほぼ反対の資産構成になっています。その結果が、日本人とアメリカ人の総資産の増え方の違いとなって表れているのです。
アメリカの家計貯蓄率は冒頭のグラフでわかるとおり、近年は6%〜7%程度となっています。投資で資産を増やしながら、日本よりもきちんと貯蓄ができているのですから、さすが世界経済の中心アメリカ、と言わざるを得ないでしょう。
これからお金を増やすなら投資信託の積立投資がおすすめ
株式・投資信託・債券。これからお金を増やしたいと考える方にもっともおすすめなのは、投資信託の積立投資です。投資信託は、投資家から集めたお金をまとめて金融機関のプロが運用する金融商品です。
投資信託は、数十から数百の投資先に投資しています。こうすることで、そのうちのどれかが値下がりしても損失が少なくて済みますし、他のどれかの値上がりでカバーすることもできる、というわけです。このような投資を分散投資といいます。
投資信託は長期間、少しずつ積立で購入するのがおすすめです。長期間かけて投資を続けることで、安いときにたくさん買い、高いときに少ししか買わなくなるので、平均購入単価を下げられます。仮に今後リーマンショック・コロナショックと同様の暴落があっても、淡々と購入を続けることで利益増が目指せます。
こうした投資信託の積立投資を行うなら、つみたてNISA(ニーサ・少額投資非課税制度)やiDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)を活用しましょう。
つみたてNISAは20年間にわたって、年間40万円までの投資で得られた利益を非課税にできる制度。つみたてNISAで投資できるのは、金融庁の一定の基準を満たした投資信託・ETF(上場投資信託)。長期間の積立投資と分散投資ができる商品のみとなっています。もちろん、金融庁の基準を満たすから必ず値上がりする、というわけではありません。しかし、手数料が安くてシンプルな商品が多く揃っているので、資産を堅実に増やすのに向いています。
またiDeCoは、毎月一定の掛金を支払って運用し、その結果貯まったお金を60歳以降に受け取ることができる制度です。iDeCoでは預金・保険・投資信託の商品を選べますが、もちろんお金を増やすのであれば、投資信託一択です。
iDeCoでは、毎月の掛金が全額所得控除になるため、毎年の所得税や住民税を減らすことができます。そのうえ、つみたてNISAと同じく運用によって生まれた利益が非課税になります。そして、受け取る時にも税制優遇を受けて、税金を節約できます。原則60歳まで引き出すことはできませんが、老後資金を貯めるという目的ならばむしろ好都合。老後資金をきちんと用意できるでしょう。
まとめ
日本人が貯金好きなのは、戦後日本の復興を支えてきたから、そして高い金利が受け取れたからという過去の体験に基づくものだということを紹介しました。それは確かに、素晴らしいことだったかもしれません。
しかし、今は時代が変わったことを認識しないと、お金を増やすことができないのもまた事実です。家計貯蓄率は低くなっていますが、だからといって貯蓄だけをただ増やすのではなく、投資にも目を向けていくことが、お金を増やす上では大切です。
今回紹介した投資信託の積立投資、とくにつみたてNISA・iDeCoを利用した投資は、税金をお得に節約しながら、資産形成ができる制度です。お金を増やすはじめの一歩として、ぜひ取り組んでみてくださいね。
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畠山 憲一 Mocha編集長
1979年東京生まれ、埼玉育ち。大学卒業後、経済のことをまったく知らないままマネー本を扱う編集プロダクション・出版社に勤務。そこでゼロから学びつつ十余年にわたり書籍・ムック・雑誌記事などの作成に携わる。その経験を生かし、マネー初心者がわからないところ・つまずきやすいところをやさしく解説することを得意にしている。2018年より現職。ファイナンシャル・プランニング技能士2級。教員免許も保有。趣味はランニング。
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