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19/09/27

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【書評】西野亮廣、ホリエモン…トップランナーに共通する「根拠のない自信」~『僕たちは14歳までに何を学んだか』

見通しが悪い時代でも輝いている人たち

先が見えない不透明な時代に入りつつある現在。人間の仕事がAIに少しずつシフトしている中で、これからは今までとは違う、AIの技術では及ばない能力やスキルが必要とされるようになっていきます。ところが、日本人はジクソーパズルのような完成形への処理能力は高いものの、レゴブロックのように自由な発想で組み立てていく作業は苦手だとされています。つまり、AIと得手不得手が一緒になってしまっているのです。子供を持つ親は「我が子に何をどう教えればいいのか」と悩んでいることでしょう。

この本では、東京都初の中学校の民間人校長を務めた教育改革家の藤原和博氏が、新しいものをどんどん創造して社会に影響を与え続ける時代のトップランナーたちにインタビューをしています。
登場するのはお笑いタレントの西野亮廣氏、ホリエモンこと堀江貴文氏、IT起業家の前田裕二氏、DMM会長の亀山敬司氏というキレキレの4名。幼少時の環境も年齢も職業もバラバラの彼らが、14歳までの多感な時期をどう遊び、学び、育ってきたのかを通して、子供たち、そして私たち自身にもこれからの時代に必要となる、身につけるべきことはなにかを探ります。

子供の頃の学びの蓄積がいまを作る

西野氏は、子供時代に兄弟と遊んだゲームを通して「いかに勝つか」にこだわり続けた結果、「他者目線」が培われたといいます。自分がいいと思うものを周りに伝えようとしても、一方的に話すだけでは人の心は動きません。相手の立場から考えることで観客の心をつかみ、共感させる彼の他者目線は、お笑いのステージや彼の作品にふんだんに生かされているとのことです。

前田氏は、若手実業家という華々しい経歴の影で、幼少期に両親を亡くし、食べるために小6で街頭弾き語りを始めたという壮絶な少年体験を持つ人です。リクエストに応えてお客さんを満足させると、破格のチップを得られた体験から、人に価値ある体験を提供すれば、大きな見返りを受けられるというポリシーを得て、今の仕事に反映させていると語ります。

藤原氏は、教師と生徒、親と子どもという「タテの関係」と友達同士の「ヨコの関係」のほかに、先輩や近所のおじさん、おばさんといった年長者との「ナナメの関係」が大切だといいます。タテやヨコよりもつながりが薄い分、気軽なナナメの関係が、子どもの自由な成長を助け、人間関係に強い人間に育てるとのこと。たしかに、繊維もタテ糸とヨコ糸だけでなくナナメの糸が通っていると、頑丈になり耐久度がぐんとアップしますね。

大切なのは理解と愛情

社会で華々しく活躍する4人ですが、初めから成功体験ばかり重ねてきたわけではありません。苦い失敗を重ねても、きちんと軌道修正をしてチャレンジし続けてきたところに、今の彼らがあります。完璧ではないからこそ、参考にできるところが多々あるのです。

これからの時代に必要となる能力がどんなものか、この本にハッキリとは記されていませんが、4人とも「根拠のない自信」を持っていると、藤原氏は指摘します。彼らに共通しているのは、子供時代に周囲から深い愛情を受けてきたということ。無条件に愛された経験は人に自信を与え、“なんとかなる”という感覚で未知の世界へと踏み出す思いきった決断ができるのだそうです。そう考えると、親が我が子にできる一番大切なこととは、理想の教育を探し提供することよりも、深い愛を注いで成長を見守ることなのかもしれません。

子育て中の方はもちろん、彼らのひらめきと実行力、そして成功の秘訣を知りたい方にとって大きなヒントとなる本です。

『僕たちは14歳までに何を学んだか 新時代の必須スキルの育み方』
(SBクリエイティブ)

小野寺 理香 おのでら りか

読書ブロガー。好きなジャンルは文学、歴史、アート。ふとしたきっかけで出会い、好きになったら長くつきあう……本との巡り合いは人と同じ。時に味わう〝がっかり〟も、読書のおもしろさのひとつです。ここでは、よりすぐりのすてきな本をお届けします。
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