25/01/19
定年退職後でも失業給付はもらえるが、65歳「未満」と「以上」で金額は全然違う
会社を定年退職した後、新たに仕事を探したいと考えている人もいるでしょう。通常、会社を退職した後、次の仕事が見つかるまでは失業給付(雇用保険の基本手当)が受けられます。しかし、定年退職でも失業給付がもらえるのか、疑問に思う人も多いかもしれません。今回は、定年退職でも失業給付がもらえるのかについて解説します。
定年退職でも条件を満たしていれば失業給付をもらえる
失業給付とは、労働者が失業した場合に、雇用保険から給付されるお金です。失業保険とも呼ばれます。
失業給付は、求職者が安心して再就職活動できるよう、生活を支援するために支給されるものです。離職前の賃金をもとに算出した基本手当日額が所定の給付日数分支払われることになっています。
失業給付をもらう条件は、次のとおりです。
【失業給付の受給に必要な条件】
・失業状態であり再就職の意思がある
・離職の日以前の2年間に雇用保険の被保険者期間が12ヶ月以上ある
・65歳未満である
会社を定年退職した場合でも、上記の条件を満たしていれば、失業給付をもらえます。
なお、65歳未満では、特別支給の老齢厚生年金を受給できる人もいます。しかし、失業給付と特別支給の老齢厚生年金は、同時に受給することができません。どちらの金額が多いか確認し、失業給付を申請するかどうか考えた方がよいでしょう。
定年退職でもらえる失業給付の額はいくら?
失業給付の金額は「基本手当日額×給付日数」で計算します。
基本手当日額は、離職した日の直前6ヶ月の賃金を180で割った「賃金日額」の約50~80%(60~64歳は45~80%)です。ただし上限があり、60~64歳の基本手当日額の上限は7,420円(令和6年8月1日時点)となっています。
失業給付の給付日数は離職理由や年齢、被保険者期間によって異なります。定年退職の場合の給付日数は、年齢に関係なく次のようになります。
<定年退職の場合の失業給付の支給日数>
筆者作成
たとえば、60歳で20年以上勤めた会社を定年退職し、基本手当日額が7,420円と仮定すると、もらえる失業給付の総額は111万3,000円となります。
65歳以上の人は高年齢求職者給付の対象になる
失業給付がもらえるのは、65歳未満の人に限られています。ただし、65歳以上の人が失業した場合には、失業給付の代わりに高年齢求職者給付金がもらえることになっています。高年齢求職者給付金は、次の条件を満たす人が受給できます。
【高年齢求職者給付金の受給に必要な条件】
・失業状態であり再就職の意思がある
・離職の日以前の1年間に雇用保険の被保険者期間が6ヶ月以上ある
・65歳以上である
高年齢求職者給付金としては、次の日数分の失業給付に相当する額を一括してもらえます。
<高年齢求職者給付金の支給日数>
筆者作成
65歳以上の方の基本手当日額の上限は7,065円(令和6年8月1日時点)となっています。たとえば、65歳で1年以上勤めた会社を退職し、基本手当日額が7,065円と仮定すると、もらえる高年齢求職者給付金の総額は35万3,250円となります。
高年齢求職者給付金は、年金と同時に受給することも可能です。また、失業給付よりも支給日数は少ないのですが、審査を通れば30日分・50日分が一括でもらえます。そのうえ、受給年齢の上限もなく、回数の制限もありません。65歳以降、条件を満たせば複数回もらうことも可能です。
失業給付や高年齢求職者給付金をもらいたいなら
失業給付または高年齢求職者給付金をもらうには、ハローワークで求職申し込みの手続きをする必要があります。手続きの際に用意しておく書類等は、次のとおりです。
●申請に必要な書類
・離職票
・マイナンバーカード(※ない場合には個人番号確認書類と身元確認書類)
・顔写真
・本人名義の預金通帳またはキャッシュカード
失業給付や高年齢求職者給付金を受け取れるのは、離職した翌日から1年間です。手続きが遅れると、全額をもらえなくなる可能性があるため注意しましょう。
定年退職後も働くつもりならハローワークで手続きしよう
定年退職の場合でも、失業給付または高年齢求職者給付金を受給できます。再就職するつもりなら、ハローワークで手続きをするのを忘れないようにしましょう。失業給付や高年齢求職者給付金を受給できる期間は限定されているため、働くかどうか迷っているうちに受給できなくなることもあります。定年退職後のライフプランは事前に考えておきましょう。
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森本 由紀 ファイナンシャルプランナー(AFP)・行政書士・離婚カウンセラー
Yurako Office(行政書士ゆらこ事務所)代表。法律事務所でパラリーガルとして経験を積んだ後、2012年に独立。メイン業務の離婚カウンセリングでは、自らの離婚・シングルマザー経験を活かし、離婚してもお金に困らないマインド作りや生活設計のアドバイスに力を入れている。
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