22/12/03
高配当株ETFのVYM・SPYD・HDV・DVY、増配株ETFのVIG・SDYを徹底比較!どれに投資をするのが正解?
経済的自立を果たして早期リタイアを目指すFIRE(Financial Independence, Retire Early)。FIREでは、毎月かかる生活費を資産運用の不労所得で賄うことを考えます。その不労所得を得るための資産のひとつとして注目されるのが、年4回配当がもらえる米国株です。
しかし、個別の高配当株・増配株に投資すると、リスク(値動き)が大きくなりがちです。
そこで活用したいのが高配当株ETF・増配株ETF。ETFは上場投資信託のことで、低コストで手軽に分散投資ができる便利な商品です。今回は、低コストで人気の高い高配当株ETFのVYM・SPYD・HDV・DVY、増配株ETFのVIG・SDYを徹底比較しました。
人気の高い高配当株・増配株ETF6本
高配当株とは、株価に占める配当の割合(配当利回り)が高い銘柄です。また、増配株とは、配当の額を増やしている銘柄です。米国ETFのなかには、こうした高配当株や増配株に投資しているETFがあります。その主なETFと特色は次のとおりです。
【主な高配当株の米国ETF】
・バンガード・米国高配当株式ETF(VYM)
大型株のうち配当利回りが市場平均を上回る銘柄で構成。
・SPDR ポートフォリオS&P500高配当株式ETF (SPYD)
S&P500銘柄のうち高配当株80銘柄で構成される指数に連動。
・iシェアーズ コア米国高配当株ETF(HDV)
高配当株で構成される指数に連動。財務が健全な銘柄へ投資。
・iシェアーズ 好配当株式ETF(DVY)
高配当株で構成される指数に連動。過去5年間配当支払いがある銘柄へ投資。
【主な増配株の米国ETF】
・バンガード・米国増配株式ETF(VIG)
大型株で連続10年以上増配実績がある銘柄に投資。
・SPDR S&P500米国高配当株式ETF(SDY)
20年以上連続増配を続ける高配当銘柄で構成される指数に連動。
以上6つの米国ETFを比較したのが、次の表です。
●主な高配当株・増配株ETFの比較
(株)Money&You作成
これら6つの米国ETFは、運用の目安とするベンチマーク(指数)がすべて異なります。また、高配当株ETF・増配株ETFといっても、投資対象や構成銘柄数が異なることもわかります。高配当株ETFではVYM、増配株ETFではVIGが多くの銘柄を組み入れられているのがわかります。
高配当株ETF・増配株ETFの投資先はどうなっている?
高配当株ETF・増配株ETFの投資先の業種・銘柄を比較してみましょう。
●高配当株ETF・増配株ETFを構成する業種
(株)Money&You作成
「金融」はどのETFも上位に組み込んでいることがわかります。金融には、高配当銘柄が多いのがその理由でしょう。
また、ETFごとに確認してみると、次のような特徴がみられます。
・VYM
ヘルスケアが上位に来ています。ヘルスケアは、長期的な値上がりが狙える業種です。
・SPYD
配当が高く、景気に左右されやすい業種が上位にきています。3位には、他のETFでは下位の不動産が入っているのも特徴です。
・HDV
ヘルスケアに加えて、情報技術も上位に入っています。情報技術もヘルスケア同様、長期的な値上がりも狙える業種です。
・DVY
業種配分はSPYDと似ています。トップの公益は、ディフェンシブ銘柄と言われるセクターです。
・VIG
HDV同様、情報技術とヘルスケアが上位にあるため、長期的な値上がりも狙えます。
・SDY
航空や建設といった資本材がトップ。金融と一緒で、景気に左右されやすい業種が多く含まれています。
こうしてみると、ETFごとに投資先はばらばらだということがわかります。
続けて、各ETFが組み入れている上位10銘柄をチェックしてみましょう。
●VYM・SPYD・HDVの上位10銘柄と組み入れ比率
(株)Money&You作成
高配当株ETF・増配ETFのなかには、似たような銘柄も含まれています。たとえばジョンソン・エンド・ジョンソン(Johnson & Johnson)やP&G(Procter & Gamble)などは連続増配が60年続く、人気の銘柄です。
3つのETFのうち、HDVは、上位10銘柄だけで53.5%と、半分以上を占めていることがわかります。HDVは75銘柄に投資していると紹介しましたが、ポートフォリオには偏りがあります。
●DVY・VIG・SDYの上位10銘柄と組み入れ比率
(株)Money&You作成
DVYの組み入れ比率1位の銘柄は2.3%、SDYの組み入れ比率1位の銘柄にいたっては1.7%となっています。また、2位以下の組み入れ比率も1位と大差ありません。DVYとSDYは、かなり分散がきいているといえます。
高配当株ETF・増配株ETFのコスト・リスク・リターンは?
さらに、6つのETFの経費率・純資産額・リスク・リターンを見てみましょう。なお、乖離率とは「ETFの基準価額の変化率(騰落率)とベンチマークの変化率(騰落率)との差」を表すもの。数値が低いほど、ベンチマークとETFが連動していることを表します。
●高配当株ETF・増配株ETFの経費率・純資産額・リスク・リターン
(株)Money&You作成
先に高配当株ETF(表の上4つ)で比較してみましょう。
4つの高配当株ETFのなかで、もっとも組み入れ銘柄数が多かったのはVYM(443銘柄)でした。その効果が「リスク」に表れています。他の高配当株ETFに比べてリスクが低くなっているにもかかわらずリターンも高くなっています。分配金利回りも3%弱ありますし、経費率も4つの高配当株ETFの中でもっとも安くなっています。購入したいETFのひとつといえるでしょう。
SPYDは配当利回りが高いのと、価格に値頃感があるのがメリットです。約37ドルと、他のETFよりも際立って安くなっています。ただ、景気に左右されやすい業種が多く組み込まれているため、他のETFよりもリスクは総じて高め。リターンも低めです。
HDVはポートフォリオに偏りがあり、集中投資に近いにもかかわらず、リスクは低めでリターンも得られています。さらに、分配金利回りも一番高くなっています。経費率も低く、購入したいETFのひとつです。
そしてDVYは「公益」の割合が多い、ディフェンシブ型のETFです。分配金利回りも高いのですが、VYMに比べると経費率やリスクが高いのがネックです。
高配当株ETFは、どれも業種配分や投資方針が違うのでおもしろいのですが、絞るのであればVYMかHDVの2本がオススメです。
続けて、増配株ETF(表の下2つ)も確認してみましょう。
VIGも組み入れ銘柄数が多い(289銘柄)ことから、リスクがSDYより低いにもかかわらず、リターンはSDYよりも高くなっています。分配金利回りも2%弱と高いので、購入したいETFといえます。
SDYは20年以上連続増配を続ける高配当銘柄で構成されていることもあって、分配金利回りはVIGよりも高くなっています。しかし、経費率はVIGより高く、リターンに関してはVIGより少ないのが気になるところです。
増配株ETFも、業種配分や投資方針がそれぞれ違うのですが、もし絞るならばVIGといったところです。
まとめ
低コストで純資産総額が大きく人気のある高配当株ETFには「VYM」「SPYD」「HDV」「DVY」、増配株ETFには「VIG」「SDY」があります。
高配当株ETFも増配株ETFも、それぞれベンチマーク、投資方針、業種・銘柄配分などが違うため、全部買っても分散投資効果は得られますし、そうした戦略を取るのもありでしょう。しかし、この中から投資先をさらに絞るのであれば、
・高配当株ETF:「VYM」「HDV」の2本
・増配株ETF:「VIG」
がオススメです。
もっとも、下落相場・暴落相場のなかで、いつが安いかといった、最適な買いどきの判断は難しいものがあります。積立投資でコツコツ投資すれば、ドルコスト平均法の力を借りて購入単価を下げることが可能。少しの値上がりでも利益を出しやすくなります。ぜひ投資行動に生かしてみてくださいね。
今回の内容は動画でも紹介しています。ぜひご覧ください。
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頼藤 太希 マネーコンサルタント
(株)Money&You代表取締役。中央大学商学部客員講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生命保険会社にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に現会社を創業し現職へ。ニュースメディア「Mocha(モカ)」、YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」、書籍、講演などを通じて鮮度の高いお金の情報を日々発信している。『はじめての新NISA&iDeCo』(成美堂出版)、『定年後ずっと困らないお金の話』(大和書房)、『マンガと図解 はじめての資産運用』(宝島社)、など書籍100冊、累計170万部超。日本証券アナリスト協会検定会員。宅地建物取引士。ファイナンシャルプランナー(AFP)。日本アクチュアリー会研究会員。X(旧Twitter)→@yorifujitaiki
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