20/02/09
源泉徴収票は1行だけ見る! 重要ポイントと確定申告すべき条件を解説
昨年末の年末調整、その後はどうなりましたか? 払い過ぎた税金が戻って、12月の給料に上乗せされたでしょうか?
年末調整が完了すると、給与明細とは別に源泉徴収票を受け取ります。慣れないと何が書いてあるかわかりにくいのですが、だからと言って見ないで捨ててしまってはいけません。
今回は、源泉徴収票のどこを見るべきか、おさえるポイントをお伝えします。
源泉徴収票とはいったい何?何のために発行されるの?
そもそも、源泉徴収票とはいったい何なのでしょうか。これは、いわば「年末調整の結果票」です。勤務先から給与・賞与でいくら受け取り、いくらの所得税を払ったのかが分かるようになっているものです。
もしかすると、年末調整の結果は12月の給与明細で分かる、と思う人もいるかもしれませんね。これも間違いではありません。
年末調整の結果、払い過ぎた税金があれば戻ってきますが、その金額は12月の給与明細に載ります。年末調整は手間がかかりますが、これだけ戻ってきた、と思うと納得もしますし、うれしいものです。
しかし、12月の給与明細で分かるのは、所得税の調整額のみです。
1年分の収入と所得税を把握するには、源泉徴収票をきちんと読むことが大切なのです。
また、源泉徴収票は住民税の計算のもとにもなります。しっかり年末調整をしておくことで、所得税だけではなく、住民税にも影響が出ることも意識しておきましょう。
源泉徴収票からどんなことがわかる? 注目すべきポイント
源泉徴収票にはいろいろなことが書かれていますが、見るべきポイントは1行だけです。
以下、ポイントをまとめて紹介します。
●源泉徴収票の見るべきポイント1:支払金額
まずチェックするのは、支払金額です。
支払金額とは、勤務先があなたに支払った金額の、1年間の合計です。左隣の「種別」の欄に「給与・賞与」と記載されていると思います。ですから、ここには昨年1~12月までの給与・賞与を合計した金額、いわゆる額面の年収が記載されています。
ただし、月15万円までの交通費は含まれません。
各種ローンやクレジットカードの申込時、賃貸マンションの入居時など、年収の記入が求められる機会は意外とあるものです。この時、年収を「毎月給与として振り込まれる金額×12」と考えてしまってはいけません。これは、額面の給与から社会保険料などを差し引いた「振込金額」です。
年収を聞かれたら、支払金額にある金額を答えるのが正解となります。なにより、十分な年収があるほうが信用度は高くなり、有利になります。源泉徴収票の支払金額を確認して、間違わないようにしておきましょう。
●源泉徴収票の見るべきポイント2:給与所得控除後の金額
次に、支払金額の右側の欄、給与所得控除後の金額を見ます。
給与所得控除とは何か。この説明の前に、収入と所得の違いについておさらいしましょう。
収入は入ってくるお金、所得は収入から経費を差し引いた残りのお金です。そして、所得に対して所得税がかかります。
経費とは、収入を得るために必要な支出のことです。商店であれば仕入れにお金がかかりますし、インターネットビジネスならパソコンが必要です。そのため、税金の計算のもとになる所得は、これらの経費を収入から差し引いて計算します。
会社員でも同様に経費がかかりますが、個人ごとに計算はせず、一定の計算式で差し引く金額を算出します。これを給与所得控除といいます。給与所得控除の金額は収入によって異なり、以下のように計算されます。
・給与所得控除(2017年分~2019年分)
つまり、給与所得控除後の金額とは、給与収入から経費=給与所得控除を差し引いた、給与所得のことなのです。
なお、給与所得控除額は、2020年分より変更になります。2021年以降の確定申告では、以下のように計算されます。
・2020年分以降
●源泉徴収票の見るべきポイント3:所得控除の額の合計額
では、給与所得に所得税率をかけて税額が計算されるのでしょうか。
実はそうではありません。給与所得からさらに所得控除を差し引いた金額が、所得税の計算のもとになる、課税所得となります。
所得控除はいくらだったのかは、「所得控除の額の合計額」を見ると分かります。
所得控除は全部で14種類あります。そのうち、年末調整でできる所得控除には、次のようなものがあります。
・基礎控除
・配偶者控除、配偶者特別控除
・扶養控除
・生命保険料控除
・地震保険料控除
・小規模企業共済等掛金控除
・社会保険料控除
・寡婦(寡夫)控除
給与所得控除後の金額=給与所得から、これら所得控除の額の合計額を差し引いて、課税所得が計算されます。
●源泉徴収票の見るべきポイント4:源泉徴収税額
そして、ようやく課税所得に税率をかけて、源泉徴収税額が計算されます。
源泉徴収票の源泉徴収税額を見てみましょう。
所得税の税率は、超過累進税率といって、所得が多くなるにしたがって、段階的に高くなっています。支払い能力に応じて、公平に税金を負担できるしくみだからです。
所得税は、次の計算式で計算できます。
・所得税の速算表
収入が多くても、差し引ける所得控除が多ければ、課税される所得金額=課税所得が少なくなり、税金が安くなります。税率も小さくなります。
そして、源泉徴収票をもとに住民税も計算されます。
ですから、多少面倒でも、年末調整はきちんとしたほうが所得税も住民税もオトクだということです。
確定申告をしたほうがいいのはどんな人?
ここまで読んで、年末調整をしっかりしていなかったことを後悔している人はいないでしょうか。
「生命保険料控除の証明書が見つからなくて年末調整の書類に書かなかった」「iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)の所得控除をどう書けばいいのかわからず、そのままにした」(小規模企業共済等掛金控除です!)
など、あるのではないでしょうか。
でも、やり残した所得控除は、これからでも間に合います。
それは、確定申告をすることです。
生命保険料控除の証明書は、なくしてしまったら再発行をしてもらいましょう。
実家の両親に仕送りなどをしている人は、扶養控除ができるかもしれません。
シングルマザーやシングルファーザーは、寡婦(寡夫)控除ができます。
こうしたことがもしあれば、確定申告をすべきでしょう。
また、確定申告でなければ受けられない所得控除もあります。
●医療費控除:医療費が高額になった場合
医療費控除は、年間10万円を超えたら、とよく言われますが、所得が200万円未満の場合は所得の5%を超えた分が医療費控除の対象になります。
●雑損控除:災害、盗難などで損害を被った場合
災害・盗難・横領によって、生活に通常必要な資産に損害を受けたり、それらに関連してやむを得ない支出をしたりした場合が雑損控除の対象です。
●ふるさと納税
寄付する自治体が5つまでなら、ワンストップ特例制度を利用して確定申告をしなくてもいいのですが、自治体が6つ以上の場合や、医療費控除などのために確定申告をする時にはふるさと納税も確定申告が必要です。
●住宅ローン控除
住宅ローンを組んで居住用の住宅を購入した場合、初年度の住宅ローン控除は確定申告が必要です。2年目以降は年末調整で対応できます。
まとめ
源泉徴収票には、1年間の収入、給与所得、所得税などが1枚にまとめられています。しっかり確認して、必要なら確定申告をしましょう。
以前は確定申告の際に源泉徴収票を添付していましたが、2019年4月よりは不要になっています。とはいえ、あったほうが手続きしやすいでしょうから、捨てずにとっておくようにしましょう。
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タケイ 啓子 ファイナンシャルプランナー(AFP)
36歳で離婚し、シングルマザーに。大手生命保険会社に就職をしたが、その後、保険の総合代理店に転職。保険の電話相談業務に従事。43歳の時に乳がんを告知される。治療を経て、現在は治療とお金の相談パートナーとして、相談、執筆業務を中心に活動中。FP Cafe登録パートナー
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