25/01/07
「年収の壁」103万円から123万円で手取りはいくら増える?106万円の壁は廃止へ【税制改正大綱】
物価が上がって家計へのダメージが大きい今、「もっと働いて収入を増やしたい」と考えているパート・アルバイトの人も多いのではないでしょうか?2025年度以降、パート・アルバイトの「年収の壁」が一部変更になるので注意しておきましょう。
今回は「令和7年度税制改正大綱」等で明らかになっている「年収の壁」の変更点を説明します。
所得税の「年収の壁」は123万円に引き上げ
パートやアルバイトの人も、働いて年収が一定額を超えると所得税がかかります。これまで所得税は年収103万円を超えた場合にかかっていました。所得税には基礎控除48万円があるほか、給与所得者は給与所得控除として最低55万円の控除があるため、年収103万円まで所得税が発生しなかったのです。
2025年度からは基礎控除が58万円に、給与所得控除の最低額が65万円に引き上げられることが決定しました。つまり、今後は年収123万円まで所得税はかからなくなります。税金が発生しないよう働き控えをしているパート・アルバイトの人は、収入を増やすチャンスと言えるでしょう。控除額が増えると、フルタイムで働いている人の税金も少し減ることになります。
なお、所得に対してかかる税金には住民税もあります。住民税の基礎控除は43万円で2025年度以降も変わりません。しかし、2025年度から給与所得控除が上がるため、住民税の負担も少し減ります。
年収ごとのおおよその減税額は
・年収150万円…2万円
・年収300万円…5,000円
・年収500万円…1万円
・年収800万円…2万円
・年収1,200万円…2万3000円
・年収1,500万円…3万3000円
となります(いずれも単身者で会社勤め、所得控除は基礎控除・社会保険料控除のみを想定)。
学生アルバイトの「年収の壁」も150万円に引き上げ
税金に関して、学生アルバイトにも年収の壁があるのをご存じでしょうか?学生の子供のアルバイト年収が増えると、親の手取りが減ってしまう問題があります。
19歳~22歳の「特定扶養親族」がいる人、つまり大学生の年齢の子がいる親は、所得税に関して63万円の扶養控除を受けられます。これまで親が扶養控除を受けるには、子供の年収103万円以下という要件がありました。子供が年収103万円を超えると、親の扶養控除はゼロになっていたのです。子供が生活を助けようとアルバイトを頑張っても、年収103万円を超えると親の税金が増える結果になっていました。
2025年度からは親が扶養控除を受けられる子供の年収が103万円から150万円に引き上げられます。子供の年収150万円までは、親は63万円の控除を受けられます。さらに、子供の年収が150万円を超えても控除額はゼロとはならず、段階的に控除額が減る「特定親族特別控除」(仮称)という仕組みが導入されます。
厚生年金の「106万円の壁」は撤廃に
パート・アルバイトの人にとっては、社会保険(厚生年金・健康保険)加入の「年収の壁」もあります。社会保険加入義務が発生すると、毎月社会保険料を負担しなければならず、手取りが減ってしまいます。
これまで従業員51人以上の企業で週20時間以上勤務している人については、賃金月8.8万円(年収106万円)以上で厚生年金加入義務が生じていました。パート・アルバイトの人の中には、「106万円の壁」を超えないよう、働き控えをしてきた人も少なくないでしょう。
厚生労働省は、厚生年金加入の賃金8.8万円以上の要件を2026年10月に撤廃する方針です。従業員51人以上という企業規模の要件も、2027年10月に廃止される見込みです。今後「106万円の壁」は撤廃され、週20時間以上働く人はパート・アルバイトであっても厚生年金加入が必要になります。
「年収の壁」の変更点を知って働き方を考えよう
「103万円の壁」は「123万円の壁」に変更になります。今後は年収123万円まで所得税がかからなくなります。働き控えをしている人も、収入を増やすことを考えましょう。
「106万円の壁」は撤廃され、週20時間以上働くパート・アルバイトの人は厚生年金加入が必要になります。厚生年金に加入すれば将来の年金が増え、長い目で見れば得することも知っておきましょう。
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森本 由紀 ファイナンシャルプランナー(AFP)・行政書士・離婚カウンセラー
Yurako Office(行政書士ゆらこ事務所)代表。法律事務所でパラリーガルとして経験を積んだ後、2012年に独立。メイン業務の離婚カウンセリングでは、自らの離婚・シングルマザー経験を活かし、離婚してもお金に困らないマインド作りや生活設計のアドバイスに力を入れている。
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