24/12/27
「負の遺産」があっても相続放棄できなくなる4つのケース
亡くなった人が「負の遺産」を残していても、相続放棄をすれば引き継がずにすみます。ただし、うっかりしていると相続放棄ができなくなってしまうことがあるので注意しておきましょう。今回は、相続放棄ができなくなる4つのケースについて説明します。
相続放棄をする人は増加傾向
相続放棄とは、相続人としての立場を放棄し、一切の財産を相続しない旨の意思表示をすることです。相続ではプラスの財産だけでなくマイナスの財産である借金も引き継ぎます。相続放棄をすれば、亡くなった人の財産も借金も一切相続することがありません。
裁判所の司法統計によると、2023年(令和5年)の相続放棄の受理件数は28万2785件となっています。下のグラフからわかるとおり、相続放棄をする人は年々増加しています。
<相続放棄の受理件数の推移>
最高裁判所事務総局「令和5年 司法統計年報(家事編)」より筆者作成
借金を引き継ぎたくない場合のほか、空き家になった実家をもらいたくない、相続トラブルに巻き込まれたくないなどの場合にも、相続放棄を考えることがあります。しかし、いざ相続放棄をしようとしても、できないケースがあることを知っておきましょう。
以下、相続放棄ができないのはどんな場合か、4つの例を挙げて説明します。
相続放棄ができないケース①:相続放棄の期限が過ぎてしまった
相続放棄をするには、相続開始を知った日から3か月という「熟慮期間」の間に、家庭裁判所で相続放棄の申述の手続きをする必要があります。熟慮期間を過ぎてしまった場合には、相続放棄はできません。
相続財産に調査に時間がかかる場合などは、熟慮期間の延長も可能です。ただし、この場合にも当初の3か月の熟慮期間内に家庭裁判所に期間延長の申立てをする必要があります。
なお、亡くなった人に借金があるのが当初は全くわからず、債権者から督促の通知が来て初めてわかるようなケースもあります。このような場合には、借金の事実を知ってから3か月以内であれば、例外的に相続放棄が認められます。
相続放棄ができないケース②:相続財産を使うか処分してしまった
亡くなった人の預貯金を引き出して自分のために使ってしまった場合、それ以降相続放棄はできません。亡くなった人の預貯金や不動産を自分に名義変更した場合も同様です。亡くなった人の持ち物を勝手に処分したり売却したりした場合にも、相続放棄ができなくなってしまいます。これらの行為からは、相続財産を引き継ぐ意思があると考えられるからです。
相続放棄ができないケース③:遺産分割協議書に押印してしまった
相続人が複数いる場合、相続人全員で遺産分割についての話し合い(遺産分割協議)を行うことになります。相続放棄する人は、相続人でない扱いとなるため、遺産分割協議に参加する必要はありません。もし相続放棄する前に遺産分割協議に参加あるいは遺産分割協議書に押印すれば、自らが相続人であることを認めたことになり、相続放棄ができなくなってしまいます。
なお、遺産分割協議に参加して相続を放棄する意思を表示しても、亡くなった人の借金の支払い義務を逃れることはできません。相続放棄をするには、家庭裁判所に申し立てる必要があります。
相続放棄ができないケース④:手続きに不備がある
家庭裁判所で相続放棄の申述をする際には、戸籍謄本等の必要書類を提出しなければなりません。手続きで必要な戸籍謄本は、数が多くなるのが一般的です。申述書の提出までに間に合わない戸籍謄本は後日追加で提出することも可能ですが、最終的に提出できなければ相続放棄もできなくなってしまいます。自分で戸籍謄本を集める自信がない場合には、弁護士、司法書士、行政書士等の専門家に早めに依頼するのがおすすめです。
相続放棄の手続きは早めにしよう
相続放棄をすれば、亡くなった人の残した借金を引き継がずにすみます。相続放棄をする場合、通常は死亡日から3か月以内に家庭裁判所に相続放棄申述書を提出する必要があります。手続きに必要な戸籍謄本の収集には時間がかかることもあるため、早めに準備をしましょう。相続を承認したとみなされないよう、相続放棄をするなら、相続財産には関与しないことも大切です。
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森本 由紀 ファイナンシャルプランナー(AFP)・行政書士・離婚カウンセラー
Yurako Office(行政書士ゆらこ事務所)代表。法律事務所でパラリーガルとして経験を積んだ後、2012年に独立。メイン業務の離婚カウンセリングでは、自らの離婚・シングルマザー経験を活かし、離婚してもお金に困らないマインド作りや生活設計のアドバイスに力を入れている。
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