24/11/09
スポーツジムで医療費控除が受けられるための4つの条件
「健康のためにスポーツジムに通いたい」というものの、気になるのは毎月の利用料。
実は、条件を満たせばスポーツジム代でも医療費控除が受けられ、税金が安くできます。
今回は、スポーツジム代で医療費控除を受ける4つの条件と、医療費控除を受ける方法を解説します。
スポーツジム代で医療費控除を受けるための4つの条件
医療費控除は、自分や家族が1年間(1月1日から12月31日まで)にかかった医療費が10万円(総所得金額等が200万円未満の場合は総所得の5%)を超えた場合に、受けられる所得控除のひとつ。所得控除を受けると、所得税や住民税が安くなります。
ただし、「病気の予防や健康増進のための費用」は原則として医療費控除の対象外なので、健康増進のために通うスポーツジム代も、本来は医療費控除の対象外です。
しかし、次の4条件を満たしていれば、スポーツジム代も医療費控除の対象になります。
●スポーツジム代で医療費控除を受ける条件1:処方箋をもらう
スポーツジム代で医療費控除を受けるには、「運動療法処方箋」という、医師による処方箋が必要です。運動療法処方箋は、高血圧症、脂質異常症、糖尿病、虚血性心疾患などの生活習慣病にかかっており、運動療法をしたほうがいいと医師が判断した場合に交付されます。この運動療法処方箋に基づいてスポーツジムを利用することで、医療費控除が受けられます。
運動療法処方箋があることで、スポーツジムでの運動などが治療の一環になると考えるとわかりやすいですね。
●スポーツジム代で医療費控除を受ける条件2:厚生労働省の指定施設を使う
運動療法処方箋があれば、どんなスポーツジムでも医療費控除の対象になる、というわけではありません。スポーツジム代で医療費控除を受けるには、「運動療法を行うに適した施設」として厚生労働省から指定された「指定運動療法施設」を使う必要があります。
指定運動療法施設には、運動が安全に行える設備や生活指導のための設備が整っており、健康運動指導士・運動指導者などが配置されています。また、指定運動療法施設は、運動療法処方箋に記載の運動がきちんとできるよう、提携医療機関から運動療法の指導・助言を受けています。
このような条件を満たしたスポーツジムを利用する必要があるのです。
指定運動療法施設は、2024年10月23日時点で、全国で352施設あります。
「指定運動療法施設」は、厚生労働省のウェブサイト内にある「運動型健康増進施設(認定施設一覧)」から調べられます。ウェブサイトでは地域別に施設の一覧がまとめられています。「メディカルフィットネス」「◯◯スポーツセンター」といった名前が多いようです。
利用したい施設が「指定運動療法施設」に該当するかどうか、事前に必ず確認をしましょう。
●スポーツジム代で医療費控除を受ける条件3:1回あたりの利用料金が1万円以内
医師による運動療法処方箋に基づいてスポーツジムで運動をする際の1回あたりの利用料金が1万円(税込)以内である必要があります。いくら医師の運動療法処方箋があって運動が必要だからといっても、高すぎるスポーツジムを利用するのはNGです。
●スポーツジム代で医療費控除を受ける条件4:週1回以上・8週間以上通う
生活習慣病の改善には、適度な運動習慣を身につけることが効果的。運動を習慣化することが大切です。そのため、対象のスポーツジムに週1回以上、かつ8週間以上継続して通うことが医療費控除を受ける条件になっています。
生活習慣病の改善をするだけでなく、その後の予防も必要ですので、運動を習慣化する必要があります。「毎週◯曜日の◯時からは必ずスポーツジムに行く」などとスケジュール化して、定期的に継続して通うのがよいでしょう。
医療費控除を申請するには確定申告が必要
医療費控除を受けるには、確定申告が必要です。
スポーツジム代で医療費控除を受けるには、
①運動の終了後、スポーツジムから「運動療法実施証明書」をもらう
②運動療法実施証明書を主治医(かかりつけの医師)に提出し、署名してもらう
③確定申告を行う
という手続きが必要です。
確定申告では、運動療法実施証明書とスポーツジムの利用料金を支払ったことを示す領収書の内容をもとに「医療費控除の明細書」に記載し、確定申告書とともに提出します。
運動療法実施証明書や領収証を提出する必要はありませんが、確定申告の期限から5年間は自宅等で保存する必要があります。
医療費控除で税金はいくらお得になる?
医療費控除の金額は、次の計算式で計算できます。
医療費控除の額=(1年間に支払った医療費の総額-保険金などで補てんされる金額)-10万円※
※総所得金額200万円未満の場合、総所得金額の5%
たとえば、月額2万円のスポーツジムに1年間通ったとします。この場合、医療費控除の金額は
(2万円×12か月)-10万円=14万円
となりますので、所得が14万円減らせます。
所得税の税率は所得によって5%~45%の7段階。住民税の税率は所得税率に関わらず一律10%です。したがって、仮に所得税率が5%ならば、
・所得税…14万円×5%=7000円
・住民税…14万円×10%=1万4000円
ですので、税金は合計2万1000円安くなります。
同様に所得税率が10%ならば、
・所得税…14万円×10%=1万4000円
・住民税…14万円×10%=1万4000円
となり、税金は合計2万8000円安くなります。
確定申告をすることで、払い過ぎている所得税が還付され、翌年の住民税が安くなります。
「スポーツジム代が10万円もかからなかった」という方もいるかもしれませんが、医療費控除は他の医療費や家族の分の医療費も合算して申請できますので、10万円(あるいは総所得金額の5%)を超えていないかを確認するとよいでしょう。
健康増進のためのスポーツジムは本来医療費控除の対象外ですが、4つの条件を満たせば医療費控除の対象となり、所得税や住民税を減らせます。条件を満たせるのであれば、医療費控除ができるスポーツジムで運動して、節税しながら健康を手に入れましょう。
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頼藤 太希 マネーコンサルタント
(株)Money&You代表取締役。中央大学商学部客員講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生命保険会社にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に現会社を創業し現職へ。ニュースメディア「Mocha(モカ)」、YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」、書籍、講演などを通じて鮮度の高いお金の情報を日々発信している。『はじめての新NISA&iDeCo』(成美堂出版)、『定年後ずっと困らないお金の話』(大和書房)、『マンガと図解 はじめての資産運用』(宝島社)、など書籍100冊、累計170万部超。日本証券アナリスト協会検定会員。宅地建物取引士。ファイナンシャルプランナー(AFP)。日本アクチュアリー会研究会員。X(旧Twitter)→@yorifujitaiki
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