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24/10/13

相続・税金・年金

「年金70歳繰り下げで月20万円」もらうには、現役時代の年収はいくら必要か

「年金70歳繰り下げで月20万円」もらうには、現役時代の年収はいくら必要か

通常、年金は65歳からもらうことができますが、あえて受給を70歳まで繰り下げると、増額した年金をもらうことができます。では、65歳まで働いた人が年金を70歳から繰り下げ受給する場合、現役時代にどれくらいの年収があれば月20万円の年金をもらうことができるのでしょうか?今回は大卒の会社員を事例に試算してみたいと思います。

年金の繰り下げ受給とは?

年金の繰り下げ受給とは、年金を65歳では受け取らず、受給を66歳から75歳までの間に繰り下げることです。繰り下げ受給をすると、1ヵ月につき0.7%、年金を増額することができます。たとえば、70歳まで繰り下げると年金は42%増額されます。また、増加した受給額は一生涯変わりません。働く期間を延ばしたり、年金以外の収入が見込めたりする場合や、もらえる年金を増やしたいと考える場合は繰り下げ受給を選択してもよいでしょう。

年金を70歳まで繰り下げて「年金月20万円」を実現する年収はどれくらい?

2021年に高年齢者雇用安定法が改正され、2025年4月からすべての企業で65歳までの雇用確保が義務化されます。また、年金収入だけの生活を不安に思う人も増えていることから、今後は多くの人が65歳まで働くようになるでしょう。65歳まで働けば貯蓄を増やすことができ、年金を繰り下げ受給する余裕が出てくるかもしれません。

では、65歳まで厚生年金に加入して働き、年金を70歳から繰り下げ受給する場合、年金を「月20万円」もらうためには、現役時代にどれくらいの年収が必要になるのか試算してみましょう。

<試算の条件>

・大卒 会社員
・20歳から国民年金に加入し、23歳から65歳まで厚生年金に加入
・厚生年金の加入期間は42年間(504月)
・老齢基礎年金は満額受給(2025年度の満額81万6000円で試算)
・年金は70歳まで繰り下げ受給で、月20万円(年額240万円)受給

会社員の年金は、老齢基礎年金と老齢厚生年金の合計額になります。

○老齢基礎年金

老齢基礎年金の満額は81万6000円なので、これを70歳から繰り下げ受給すると42%増額できます。
 81万6000円×1.42=115万8720円

○老齢厚生年金

厚生年金の受給額は下記で計算できます。
 老齢厚生年金の受給額=平均標準報酬額×0.005481×厚生年金の加入月数

70歳から受給する老齢基礎年金は115万8720円なので、年金を年額240万円(月20万円)受給するには、老齢厚生年金は124万1280円必要になります。
 240万円-115万8720円=124万1280円

124万1280円は70歳まで繰り下げた場合の受給額なので、繰り下げずに65歳から受給した場合の年金額に戻します。
 124万1280円÷1.42≒87万4140円

65歳からの受給額は87万4140円になります。

次に、現役時代の平均標準報酬額を求めます。
 X×0.005481×504月=87万4140円
 X≒31万6000円

平均標準報酬額を月額として年収に換算します。
 31万6000円×12ヵ月=379万2000円

試算の結果、65歳まで厚生年金に加入して働き、年金を70歳から繰り下げ受給する場合、年金を月20万円(年額240万円)確保するには、現役時代の年収は約379万円必要であることがわかりました。

なお厳密には、平均標準報酬額の計算の元になる「標準報酬月額」に31万6000円という区切りがありません。もっとも近い区切りは「32万円」で、毎月の給与(報酬月額)が31万円以上33万円未満の場合が該当します。
したがって、現役時代の年収が372万円以上396万円未満であれば、国民年金+厚生年金を70歳まで繰り下げた場合に年金月20万円が達成できます。

同じ条件で、繰り下げ受給をせずに65歳から年金を月20万円確保するために必要な年収を試算すると、約722万円という結果になりました。
年収が約400万円前後でも、繰り下げ受給をすれば月20万円の年金を確保できる可能性があることがわかります。ただし、国民年金や厚生年金の加入期間が短い場合や働き方が異なる場合、月20万円を受給できない場合もあるのでご留意ください。

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70歳まで社会保険に加入して働くメリットは?

年金を70歳から繰り下げ受給すると、会社を退職してから70歳になるまでは無収入になるので、収入の確保が必要です。その対策として、70歳まで社会保険に加入して働くのも1つの方法です。
社会保険に加入すれば、厚生年金保険、健康保険、介護保険、雇用保険、労災保険の保障を受けることができます。
では、70歳まで厚生年金に加入して働くと、どのようなメリットがあるのでしょうか。

●定年退職から70歳までの収入が確保できる

多少なりとも収入があれば、貯蓄の取り崩しを減らすことができます。働く期間を延ばせば、老後資金が目減りする不安を少しでも解消することができるでしょう。

●年金を増やせる

70歳まで厚生年金に加入すれば、老齢厚生年金を増やすことができます。年金の受給額を増やせれば、年金生活に入ってからの不安を減らせるでしょう。

●健康保険料を抑えることができる

定年退職後、国民健康保険に加入すると、保険料の負担が増えるかもしれません。国民健康保険には扶養の概念がないため、配偶者を扶養する場合は2人分の保険料を負担する必要があります。その点、70歳まで会社の健康保険に加入して働けば、扶養する配偶者の保険料は負担しなくてもよくなります。それだけでなく保険料は会社と折半になるので、健康保険料の負担を抑えられます。

●病気やケガのときに傷病手当金をもらえる

会社の健康保険に加入すると、病気やケガで4日以上会社を休んで給与が支払われなくなったときに、傷病手当金をもらえます。仕事をしない場合や繰り下げ受給の待機で無収入となる場合、病気やケガをすると、貯蓄から生活費と医療費の両方を負担することになるので、老後資金の目減りが不安になるかもしれません。その点、社会保険に加入して働けば、傷病手当金をもらえるので生活費が保障され安心です。

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生活費が用意できるなら繰り下げを検討しよう

今回は試算の結果、現役時代の年収が約400万円前後であっても、65歳まで42年間厚生年金に加入して働き、70歳から繰り下げ受給をすれば、月20万円の年金を確保できることがわかりました。

年金の受給額が1ヵ月につき0.7%増えて、増額した年金額は一生涯変わらない繰り下げ受給は、年金の受給が始まるまでの生活費を用意できる状況なら選択してもよいでしょう。
自分の年金見込額は、毎年誕生月に日本年金機構から送られてくる「ねんきん定期便」を見ればわかります。年金の受給見込み額を確認して、人生後半の働き方や収入を確保する方法を考えてみてはいかがでしょうか。

前佛 朋子 ファイナンシャル・プランナー(CFP®)・1級ファイナンシャル・プランニング技能士

2006年よりライターとして活動。節約関連のメルマガ執筆を担当した際、お金の使い方を整える大切さに気付き、ファイナンシャル・プランナーとなる。マネー関連記事を執筆するかたわら、不安を安心に変えるサポートを行うため、家計見直し、お金の整理、ライフプラン、遠距離介護などの相談を受けている。

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