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24/07/14

相続・税金・年金

【知らないと損】年金「財政検証」でわかった3つの事実

【【知らないと損】年金「財政検証」でわかった3つの事実

5年に一度行われる公的年金のビッグイベント「財政検証」の結果が、2024年7月3日、厚生労働省から公表されました。私たちの老後を左右する年金は、果たして大丈夫なのでしょうか。そこで今回は、そもそも「財政検証」とはいったい何かという話から、検証結果の中身、それらの結果を踏まえてどのような制度改正が想定されるかまで、わかりやすく解説します。

「財政検証」がもっとわかる3つの基本知識

国立社会保障・人口問題研究所が公表している「社会保障費用統計」によると、2021年度の年金給付額の合計は55.8兆円。この55.8兆円は、私たちが納めている保険料、国庫(税金)、年金積立金によってまかなわれていますが、財政検証はまさに、財源(収入)と給付(支出)のバランスが、将来にわたって健全であるかを検証するためのものです。

●財政検証の基本知識(1):「投影」で年金財政や将来の給付水準を見通す

年金財政には、人口や労働力、経済(成長)といった要素が大きく関わってきますが、何が起こるか分からない不確実な社会経済を「予測」することは誰にもできません。もし誰かの予測を元に検証するのであれば、その結果は運任せであり、評価は「当たった」か「外れた」かの二択です。

そこで財政検証では、すでに利用できる(されている)人口・労働力・経済データを、「投影」させる形がとられています。5年に一度かならず社会経済の現状や変化を「投影」し、PDCA(計画・実行・評価・改善)サイクルを回し続ける、これが財政検証の意義です。逆に言えば、持続可能な年金財政を担保するための仕組みが、年金制度の中に組み込まれていることを知っておくとよいでしょう。

<2024年財政検証で用いられている社会・経済状況の前提>

厚生労働省「令和6(2024)年財政検証結果」より

●財政検証の基本知識(2):「所得代替率」は給付水準を測るモノサシ

財政検証では、これらの前提をもとにケース別の「所得代替率」が示されます。「平均的な賃金で40年間就業した夫」と「40年間専業主婦で基礎年金のみの妻」の世帯における年金額(モデル年金)が、現役男子の手取り収入に対してどのくらいの比率かを示す「所得代替率」は、年金の給付水準を示す重要な指標です。

年金制度は、2004年の大改革によって、給付水準の維持に保険料を合わせるのではなく、保険料の上限を固定したうえで給付水準を自動的に調整していく仕組み(マクロ経済スライド)が導入されました。マクロ経済スライドは、すでに年金を受け取っている人の年金にも適用されています。

2024年度の所得代替率は61.2%(厚生年金:25.0%、基礎年金:36.2%)。財政検証の結果を見る上ではまず、この給付水準の調整が、厚生年金と基礎年金それぞれいつ終了し、終了した年度以降の所得代替率が何%になっているかに注目します。そして、もしも経済成長や労働参加が進まないと、年金はいったいどうなるのか。結局のところ、年金財政が健全であり続けるかはこれからの社会経済次第であり、個人レベルではモデル年金を超えた働き方の大切さに気付くことでしょう。

●財政検証の基本知識(3):「オプション試算」で改革の方向性がわかる

財政検証の一番の役割は、1つ目および2つ目に紹介した視点に基づいて、「財政の現況および見通し」を作成することです。しかしながら、それは現在の年金制度の枠組みを元にしているため、「もしもこの方向で年金制度を改正したら」といった視点は別に検証する必要があります。

オプション試算はつまり、制度改正を仮定した上での財政見通しを明らかにしたものであり、前々回(2014年)の財政検証から新たに加わりました。もしかすると、「被用者保険の更なる適用拡大」や「保険料拠出期間の延長と受給開始時期の選択」などが検証されてきたオプション試算の方が、みなさんは気になるかもしれません。

財政検証でわかったこれからの年金を決める3つの鍵

みなさんがマスコミの情報等で見かける数字のほとんどは、人口の前提を「中位」(出生中位、死亡中位、入国超過数16.4万人)とした場合のものです。厚生労働省が財政検証結果の概略を説明する資料でも、人口中位を前提とする数字が示されていますが、実際には、例えば「出生低位」を前提においた場合など、より詳細な試算が行われています。

<人口中位モデルにおける所得代替率の試算>

厚生労働省「令和6(2024)年財政検証結果」より筆者作成

2024年度の所得代替率を基準に、高成長が実現したケースからゼロ成長だったケースまで4通りの所得代替率が試算されています。今回の試算では、前回(2019年)の想定よりも給付水準の調整が早く終わり、かつ終了したときの所得代替率が高くなっています。その点では、今回の財政検証の結果は年金財政にとって比較的前向きな内容だったと言えるでしょう。

しかしながら、財政検証は前回(2019年)の検証が「当たった」「外れた」ことを示すものではありません。この5年間における社会経済のどのような変化が年金財政にプラスの影響を与えたのか、逆に持続的な年金財政に向けて超えなければならない課題はいったい何なのかという話は、私たち個人レベルでも重要です。

では、財政検証でどんなことがわかったのか、具体的に3つの事実を見ていきましょう。

●財政検証でわかった事実(1):厚生年金保険の加入者増が給付水準を底上げする

前回の財政検証における2023年の公的年金被保険者数の見通しは6,570万人でしたが、(実績見込みではあるものの)2023年度の被保険者数はそれよりも180万人多い6,750万人。とりわけ、厚生年金保険者の数が想定よりも250万人多い4,425万人になった点に注目です。

<年金制度における被保険者構造の変化>

厚生労働省「令和6(2024)年財政検証結果」より

出生率は5年前の想定よりも下がったものの、厚生年金被保険者や公的年金被保険者など、年金の支え手となる人数は見通しを上回っています。多くの人が労働市場へ参入していることが、年金財政にプラスの影響をもたらしています。高齢期にも厚生年金保険に加入して働く人が増えている現状は、年金制度の支え手を増やし、「現役世代」の定義を従来よりも拡張していると言えるでしょう。

さらに、会社員や公務員等に扶養されている第3号被保険者の数が、5年前の見通し(762万人)よりもさらに61万人減少(701万人)している点にも注目です。厚生年金保険料には、世代内での所得再分配の機能があります。今回の財政検証でも、第3号および第1号被保険者の一部が厚生年金保険に移動することによって、基礎年金を中心に将来の給付水準が底上げされることが改めて示されました。

●財政検証でわかった事実(2):年金の積立金が見通しより約70兆円増

私たちが納めている保険料のうち年金給付等に充てられなかったものは、「年金積立金」として、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が国内外の資本市場で運用しています。年金積立金は、保険料と国庫負担(税金)ではまかないきれない部分を補うとともに、中長期的には将来世代の負担を和らげるために取り崩していきながら、おおむね100年後に1年分程度の年金給付に必要な積立金が残る計画です。

<年金財源の構成割合(成長型経済移行・継続ケース)>

厚生労働省「令和6(2024)年財政検証関連資料①」より

2023年度末時点における年金積立金は、前回の財政検証における見通し(221兆円)より約70兆円多い291兆円となりました。
「円安・株高で一時的に増えて見えるだけでは?」と思う人もいるかもしれません。しかし、財政検証では、各年度の運用成績と平均の運用成績との差を5年で積立金に反映していく「平滑化」が施されており、市場の短期的な変動の影響を緩和しています。

<年金積立金の現状>

厚生労働省「令和6(2024)年財政検証結果」より

2023年度(実績見込み)は年金積立金を取り崩すことなく給付をまかなえているものの、今後の経済動向次第では年金積立金を取り崩すスピードが加速するかもしれません。今回の財政検証における最悪な経済シナリオである「1人当たりゼロ成長ケース」では、2059年に積立金が枯渇することが明らかになりました。もっとも、前回の財政検証では2052年に枯渇するとされていただけに、厚みを増した年金積立金が枯渇するまでの期間を後ろ倒しにした形です。

●財政検証でわかった事実(3):真の注目は「実質賃金」と年金の「実質価値」

今回の財政検証では、「所得代替率50%の維持」が確認されましたが、給付水準の調整(マクロ経済スライド)が行われている状況下で、年金の「実質価値」が上昇するかどうかも重要です。私たち個人レベルでは、所得代替率よりも実質価値を見る方が重要かもしれません。

今回の「成長型経済移行・継続ケース(下図、左上)」と「過去30年投影ケース(下図、右上)」で比較してみましょう。

<モデル年金の将来見通し比較>

厚生労働省「令和6(2024)年財政検証結果」より

どちらのケースでも現役世代の手取り収入が増加している点は同じであり、現役世代の購買力(物やサービスを買うことのできる力)・生活水準は上昇しています。
「成長型経済移行・継続ケース」では、マクロ経済スライドによる給付水準の調整が終了する2037年度まで所得代替率は下がっていくものの、物価上昇分を割り引いた新規裁定時のモデル年金額は増えており、年金受給者も購買力が上がります。
一方で、「過去30年投影ケース」では、基礎年金部分が特に影響を受ける形でモデル年金額も減っており、年金受給者の購買力が下がります。

しかしながら、それは「平均的な賃金で40年間就業した夫」と「40年間専業主婦で基礎年金のみの妻」の世帯からなるモデル年金の話です。いずれのケースでも、厚生年金保険への加入歴があって平均年金額がもらえる女性の場合は、物価の伸びを上回っており、厚生年金保険料の「所得再分配機能」も発揮されています。

今回の財政検証では改めて、物価高を上回って賃金が増加(実質賃金の上昇)する経済こそが、現役世代・年金受給者双方にとって喜ばしいことが明らかになりました。このような経済の実現に希望や期待を抱きつつ、これらの検証結果は、(女性を中心に)厚生年金保険に加入しながら働く意義を考えるきっかけを提供していると言えるでしょう。

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今後想定される年金制度の改正は何!?

年金制度改正の方向性を考える「オプション試算」。今回の財政検証では5つの項目について試算が行われました。

<2024年財政検証におけるオプション試算のテーマと今後の動向・見通し>

筆者作成

これらのうち、「1. 被用者保険の更なる適用拡大」、「2. 基礎年金の保険料拠出期間延長」、「4. 在職老齢年金制度」に関する検証結果を紹介するとともに、次期制度改正に向けた動向を解説します。
オプション試算で取り上げられたテーマが、かならず制度改正につながるわけではありません。制度改正を最後に決めるのは、あくまで国会。財政検証の結果や審議会の議論等を踏まえて、政府・与党、国会がどのような結論をだすのか、2025年にかけて注目です。

●厚生年金保険のさらなる適用拡大はほぼ間違いなし

2022年10月から、週の所定労働時間が20時間以上など一定の要件を満たしていれば、従業員数が101人以上(以前は501人以上)の企業に勤めるパートタイマーやアルバイトも厚生年金保険に加入できます。また、2024年10月からは51人以上の企業にまで拡大されます。
今回のオプション試算ではさらに、加入対象を4つのシナリオ(約90~860万人)で広げると給付水準がどうなるのか検証が行われました。

<厚生年金保険の適用拡大によるマクロ経済スライド調整終了年度と所得代替率>

厚生労働省「令和6(2024)年財政検証結果の概要」より

厚生年金保険の適用拡大が、年金財政および将来の給付水準にもたらすプラスの影響については、「財政検証でわかった事実」の(1)や(3)でも紹介したとおりです。
上図も、適用拡大が基礎年金を中心に給付水準を底上げすることを示しており、適用拡大は「ほぼ間違いなし」と言ってよいでしょう。あとは、拡大する範囲の問題です。

2024年7月1日に行われた厚生労働省の有識者懇談会では、短時間労働者にかかる企業規模の要件を撤廃するとともに、5人以上の個人事業所は、業種によらず適用事業所とする案(約130万人)が了承されました。こちらの内容等も踏まえて、今後具体案が固まっていく見込みです。

●基礎年金の保険料拠出期間を「45年(20~64歳)」に延長する案は見送り

現在の「40年(20~60歳)」を上限とする基礎年金の保険料拠出期間を、「45年(20~64歳)」に延長する案で、基礎年金の給付水準が上がることは言うまでもありません。

<基礎年金の拠出期間延長による所得代替率の見通し>

厚生労働省「令和6(2024)年財政検証結果の概要」より

しかしながら、年約10万円の給付増につながることよりも、国民年金保険料が5年で約100万円かかる点が注目を集めたこともあり、財政検証の結果が公表される前から反発の声が多く上がっていました。それもあって、厚生労働省は2024年7月3日、「5年延長案」を見送ることを発表しています。
「5年延長案」の見送りの背景には、そのような反発の声に加えて、厚生年金保険への加入者増につながる取り組み(適用拡大など)の方が、優先順位が高いことが見て取れます。

●首相も言及した65歳以上の「在職老齢年金」見直し(撤廃)は三度目の正直

「在職老齢年金」とは、老齢厚生年金と給与(賞与を含む)の合計額が月50万円(2024年度)の支給停止調整額を超えていると、老齢厚生年金の一部または全額が支給停止となるルールです。

65歳以上の老齢厚生年金受給者のうち、2022年度に在職老齢年金で支給停止されていた人の数は50万人で、受給者全体の16%。その停止額は4,500億円にのぼります。もし65歳以上の在職老齢年金を撤廃した場合、4,500億円分の給付が増えるとともに、厚生年金の所得代替率は0.5%減少することが、今回の試算で明らかになりました。

65歳に到達してからも年金を受給しながら働く人が当たり前になってきたにも関わらず、支給停止調整額を意識して厚生年金保険に加入せずに働く選択をしている人がいるのも事実です。今回のオプション試算では見直しによる就労の変化は見込んでいませんが、年金制度(厚生年金保険)の被保険者増加が年金財政にもたらすメリットを考えると、これまで以上に実現度は高いかもしれません。そして、2024年4月に岸田首相が見直しに言及している点でも、注目度の高いテーマと言えるでしょう。

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「財政検証」を老後に向けた備えに役立てよう

今回は、2024年7月3日に公表された、5年に一度の公的年金にかかる「財政検証」結果を解説しました。年金財政の未来や私たちが将来もらえる年金の水準が、年金制度を取り巻く社会経済の動向次第であることは、今回の財政検証でも改めて明らかになった事実です。

一方で、今回の財政検証には、年金を通じて私たちができる望ましい備えとはいったい何なのか、つまり個人レベルでの行動につながるヒントが多く含まれていることも忘れてはなりません。公的年金のほかにも、その上乗せ給付を保障するiDeCo(確定拠出年金)など私的年金制度の見直し議論も、財政検証の結果を受けて本格化することが想定されます。財政検証への関心をきっかけに、老後に向けた備えに一歩を踏み出していきましょう。

神中 智博 ファイナンシャルプランナー(CFP®)

1992年宮崎県生まれ。関西学院大学会計大学院を修了後、NTTビジネスアソシエ西日本で、NTT西日本グループの財務や内部統制等の業務に従事。2022年10月に兵庫県神戸市で独立系FP事務所ライフホーカーを開業し、現在に至る。家計相談に加えて、公的年金や確定拠出年金(iDeCo・企業型DC)を活用した資産形成に関するテーマを中心に、執筆・講演活動も展開。「老後不安バスター」として、だれもが老後に向けて自信を持てる社会を目指して奮闘している。CFP®(日本FP協会認定)の他、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、1級DCプランナー、企業年金管理士(確定拠出年金)、一種外務員資格等を保有。
X(旧Twitter)→https://twitter.com/lifehawker

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