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23/07/24

相続・税金・年金

年約40万円の加給年金「もらえなくなる」のはどんなとき?

年約40万円の加給年金「もらえなくなる」のはどんなとき?

厚生年金には加給年金という制度があります。加給年金は、年金版の「家族手当」ともいわれる制度。加給年金は、一定の条件を満たせば年金額が加算されるのですから、対象であればぜひ受け取りたい年金です。
しかし2022年4月に加給年金の制度が改正されて、配偶者の状況によっては加給年金が支給停止になるケースが出てきました。そこで今回は、加給年金の内容と、夫が加給年金をもらえなくなるケースについて解説いたします。

厚生年金に上乗せしてもらえる加給年金

加給年金は、厚生年金に20年以上加入している人が65歳になったときに、生計を維持している年下の配偶者または子がいるときに加算される年金のことです。
加給年金を受給できる期間は配偶者が65歳になるまで、または子が18歳になる年度末まで(所定の障がいのある子の場合、20歳未満)となっています。また、加給年金を受け取るには届出が必要です。

●“生計を維持している”配偶者とは?

次の条件を満たしている場合は、「生計を維持している配偶者」に該当します。
・同居していること(別居でも仕送りしている、あるいは健康保険の扶養に入っているなどの場合は認められます)
・配偶者の前年度の収入が850万円未満(所得なら655.5万円未満)であること

●加給年金はいくらもらえる?

加給年金の金額は、毎年改定されます。2023年度は以下の通りです。

・配偶者:22万8700円
・1人目、2人目の子:1人あたり22万8700円
・3人目以降の子:1人あたり7万6200円

また、配偶者の加給年金には、生年月日によって特別加算があります。受給する人の生年月日が1943年(昭和18年)4月2日以後の場合、加給年金の特別加算額は16万8800円です。つまり、特別加算も受け取れる場合は、合計39万7500円を受給できます。

たとえば、夫が65歳、妻が60歳の夫婦の場合、妻が65歳になるまでの5年間にわたって加給年金を毎年40万円近く、総額で200万円近くもらえます。

ただし、配偶者が障害年金を受給することになったとき、あるいは離婚・死別したときは、加給年金は支給停止になります。

2022年4月に改正された加給年金制度

2022年3月までは、配偶者に老齢や退職を理由とする年金の受給権はあっても、全額支給停止になっているときは、夫は加給年金をもらうことができました。

しかし、2022年4月からは、配偶者に厚生年金の加入期間が20年以上になる老齢厚生年金の受給権がある場合、受給の有無に関係なく、夫がもらっている加給年金は全額支給停止になるよう改正されたのです。

ただし、これには経過措置があります。

(1)2022年3月時点で、夫の老齢厚生年金または障害厚生年金に加給年金が支給されている
(2)2022年3月時点で、配偶者に厚生年金の加入期間が20年以上になる老齢厚生年金の受給権があり、全額が支給停止されている

上記(1)(2)の要件を満たしている場合、経過措置として夫はこれまで通り加給年金をもらうことができます。

●加給年金の変更点

日本年金機構の資料より

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加給年金がもらえなくなるのはどんなとき?

夫が65歳になり加給年金をもらえることになっても、状況によっては加給年金が支給停止になることがあります。ここでは夫が加給年金をもらえなくなるケースをご紹介します。

●妻が65歳になったとき

加給年金は、65歳未満の配偶者がいる場合、要件を満たしていればもらえる年金です。そのため配偶者が65歳になった時点で加給年金の支給は終わります。その代わり、配偶者が老齢基礎年金を受け取れる、生年月日が1926年4月2日から1966年4月1日までの間、などの条件を満たすと、配偶者の老齢基礎年金に振替加算という加算が支給されます。

●子どもが18歳を過ぎたとき

18歳未満の子どもがいる場合、その子が18歳になる年度末まで(高校を卒業するまで)加給年金をもらえます。また、障がい等級1級・2級の子がいる場合は、その子が20歳になるまで加給年金をもらえます。ただし、子が高校を卒業したら(障がいを負った子が20歳になったら)、加給年金の支給は終わります。

●妻が年収850万円を超えたとき

加給年金の対象となる配偶者は「生計を維持している」ことが要件となっています。生計を維持しているとは、年収850万円未満(所得は655.5万円未満)とされているので、妻の年収が850万円以上になったら、加給年金は支給停止となります。

●妻の厚生年金の加入期間が20年以上になったとき

2022年4月からは、配偶者に厚生年金の加入期間が20年以上になる老齢厚生年金の受給権が発生したとき、加給年金が支給停止になると改正されました。そのため、厚生年金に加入して働く妻の加入期間が20年以上になったら、加給年金は全額支給停止となります。

●夫が年金を繰り下げ受給するとき

加給年金は、夫の老齢厚生年金に加算されるものです。そのため、夫が年金を繰り下げ受給すると、繰り下げている間は加給年金がもらえなくなります。妻が65歳になれば加給年金はもらえなくなるのですから、繰り下げする期間と妻との年齢差を考えたうえで、繰り下げ受給のタイミングを決めるとよいでしょう。

加給年金を受給するときは、「老齢厚生年金・退職共済年金 加給年金額加算開始事由該当届」に必要書類を添えて年金事務所へ提出します。

反対に、加給年金が支給停止になるときも手続きが必要になる場合があります。配偶者に加入期間が20年以上の老齢厚生年金の受給権が発生したとき、または障害年金を受給することになったときは、加給年金を停止する手続きが必要です。その際は「老齢・障害給付 加給年金額支給停止事由該当届」を年金事務所または年金相談センターへ提出しましょう。

手続きの詳細は、日本年金機構のホームページで確認してください。

まとめ

加給年金とは、厚生年金の加入期間が20年以上ある人が65歳になったとき、年下の配偶者もしくは子がいる場合にもらえる、いわゆる年金の家族手当ともいえる年金制度です。

加給年金は老齢厚生年金に加算されるので、繰り下げ受給をすると繰り下げ期間中はもらえなくなります。また2022年4月からは、配偶者に厚生年金の加入期間が20年以上になる老齢厚生年金の受給権が発生した時点で、加給年金は全額支給停止になります。
年金制度の改正で、加給年金の支給停止になる範囲が広がる形にはなりましたが、要件を満たせばもらえる年金です。受給対象者となるときは、忘れずに手続きをしてくださいね。

前佛 朋子 ファイナンシャル・プランナー(CFP®)・1級ファイナンシャル・プランニング技能士

2006年よりライターとして活動。節約関連のメルマガ執筆を担当した際、お金の使い方を整える大切さに気付き、ファイナンシャル・プランナーとなる。マネー関連記事を執筆するかたわら、不安を安心に変えるサポートを行うため、家計見直し、お金の整理、ライフプラン、遠距離介護などの相談を受けている。

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