23/01/04
2023年の住宅ローン、固定金利と変動金利どっちにすべきなのか
マイホームの購入にあたって、住宅ローンを組むことを検討している人もいると思います。住宅ローンを選ぶ際に、固定金利と変動金利、どちらを選べばいいか悩みますよね。
特に、2022年12月に日銀の政策転換が行われ、長期金利に連動する固定金利の上昇圧力が懸念されています。
今回は、固定金利と変動金利のしくみや違い、選ぶときのポイントについて解説します。
固定金利と変動金利の違い
住宅ローンの金利の種類は、大きく分けると「固定金利」と「変動金利」の2つです。
固定金利の場合、文字通り返済期間中の金利が固定されており、変わらないということです。長期の固定金利型のローンは、10年国債金利が指標になっています。
この固定金利も、返済期間中ずっと金利が固定されている「全期間固定型」と、金利が固定される期間が2年、3年、5年、10年などと決まっている「固定金利期間選択型」があります。
固定金利期間選択型では、たとえば金利の固定期間を10年とした場合、この10年が終わったら以後の金利を変動金利にするか、その時点の金利水準で再計算された固定金利にするかを選択することができます。
一方、変動金利の場合には、その時点での金融情勢に応じた水準の金利で借り入れができます。変動金利型のローンは、日銀の政策金利の影響を受けます。ほとんどの住宅ローンでは半年ごとに金利が見直されます。
ただ、金利が急に上がった、もしくは下がったからといって毎月の返済額まで半年ごとに上下すると大変ですから、返済額自体は5年ごとに見直されるのが一般的です。その際に残りの返済期間や残高、金利水準で返済額が再計算されるということになります。
さらに、返済額が急に何倍にもなってしまわないように、前回の返済額の1.25倍を上限とすることも決まっています。たとえば返済額が10万円だった場合、どんなに急激な金利上昇を受けたとしても、5年ごとの見直しの際には12.5万円が返済額の上限となるということです。変動金利といえども、急に返済額が変わるということはありません。
基本的には、変動金利よりも固定金利のほうが金利は高い傾向にあります。変動金利の場合は、短期のプライムレート(最優遇金利)を基準にしています。お金を貸す金融機関は、世の中の金利が高くなると、変動金利ならそのときの情勢に応じて金利を上げることができます。
しかし、固定金利の場合はそうはいきません。どんなに金利が上がっても約束した金利を維持しなければならないので、金利が上がった分の利息を取り損ねてしまいます。そうした将来の金利上昇のリスクがあるため、基本的には固定金利のほうが金利は高くなっているのです。
新規住宅ローン契約、「変動金利型」「固定金利期間選択型」「固定金利型」どれを選ぶべき?
国土交通省住宅局が発表した「令和3年度 民間住宅ローンの実態に関する調査 結果報告書」によると、新規貸出額において令和2年度は、変動金利型を選んだ人の割合が70%ともっとも高く、固定金利期間選択型が前年より減って16.6%でした。
一方、全期間固定金利型は3%となっており、変動金利型に人気が集まっていることがうかがえます。前年の令和元年度とくらべると、変動金利型は6.9ポイントも増加しています。
変動金利型の金利は年0.5%を切る金融機関もあり、金利が低く借りやすいということが影響しています。
●変動金利を選んだ人の割合
*国土交通省「令和3年度民間住宅ローンの実態に関する調査 結果報告書」より引用
変動金利は、超低金利時代の中でも金利が低く、目先の金利だけを考えると魅力的に映ります。確かに金利水準も固定金利より低く、今後金利が上昇しなければ固定金利よりも返済総額が少なくなるというメリットがあります。
一方で、返済中に金利が上昇した場合は、返済額が多くなる、返済額が変動するのでライフプランが立てづらいというデメリットもあります。ですから資金的な余裕を持っておく必要があります。
もし、変動金利型の金利が上がってきた場合、固定期間選択型に変更することもできます。しかし、その場合には切り替えに手数料が必要だったり、変動金利型よりも金利が高かったりするなど切り替えが難しいこともあります。特に金利上昇局面では、変動金利型よりも固定金利型の金利が先行して上がるという特徴があります。変動金利型を借りるときには、ローンの返済条件の変更の内容を確認しておきましょう。
固定金利期間選択型は、ローンの借入れ当初の負担を押さえたい人に向いています。このタイプでは、固定期間が10年を選ぶ人が多く約5割になっていますが、前年度にくらべて4.4ポイント減少しています。固定期間後は、固定金利型にするのか変動金利型にするのか決めます。ただし、当初の期間だけ金利を大きく引き下げる優遇金利の場合、固定期間終了後に、金利と返済額がアップするので、金利上昇時には注意が必要です。
固定金利型の金利は変動金利より高いものの、金利が上昇した場合の返済額アップのリスクを取らずに済みます。住宅ローンの返済は長期間におよぶので、返済完了までの金利が決まっていると安心ですし、計画的な返済ができます。これから将来の教育費の負担が大きくなる子育て世代に向いています。
ただし、金利水準が上がらなかった場合には変動金利と比較して高めの金利設定なので、返済額が大きくなるのがデメリットになります。また借入金利が変動金利型にくらべて金利が高めなので、借りられる額が減り、住宅購入の予算が制限されることになります。
借入金が少ない場合や、もし5年ごとの返済額の見直しで上限の1.25倍に返済額が膨れ上がった場合にも対応できるくらいの経済的な余裕がある場合、また今後収入が上がる見込みがある場合などは変動金利で借り入れをしてもいいでしょう。
逆に、経済的に当初の返済額から1.25倍に増えてしまったときに支払いが困難になったり、家計を大きく圧迫したりすることが予想される場合には、固定金利を選んだほうがいいですね。それぞれのメリット・デメリットを把握した上で、ご自身の家族構成なども考慮に入れましょう。
さらに、借り入れを検討している金額をもとに、もし今後、特に10年、20年と長期的に見て金利が上昇した場合のシミュレーションをしておくといいでしょう。
下記の表は、3000万円を30年借りて返済した場合(元利均等返済)に、金利のタイプの違いによる月々の返済額や総返済額の違いを比較したものです。2023年2月1日に借入、5年ごとに0.5%ずつ金利が上昇したと仮定しました。
●金利上昇のシミュレーション
筆者作成
金利が低い状態が長く続けば、変動金利型の総返済額が少なくなりそうですが、金利が上昇すると、変動金利型は全期間固定金利型よりも総返済額が増えてしまうことも予想されます。
借り換えは、「固定金利」と「変動金利」、どちらを選ぶのが正解か
契約している住宅ローンよりも低い金利で借り換えができる住宅ローンを見ると、借り換えを検討したくなりますよね。「借り換え」とは、条件の有利なローンを新たに借りて、現在返済中の住宅ローンを一括返済することです。
確かに、いまの住宅ローンよりも低金利のローンに切り替えれば返済額自体は少なくなるでしょう。しかし、借り換えの場合は、現在の抵当権を抹消して、設定する手続きに新規契約のときと同じくらいの費用がかかります。
住宅ローンを提供している多くの金融機関では、借り換えをした場合のシミュレーションができるようになっていますが、そのシミュレーションに借り換え手続きに必要な諸費用というのは含まれていないことが多く、非常に見えづらいコストになっています。
借り換えにかかるコストは主に、融資に関する事務手数料、抵当権設定費用や登記にかかる費用、保証料などがあり、金融機関や借入金額などによりますが総額30~80万円ほどかかるといわれています。
この30~80万円という金額を支払っても、借り換えしたほうが返済額を減らせるという人は、ローン残高が多く、残りの返済期間が長い人です。
一般的には、
・ローン残高が1000万円以上
・残りの返済期間が10年以上
・借り換えを検討しているローンの金利差が0.3%以上
という3つの条件を全て満たした人が借り換えのメリットを享受できると言われています。もし借り換えに興味がある場合は、借り換えするときの手数料やコストと、借り換え後の返済額を計算してみましょう。
ただし、借り換えによってメリットが出るとしても、借り換え自体にも審査が必要となります。新規借り入れの時に審査を通過したからと言って、借り換えでも審査に通るとも限りません。健康状態の悪化や収入の減少、不動産価値の下落などが理由で審査に通らないというケースもあるのです。
また、転職によって勤続年数が短くなった場合やほかのローンを組んだ場合などは審査に不利になる可能性もあるので、注意が必要ですね。
前出の「令和3年度民間住宅ローンの実態に関する調査 結果報告書」にある他の住宅ローンからの借換えの実績をみると、年を追うごとに借換えが減ってきています。新規貸出額に占める借換えの割合は、6.4%と前年度より1.0ポイント減少しています。超低金利が続いているので、借換え需要も一巡したといえるでしょう。
住宅ローン減税のおもな改正点
住宅ローン減税は、ローンを組んで住宅の購入などを行った場合に、一定金額を所得税や住民税の税額から差し引ける制度です。
2022年住宅ローン減税改正では、
・控除期間が10年から13年へ延長(中古住宅は10年)
・借入限度額が住宅の性能や種類で分かれる
・控除率が0.7%に引き下げ
・所得要件を3000万円以下から2000万円以下に
などが改正のポイントになります。
基準となる借入残高の上限は、住宅の種類により異なります。環境性能に適合しないと、限度額が下がるしくみになっています。
今回の改正では、2024年以降に建築確認をした新築住宅については、省エネ基準適合が住宅ローン減税の適用の要件になっています。特に「その他の住宅」については、2023年までに新築の建築確認を受けていないと住宅ローン控除を受けることができないので注意が必要です。
<住宅の種類>
・認定住宅…高度な省エネ性や耐震性を備えた住宅
・ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)基準省エネ住宅…断熱性を高めて年間のエネルギー収支をゼロ以下にした住宅
・省エネ基準適合住宅…国の省エネ基準を満たした住宅
・その他の住宅…省エネ基準を満たさない住宅
●借入残高の上限
筆者作成
*省エネ基準を満たさない住宅は、2024年以降に新築の建築確認を受けた場合、住宅ローン減税の対象外。(2023年末までに新築の建築確認を受けた住宅に2024・2025年に入居する場合は、借入限度額2000万円、控除期間10年)
2023年の住宅ローン金利の見通し
2022年は、ウクライナ侵攻の影響や海外諸国の利上げにより、急激な円安が進行しました。そのため長期金利については、日銀が政策転換して実質的な金利引き上げの方向に舵を切ることになりました。全期間固定などの固定金利型は、これから金利が上昇していく可能性があります。
一方、変動金利型は、銀行間のローン獲得競争による金利の引き下げを受けて、現状維持が予想されます。しかし、いずれ金融緩和が終了すれば、変動金利型も2028年頃には上昇に転ずるとのシンクタンクの予想もあります。
今後は金利の上昇が予想されるので、返済期間が長い場合には、全期間固定金利型や固定期間が10年以上の固定金利期間選択型を選ぶとよいでしょう。
金利は変動金利型より高めですが、過去の金利の推移から見ると非常に低い水準です。また返済期間が短い場合や借入金額が少ない場合などは、変動金利型か短期の固定金利期間選択型を選び、繰り上げ返済をするなどの対策を取っていきましょう。
変動金利型は目先の金利は低くても、長期返済の場合にはブレが大きくなるので、特に注意しなくてはなりません。
住宅ローンは大きな金額を借り入れ、長く付き合っていくものです。その住宅ローン選びは、金利がより低いものをと金利の比較から考えてしまいがちですが、返済期間やライフプランなども考えて、どの金利のタイプが向いているか検討してみるところから始めてみましょう。
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池田 幸代 株式会社ブリエ 代表取締役 本気の家計プロ®
証券会社に勤務後、結婚。長年の土地問題を解決したいという思いから、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー(AFP)を取得。不動産賃貸業経営。「お客様の夢と希望とともに」をキャッチフレーズに2016年に会社設立。福岡を中心に活動中。FP Cafe登録パートナー
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