22/04/21
プロが考えるFIRE資産の資産配分、ポートフォリオ4選
経済的自立と早期リタイアを目指すFIREでは、年間の生活費を資産運用の収入でまかなうことを目指します。
では、FIREを実現するための資産運用に必要な資産(FIRE資産)は、どう用意すればいいのでしょうか。FIRE資産の用意に欠かせない運用の考え方と、資産の組み合わせ(ポートフォリオ)の4つの例を紹介します。
FIRE資産は「長期・積立・分散」で用意
FIREに必要な資産は、支出の削減と収入アップで捻出した貯蓄用資金を投資信託や株、ETFなどで運用して増やしていきます。そして、FIRE目標額を達成したら、そのお金を4%ルールで切り崩しながら生活をしていきます。
そもそもなぜ資産運用(投資)が必要なのかというと、定期預金などの安全資産は金利が低く、お金が増えないからです。たとえば、月10万円を30年間積み立てた場合、定期預金だと約3605万円ですが、年利4%で運用すると、約6941万円。3000万円以上の差が生まれます。これが資産運用の力なのです。
ただし、投資には銀行の預貯金のような元本保証がありません。つまり、資産が減る可能性もゼロではないということです。そこで取り入れて欲しいのが「長期」、「積立」、「分散」という投資の王道ルールです。
「長期」とは、投資期間を長く取ること。複利の効果で資産増加のスピードが加速します。「積立」とは、1回に大金を投資するのではなく毎月コツコツ積立投資すること。価格が下がったときにも有利になりますし、タイミングや感情に左右されずに投資ができます。
そして「分散」とは、投資先を分散すること。価格の変動を抑え、安定したリターンを狙うことができます。
これらのルールを守ることで、リスクを抑えながらリターンを狙うことができます。
FIRE資産は「コア・サテライト戦略」で減らさずに増やす
資産の分散を考える際に、ぜひ取り入れたいのが「コア・サテライト戦略」です。コア・サテライト戦略は、資産の7割〜9割を安定的に運用する「コア」、残りの1〜3割を積極的に運用する「サテライト」に分けて運用し、お金を減らさずに増やすことをめざす戦略です。
コア資産には、預貯金や定期預金、インデックス型・バランス型の投資信託、ETF(上場投資信託、不動産投資などがあります。とくに投資信託は、つみたてNISAやiDeCoといった非課税のメリットが生かせる制度と組み合わせると効率よくお金が増やせます。
対するサテライト資産には、日本株や米国株、アクティブ型の投資信託、仮想通貨などがあります。
はじめて資産運用を行う場合ならば、まずはコア資産から。コア資産には預貯金や定期預金が含まれています。もしこれらがまったくないのであれば、まずは生活費の6か月分の預貯金を貯めましょう。毎月の貯蓄の目標は手取りの2割、実家暮らしなどで支出が少ない場合は手取りの5割〜8割などと、なるべく多く貯めるようにします。
ただ、生活費の6か月分はそれなりの金額ですし、預貯金だけで貯めようとすると時間がかかります。ですから、3か月分の生活費が貯まったら、数千円と少額でもいいので投資をスタートするのがおすすめです。
FIRE向け資産配分ポートフォリオ例
投資する金融商品の組み合わせや、その比率のことを「ポートフォリオ」といいます。ポートフォリオの決め方は一律ではなく、リスクを抑えめに手堅いリターンを取っていくのか、リスクを高めに取ってリターンを狙うのか、運用方針で変わります。
早くFIREしたいからと高いリターンを狙ったポートフォリオを組んだり、手元の資金の大部分を投資につぎ込んだりすると、その分リスクは大きくなり、下落相場でのダメージも大きくなります。自分がどこまで損失を許容できるのかという「リスク許容度」を考慮して組み合わせを考えることが大切です。
ここでは、リスク抑えめの運用とリスク高めのポートフォリオ例を紹介します。
●リスク抑えめのポートフォリオ
著書『いちからわかる!FIRE入門』より
リスク抑えめのポートフォリオは、目標利回りを3〜5%としています。リスク抑えめの運用方針の場合は、まずはインデックス型投資信託やバランス型投資信託を中心に、つみたてNISAやiDeCoの非課税投資枠を使いながら、積立投資するのが基本です。
そして、余力があれば課税口座で投資信託を追加で積み立てたり、ETFを組み入れたりします。全体の2割程度は、株式やその他のサテライト資産を組み入れてもよいでしょう。
●リスク高めのポートフォリオ例
著書『いちからわかる!FIRE入門』より
リスク高めのポートフォリオは、目標利回りを6〜10%としています。利回りを上げるということは、それなりにリスク資産に投資しなくてはならなくなります。しかし、リスク高めの運用方針の場合でも、コアとなる7割程度は「リスク抑えめ」と同様にインデックス型投資信託やバランス型投資信託で積立投資します。
そして、残りの3割程度については、株式などその他のサテライト資産で積極運用し、より高いリターンを狙っていきましょう。
さまざまな投資信託を購入してしまうと、管理が大変になってしまいます。購入する投資信託の種類は2〜3本程度に抑えましょう。それに対して株は、管理できる範囲でいろいろな銘柄に投資しましょう。多くても10銘柄程度、「IT」と「医療」など、業界を分けて購入するのがおすすめです。
自営業やフリーランスはiDeCoの使い方に注意
税制メリットを生かせるつみたてNISAとiDeCoは、併用してフル活用するのが基本ですが、自営業者やフリーランスの人だと、そうとも限りません。
●自営業者やフリーランスはiDeCoの配分に注意
著書『いちからわかる!FIRE入門』より
自営業者やフリーランスは、iDeCoで月6万8000円まで掛金を出すことができます。しかし、たとえば毎月の積立可能額が10万円程度なのに、つみたてNISAで3万3333円、iDeCoで限度額いっぱいの月6万8000円まで積み立てると、iDeCoの方のお金は60歳になるまで一切使えないことになります。
万が一のときやFIREに向けて流動資金を確保しておくために、たとえば、iDeCoへの積立は月2~3万円程度に抑え、残りは課税口座で運用するなど、iDeCoが60歳まで引き出せない点を考慮して投資プランを考えるとよいでしょう。
FIRE資産を無理なく確実に手に入れよう
FIRE資産を用意するための考え方、FIRE向けのポートフォリオを紹介してきました。ぜひ上手にコア・サテライト戦略を生かして、じっくりと資産形成に取り組んでください。そうすることで、FIRE資産を無理なく確実に手に入れることができるでしょう。
今回の内容は動画でも紹介しております。ぜひご覧ください。
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頼藤 太希 マネーコンサルタント
(株)Money&You代表取締役。中央大学商学部客員講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生命保険会社にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に現会社を創業し現職へ。ニュースメディア「Mocha(モカ)」、YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」、書籍、講演などを通じて鮮度の高いお金の情報を日々発信している。『はじめての新NISA&iDeCo』(成美堂出版)、『定年後ずっと困らないお金の話』(大和書房)、『マンガと図解 はじめての資産運用』(宝島社)、など書籍100冊、累計170万部超。日本証券アナリスト協会検定会員。宅地建物取引士。ファイナンシャルプランナー(AFP)。日本アクチュアリー会研究会員。X(旧Twitter)→@yorifujitaiki
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