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21/11/10

相続・税金・年金

企業年金、どのくらいもらっている? 受取方法は超重要

あなたがお勤めの会社では企業年金を実施していますか?この企業年金がどんな年金なのかをきちんと理解している人は少ないかもしれません。また、退職時にどれくらい受け取れるのかも気になります。そこで今回は、企業年金についての基礎知識と、平均してどれくらいの額を受け取れるのかご紹介しましょう。

年金制度の3階部分にあたる企業年金

日本の年金制度といえば、1階部分は国民年金、2階部分は厚生年金という公的年金制度のことだと理解している人も少なくないでしょう。でも、実際はこれだけではありません。年金制度には3階部分も存在するのです。その3階部分にあたるのが、企業年金制度です。これは公的年金にプラスして受け取れるもので、社員が退職後も安心して暮らせるように、企業が厚生年金に上乗せして支給するために実施しています。いわば福利厚生の一環となる企業独自の年金制度なのです。そのため、企業年金を実施する企業もあれば、実施していないところもあります。自分が勤める会社の企業年金がどうなっているか、ぜひ知っておきましょう。

企業年金制度には3種類ある

企業年金には、次の3種類のものがあります。
・厚生年金基金
・確定給付企業年金
・企業型確定拠出型年金
では、これらの年金がどのようなものなのか、その内容を見ていきましょう。

●厚生年金基金

厚生年金基金は、国が実施する公的年金制度の厚生年金に上乗せして給付する企業年金制度のこと。以前は企業年金の中心となる存在でした。しかし、2012年に運用会社が不祥事を起こしたことがきっかけで厚生年金保険法の一部が改正されて、2014年4月1日以降は厚生年金基金の新規設立ができなくなりました。そのため、現在、厚生年金基金制度を実施する企業はほとんどありません。

●確定給付企業年金(DB)

2002年4月に新しい年金制度として始まった確定給付企業年金は、企業が掛金を負担し、運用も企業が責任を持って行うことで、社員の退職金時に支給される年金です。運用した結果、元本を割った場合は損失分を企業が補てんしてくれます。つまり、これは社員の受取額が確定している年金なのです。

確定給付企業年金には2つのタイプがあります。1つは、企業が契約した保険会社や信託会社に対し規約に基づいて掛金を払い込み、保険会社や信託会社が年金資産を管理、運用し年金の給付を行う「規約型」です。もう1つは、企業が法人格を持った企業年金基金を設立して、その基金が管理や運用、年金の給付を行う「基金型」です。

●企業型確定拠出年金(DC)

企業型確定拠出年金は、企業が毎月掛金を積み立て、その運用方法は社員が自ら選択するという企業年金制度で、2001年10月から始まりました。運用できる金融商品は、元本が変動する投資信託や元本保証の保険商品、定期預金など多岐に渡ります。元本変動型の金融商品を選択した際は元本割れするリスクが伴い、そのリスクは社員が負うことになりますが、運用成績が上がれば資産を増やすことができます。

また、積み立てた年金資金は原則60歳までは引き出すことができませんが、60歳以降になれば引き出せるようになるので、必要なときに社員が自ら手続きをして受け取ります。
企業年金は、年金生活になった際の生活費を補う方法の1つとして活用できます。お勤めの会社で実施している企業年金を確認しましょう。

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企業年金の受取額、平均はどれくらい?

実際のところ、企業年金としてどれくらいの額を受け取ることができるのでしょうか?
厚生労働省が2018年に実施した「就労条件総合調査」によると、退職金および企業年金の受取額の平均として、以下のような結果が出ています。

●退職金および企業年金の受取額の平均

厚生労働省「就労条件総合調査(2018年度)」退職給付(一時金・年金)の支給実態より筆者作成

退職一時金とは、企業が社員の退職時に一時金として支払う制度のことで、いわゆる退職金と呼ばれているものです。勤続35年以上の場合を見てみると、退職一時金のみの企業では受け取れるのが1,897万円のところ、企業年金のみの会社では1,947万円も受け取ることができます。これはおそらく、退職一時金は企業が勤続年数などによる算出方法で金額を決めているのに対し、企業年金は外部にて運用されているので、退職までの期間は運用利回りによって原資が増えていくためだと考えられます。

また、退職一時金と企業年金の両方を実施している企業では、退職金の受取額が勤続35年以上で2,493万円となっています。これは月収換算で見ても47.4ヶ月分とかなり多いのがわかります。就労条件総合調査(2018年度)での企業規模別に見た退職金と企業年金との併用割合を見てみると、1,000人以上の企業では47.6%の企業が併用していますが、100~999人の企業では27.6%、30~99人の企業では12.5%と、大企業になるほど退職金と企業年金を併用しているところが多くなっています。
つまり、企業年金を実施する会社は退職金の受取額が高くなる傾向にあり、大企業になるほど退職一時金と企業年金を併用しているため、かなりまとまった退職金を受け取ることができるのですね。

資産形成の手段として企業型DCとiDeCo併用が可能に

企業年金のうち、企業型確定拠出年金(以下、企業型DC)にはいくつかの制限があります。まず、加入可能年齢は65歳未満です。さらに、企業型DCの加入者がiDeCoを利用するには、会社の規約で認められていること、そして、会社が事業主掛金の上限を引き下げることが条件となっていました。けれども、2022年からはこれらの制限が緩和されることになったのです。

●企業型DCの加入可能年齢が拡大されます

これまで企業型DCの加入可能年齢は65歳未満となっていました。しかし、2022年5月からは厚生年金の被保険者であれば原則70歳未満まで企業型DCに加入することができるようになります。ただし、実際の加入年齢は会社が定めるため、お勤めの会社で確認してください。
老後の生活を安定させるために、今後は長く働く人が増えるのではないでしょうか。そのような場合でも資産形成を継続できるのは助かりますね。

●企業型DC加入者のiDeCo加入要件が緩和されます

これまでは会社の規約や事業主掛金の上限の引き下げといった要件により、企業型DCの加入者はiDeCoを利用したくても加入ができない場合がありました。けれども、2022年10月からは要件に関係なく、原則iDeCoに加入できるようになります。企業型DCでマッチング拠出をしているなど、これまで通りiDeCoに加入できないケースもありますが、税制優遇が受けられるiDeCoを併用できる人は増えるでしょう。

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企業年金の受け取り方法は?

企業年金の受け取り方には、「一時金で受け取る」「年金で受けとる」「一部を一時金として受け取り、残りを年金で受け取る」の3通りの方法があります。

退職金、企業型DC、退職後に受け取る確定給付企業年金を一時金で受け取る場合は「退職所得控除」、年金で受け取る場合は「公的年金等控除」が受けられます。控除を受けた分の所得税と住民税が安くなるのです。

退職所得控除は勤続年数により計算方法が異なります。
・勤続20年超の場合:800万円+70万円×(勤続年数-20年)
・勤続20年以下の場合:40万円×勤続年数 ※80万円未満の場合は80万円

年金の場合、65歳以上で合計所得金額が1,000万円以下であれば、年金収入が110万円以下なら公的年金等控除により所得金額がゼロになります。65歳未満で合計所得が1,000万円以下の場合は、年金収入が60万円以下なら所得金額がゼロになります。所得金額がゼロなら税金はかかりません。

ここで考えておきたいのが、退職金や老齢年金と控除額との兼ね合いです。老齢年金と企業年金の年金受け取り分を合算すると、控除額を超える額が増えます。そうなると税金は高くなり、納める社会保険料も増えるでしょう。また、企業型DCを年金で受け取ると、その都度事務手数料がかかります。

さらにiDeCoに加入している場合、65歳で退職金を受け取り、その後にiDeCoを一時金で受け取るときは注意が必要です。iDeCoを受け取る前年以前の14年以内に受け取った退職金の勤務期間とiDeCoの加入期間は調整されて、重複している期間が除外されます。除外された分、退職所得控除の額が減るのです。また、退職金を受け取る前年以前の4年以内にiDeCoを受け取るときも退職所得控除の勤務期間は調整されます。

そこでiDeCoを一時金で受け取りたいときは、退職の5年前に受け取っておくとよいでしょう。先にiDeCoを受け取り5年空けて退職金を受け取れば、勤務期間の調整はありません。つまり、iDeCoの加入期間で退職所得控除の算出ができ、退職時には実際の勤務期間が退職所得控除の算出に適用されるので、最大の控除枠を使うことができます。

年金額や控除額や社会保険料、手数料などとの兼ね合いを考えて、どのような受け取り方が自分にとって最適なのかを考えてみましょう。

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まとめ

企業年金の基礎知識と受取額の平均を紹介してきました。ぜひあなたのお勤めの会社で企業年金を実施しているか、また、実施しているならどんな種類の企業年金なのかを確認しておきましょう。そのうえで、退職後には退職一時金や企業年金をどのように使っていくか計画していくとよいでしょう。

前佛 朋子 ファイナンシャル・プランナー(CFP®)・1級ファイナンシャル・プランニング技能士

2006年よりライターとして活動。節約関連のメルマガ執筆を担当した際、お金の使い方を整える大切さに気付き、ファイナンシャル・プランナーとなる。マネー関連記事を執筆するかたわら、不安を安心に変えるサポートを行うため、家計見直し、お金の整理、ライフプラン、遠距離介護などの相談を受けている。

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