21/08/23
日本の株価上下のカギは取引金額の6割を占める「外国人投資家」が握る!今後の動向は?
最近何かと話題になっているのは米国株。右肩上がりの成長や、FIRE(経済的自立と早期リタイア)のブームなどがその背景にあります。そんな中で、「日本株をもっとも取引している投資家は外国人投資家」といったら、驚かれるでしょうか。今回は、日本株を取引している外国人投資家とその売買状況、そして日本株の値動きとの関係について紹介します。
日本株の6割は外国人投資家が売買している
株式市場には、さまざまな投資家が参加しています。私たちのような個人はもちろん、投資信託や生保・損保会社といった法人、証券会社、そして外国人投資家までもが同じ株式市場の中で日々株を売買しているのです。
この内訳を集計したデータを「投資部門別売買状況」(投資主体別売買動向)といいます。東京証券取引所などを運営する日本取引所グループでは、毎週・毎月・毎年の各投資家の売買状況を株数ベース・金額ベースで集計し、公表しています。
2021年7月時点の投資部門別売買状況(金額ベース)の、個人・法人・証券会社・外国人投資家の取引金額の割合(委託内訳)は、次のようになっています。
●投資部門別売買状況(2021年7月、二市場一・二部等)
※二市場一・二部等…東証の各市場(東証1部・2部・ジャスダック・マザーズ)と名古屋証券取引所(名証)の各市場(名証1部・2部・セントレックス)の合計
日本取引所グループ「投資部門別売買状況」より筆者作成
なんと、日本株の67.7%は外国人投資家が売買していることがわかります。実は、月により多少ばらつきはありますが、日本株のおおよそ6割〜7割程度は、外国人投資家が取引しています。次いで個人投資家が24.5%ですから、外国人投資家の4割弱の規模しかないことがわかります。
日本の投資家と外国人投資家は逆の動きを見せる
投資部門別売買状況からはもうひとつ、おもしろいことがわかります。それは、「日本の投資家と外国人投資家は、ときどき逆に動く」ということです。
投資部門別売買状況には、個人・法人・証券会社・外国人投資家のそれぞれが売買した株の総額と、それを差し引きした金額が記載されています。つまり、差し引きした金額がプラスならば株を買い越したこと、マイナスならば株を売り越したことがわかるのです。
2019年1月から2021年7月まで、日本の投資家と外国人投資家のそれぞれが、株を買い越したのか売り越したのかをまとめたのが、次のグラフです。
●個人・外国人投資家の売買動向(2019年1月〜2021年7月、二市場一・二部等)
日本取引所グループ「投資部門別売買状況」より筆者作成
中央の「0」を基準に、グラフが上に伸びていれば買い越し、下に伸びていれば売り越していることを表します。
たとえば2019年3月は個人は若干買い越していますが、外国人投資家は大きく売り越しています。それに対し、翌4月は個人が売り越し、外国人投資家が買い越しています。
コロナショックのあった2020年3月、個人は買い越していますが、外国人投資家は大きく売り越していますね。逆に、2020年11月などは、個人が売り越し、外国人投資家が買い越しています。
もちろん、個人も外国人投資家も同じ動きをしている月もあります。しかし、個人と外国人投資家の動きは往々にして逆になっていることが読み取れます。この傾向は、2019年以前でも見られます。
市場の値動きは外国人投資家で決まる
こうなると、気になるのは実際の株価の値動きですね。個人と外国人投資家が逆に動いたということは、投資の成績にも影響がありそうです。
●個人・外国人投資家の売買動向と日経平均株価(月末ベース)
日本取引所グループ「投資部門別売買状況」より筆者作成
個人・外国人投資家の売買動向のグラフに、各月末時点の日経平均株価を折れ線グラフにして乗せてみました。すると、外国人投資家が買い越したときに日経平均株価が上昇し、逆に売り越したときに下落している傾向が見て取れます。
2019年3月から4月にかけては値動きも小幅ですが、2020年3月は顕著に下落しています。そして2020年11月は個人が大きく売り越しているにも関わらず、株価は上昇しているのです。直近はやや売り越しているからか、株価も少し下がっています。
こうなる理由は、外国人投資家が約6割〜7割と、もっとも大きな規模で日本株を取引しているからです。個人や他の投資家が少々がんばったところで、株価に与える影響はさほど大きくありません。少々極端にいえば、日本株の値動きは、外国人投資家が決めているといっても過言ではないのです。
そうなると、個人と外国人投資家が逆に動いてしまうのは、かなりもったいないことかもしれません。一般に、日本の投資家はトレンドと反対に投資する「逆張り」、外国人投資家はトレンドに従って売買する「順張り」が多いといわれています。
「今、相場が下落しているけれど、ここから上がるに違いない」などと逆張りして株を買っても、外国人投資家が売り越している状況なら、望み薄でしょう。また、外国人投資家が買い越しているのに、「もう下がるに違いないから売ろう」と逆張りして株を売ると、外国人投資家が喜んで買ってくれることになります。無理に逆張りするよりも、順張りを心がけた方が、結果がよくなるかもしれません。
株式投資をする際には、外国人投資家がどう考えているかが参考になります。特に、買い越しから売り越し、売り越しから買い越しに転じたタイミングは、株価のトレンドが変わるタイミングかもしれません。
まとめ
日本株の6割〜7割は外国人投資家が売買していること、そして外国人投資家が日本株の値動きに大きな影響を与えることを紹介してきました。投資部門別売買状況は、日本取引所グループのウェブサイトで確認できるほか、証券会社や投資情報サイトなどでも見ることができるので、ぜひのぞいてみてくださいね。
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畠山 憲一 Mocha編集長
1979年東京生まれ、埼玉育ち。大学卒業後、経済のことをまったく知らないままマネー本を扱う編集プロダクション・出版社に勤務。そこでゼロから学びつつ十余年にわたり書籍・ムック・雑誌記事などの作成に携わる。その経験を生かし、マネー初心者がわからないところ・つまずきやすいところをやさしく解説することを得意にしている。2018年より現職。ファイナンシャル・プランニング技能士2級。教員免許も保有。趣味はランニング。
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