20/09/06
「投資で外貨を持つことは無意味」は本当なのか
「外国のお金(外貨)を持つことは無意味」という意見を目にしました。確かに、海外で暮らす予定もないのに外貨を持っていても、そのままでは日本では利用できません。しかし、投資で外貨を持つのは本当に無意味でしょうか?
外貨の値動きで恩恵を受けたことがある筆者はそうは思いません。今回は、投資先のひとつとして外貨・外貨建て商品にも意味があることを解説します。
外貨を持つことには意味がない?
筆者が目にしたのは、
①ドルやユーロを持っていても国内で使うことはできない
②(日本が将来大変なインフレになり)通貨の価値が下がるからという理由で外貨を持つなら、そんな破滅的な日本経済の状況ではおそらく海外に行くことすらできないから、外貨を持っても意味はない
という意見でした。
確かに、日本では外国の通貨は使えませんし、通貨の価値が下がる(円安になる)と海外旅行は不利になります。しかし、それならば持っている外国の通貨を円安のタイミングで日本円に両替すればいいだけですし、それによって円の価値が目減りするリスクを回避できるのですから、外貨に意味がないとは思えません。
なにより、投資において分散することは重要です。外貨や外貨建て商品も、分散投資のひとつの投資先として考えれば無意味とはいえないのではないでしょうか。
外貨の変動で受けた約30万円の恩恵
実際筆者は、外貨の変動で恩恵を受けたことがあります。
筆者は2011年に10000ドル一時払いでドル終身保険に加入しました。この年の年間平均為替相場は1ドル80.84円でしたので、約80万円の保険料を支払った計算です。この保険を2015年、1ドル120.05円になった時に解約しました。
加入して10年経過せず解約したのでペナルティがありましたが、それを超える為替差益があり、結果解約金は約110万円に。わずか4年で約30万円増やすことができたのです。
これは円高から円安になるタイミングに「たまたま」できたことなので、今同じことはできません。ただ、自分の持っている外貨(外貨資産)を円にするタイミングを円安のときに合わせたり、高い金利で運用したりすることは、投資のひとつの方法といえます。外貨の値動きは、投資信託や株などの値動きとは異なります。投資信託や株が値下がりしたタイミングでも利益が出る可能性があるという点で、外貨を利用した投資には意味があると考えます。
極端な販売をする外貨建て商品は不要
とはいえ、極端な販売をしている外貨建て商品は不要です。
筆者はマネーセミナー後に受けた無料相談で退職金2000万円のうち1500万円を一時払いの外貨保険に預けてしまった人(60代元公務員)、金融機関で老後資産形成の相談をしたら月3万円の外貨建て個人年金を提案された人(40代会社員)など、外貨建て商品についての相談を何件も受けてきました。
いずれも円より利率がいいからという理由で勧められていました。そのうえ、換金性が悪く、すぐ解約するとかなり元本割れするのでお客様は途方にくれていました。
退職金の75%を外貨建て商品にするなど論外ですし、老後資金形成の積立ならまずはiDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)で節税しながら積み立てしていくべきです。このようなポートフォリオでの外貨投資なら全く無意味といえます。
しかし、円建てよりもコスパの高い商品を見極めて、無理のない範囲で利用するのであれば、十分価値があると考えます。
たとえば、ソニー生命の米ドル建ての終身保険の場合、死亡保障3万ドル・15年払いの終身保険の毎月の保険料は79.74ドル(約8452円)。それに対し、オリックス生命の円建ての終身保険の場合、死亡保障300万円・15年払いの終身保険の毎月の保険料は月1万3740円となっています(43歳女性の例。1ドル=106円で計算)。ほぼ同等の保障なのに、保険料は毎月約5000円、15年間の総払込保険料は約95万円も違うのです。
もちろん、ドル建ての保険の場合、為替レートの変動によって保険料が変わるため、最終的な保険料は払込が終わらないとわかりません。しかし、これだけ総払込保険料に差があれば、多少円安になったところで、保障に対するコスパは円建て保険よりいいといえます。
結論:分散投資の一部として持つことは無意味ではない
投資のベースは、経済の成長に合わせ円で投資信託を長期にわたって積み立てていくことです。iDeCoやつみたてNISA(ニーサ・少額投資非課税制度)といった、税制優遇が受けられる制度を利用すれば、より効率よく資産を運用できます。
しかし、外貨や外貨建ての商品で投資することがまったく無意味であるとは考えません。円安になって、円の価値が目減りしたときにも、外貨や外貨建ての商品を持っていれば利益(為替差益)を得ることができるからです。
もちろん、外貨や外貨建ての商品を資産運用の主軸にする必要はありません。いざ円にして使いたい、という時に円高だと使いにくくなってしまうからです。
外貨・外貨建ての資産は、目安としては総資産の10~20%まで。そのうえで、円高の時は手をつけずに過ごせるポートフォリオを組むのであれば、外貨・外貨建ての資産を持つことは意味のあることと考えます。
まとめ
現在、コロナウイルスの影響で海外の金利は下がっているので、外貨の定期預金や債券の魅力は薄れていますが、タイミングを合わせて得られる為替差益、外貨建て保険で得られるコスパのよい保障など、外貨の力を借りることにはメリットがあります。リスクを理解したうえで上手に外貨とつき合っていきましょう。
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稲村 優貴子 ファイナンシャルプランナー(CFP︎︎®︎)、心理カウンセラー、ジュニア野菜ソムリエ
大手損害保険会社に事務職で入社後、お客様に直接会って人生にかかわるお金のサポートをする仕事がしたいとの想いから2002年にFP資格を取得し、独立。現在FP For You代表として相談・講演・執筆活動を行っている。日経ウーマン、北海道新聞などへの記事提供、テレビへの取材協力など各メディアでも活躍中。著書『年収の2割が勝手に貯まる家計整え術』河出書房新社。趣味は、旅行・ホットヨガ・食べ歩き・お得情報収集。FP Cafe登録パートナー
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