18/10/22
急増中のお墓トラブル…お墓の引っ越しで損をしないための法的知識を弁護士が解説
いまは子世代が実家から離れて暮らすことが普通ですから、お墓が不便な場所にある等の理由により、先祖代々のお墓を自宅の近くに移そうとする方も多くなっています。
お墓を移転させる場合は、お墓からお骨を移すだけでなく、墓地を更地にして返したり、檀家をやめること(離檀)を伴うこともあり、お寺との間で、「お墓の引越し」に関して法要費用や離檀料を巡ってのトラブル、費用面での相談が増えてきているように感じます。
今回は、「お墓の引越し」にまつわるよくある相談事例を解説したいと思います。
お骨を取り出す際の法要費用は払う必要があるか
お骨を取り出す際には、供養(閉眼供養)のために法要を行います。法要費用の性質はお布施なので、通常の法要と同様の金額を包むことが多いです。
問題は、供養の費用の支払義務があるかというと、契約で定まっているわけではないでしょうから、厳密には支払義務がない場合が多いと思います。
ただ、そのようなことを言い出したら、「法要のお布施も契約がなく支払義務はない!」となりそうですが、通常そうではないですよね(法的には、住職は慣習法や口頭合意に基づいてお布施を請求できるでしょう。)。
供養の費用の支払義務がない場合が多いというのは、いままでお墓の引越し事例が少なく、まだ慣習として成り立っていないということに論拠をおきますので、今のところは支払義務があるとまではいえないというところです。もちろん、トラブルを避けるためには金額を明確にしてもらい納得した上で支払ったほうがいいでしょう。
離檀料を払う必要はあるのか
こちらも最近相談の多い事例です。檀家が減るのを避けるために近年寺院側が考えたものと言われていますので、契約もなければ慣習としても成り立っておらず、ほぼすべての事例において法的には支払義務がありません。
いままで檀家としてお付き合いもあったので、トラブルを避けるためには支払ったほうが…と考えてもいいのですが、「離檀料は50万円です。」などとまとまった金額を言われるとためらいますね。
離檀料を提示された場合は、内訳や他の方の相場を聞いて、納得できるかどうかを判断するといいでしょう。墓地を更地に戻す原状回復費用や、石材屋さんの工賃等が含まれている場合には納得できる金額の場合もあります。
離檀料を不当請求される場合もあるので要注意!
具体的な事例としては、「離檀料を払わないといったら『改葬許可申請書(お墓の引越しのために必要な書類)にはんこを押さないぞ!』と言われて困りました。」というケースがあります。金額にもよりますがこれは不当請求なので、支払義務はありません。
なお、お骨は墓地所有者のものなので、離檀料を払わない場合でも住職がお骨を引き渡さないことは許されないのですが、住職が許さなければ事実上お墓(お寺)に立ち入ったり、搬出ができなくなったりすることがあるので、こじれてしまった場合は専門家に相談したほうがよいです。
なお、住職との関係がこじれた場合、弁護士や認定司法書士以外は代理人になれませんので、結局、自分で解決しなければならなくなったり、弁護士法違反の自称専門家に委ねてしまったりすることがありますので、この点には注意してください。
著者:星野・長塚・木川法律事務所 木川 雅博 弁護士
通信会社法務・安全衛生部門勤務を経て、星野法律事務所に所属。破産・再生・債務整理を得意とする。趣味は料理、ランニング。
記事提供:シェアしたくなる法律相談所
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