26/04/19
「ねんきん定期便見たら数十万円増額」年金額が急増した驚きの理由

毎年1回、誕生月に届く「ねんきん定期便」。きちんと確認しているでしょうか。
ねんきん定期便には、将来受け取れる年金の見込額が記載されています。老後の資金計画を立てるうえで、この金額はぜひ把握しておきたい重要な情報です。
ところで、2021年に「ねんきん定期便」の年金見込額の表示方法に変更がありました。一部の人は以前より年金額が増えており、中には数十万円増額しているケースもあります。
本記事では、ねんきん定期便の年金額が増えた理由をわかりやすく解説します。あわせて、年金額の確認方法や試算方法についても紹介しますので、今後の資金計画にぜひ役立ててください。
2021年から「ねんきん定期便」の年金額が増加している人が多数
「ねんきん定期便」は、毎年誕生月に自宅に郵送で届きます。ハガキで届くことが多いですが、35歳、45歳、59歳といった節目の年齢には封書で届くことになっています。なお、「ねんきんネット」で郵送停止の手続きをすることにより、「ねんきん定期便」を電子版(PDFファイル)で受け取ることも可能です。
「ねんきん定期便」にはこれまでに納付した保険料の額や年金加入期間、年金見込額などが記載されています。「ねんきん定期便」を見れば、将来もらえる年金額がどれくらいかの大まかな目安がわかります。
ところで、50歳以上の人の中には、「最近久しぶりに『ねんきん定期便』を見たら、年金額が急に増えていた」と驚いた人がいるかもしれません。実は、2021年6月から一部の人の年金額の表示が変わり、以前よりも多い年金額が表示されている人が少なからずいます。
「ねんきん定期便」の年金額が急に増えているのは、50歳以上で「厚生年金基金」の加入歴がある人です。実は、年金額そのものが増えたわけではありません。年金額が増額している理由は、以前は「ねんきん定期便」の年金額に含められていなかった厚生年金基金の「代行部分」の年金額が、含めて表示されるようになったためです。
「厚生年金基金」とは?
まずは、日本の年金制度についておさらいしておきましょう。日本の年金制度は3階建て構造となっています。1階部分は国民全員が加入する「国民年金」、2階部分が会社員・公務員が加入する「厚生年金」です。1階と2階が公的年金です。
さらに、3階部分として、各種の私的年金があります。私的年金とは、公的年金に上乗せする年金で、企業年金やiDeCoなどが該当します。厚生年金基金とは3階部分に相当する年金制度で、企業年金の一種です。
<公的年金のしくみ>

厚生労働省「いっしょに検証!公的年金」より
厚生年金基金制度がスタートしたのは1966年で、大企業を中心に福利厚生の一環として導入が進みました。厚生年金基金は設立形態により、次のとおり単独型、連合型、総合型の3種類に分かれます。
(1)単独型
企業が単独で設立している基金です。主に大企業が自社の企業年金を補う目的で設立しており、加入員1000人以上などの設立要件があります。
(2)連合型
資本関係が密接なグループ企業や関連会社などが一体となって設立しているものです。加入員1000人以上が設立要件です。
(3)総合型
業界団体や地域団体など、資本関係がない企業が共同で設立しているもので、加入員5000人以上が設立要件となります。
厚生年金基金の数は1996年度末にピークとなったものの、その後減少することになりました。バブル経済崩壊以降は資金の運用が困難になり、2014年以降は新規設立が不可となっています。厚生年金基金は、解散もしくは他の企業年金への移行が促進されており、実質的に制度廃止となった状況です。
なお、転職などにより、厚生年金基金の加入歴があるかわからない人は、企業年金連合会で確認ができます。企業年金連合会のホームページから必要事項を入力・送信すれば、メールで記録の有無を回答してもらえます。
「厚生年金基金」の「代行部分」とは?
厚生年金基金は企業年金の一種ですが、公的年金である老齢厚生年金の支給の一部を代行する役割も担っています。老齢厚生年金は「報酬比例部分」と「定額部分」に分かれますが、厚生年金基金が代行しているのは「報酬比例部分」の一部の年金給付で、この部分を「代行部分」と言います。
厚生年金基金に加入している場合、「代行部分」の給付に必要な保険料については国に納めることが免除され、代わりに厚生年金基金の掛金として納めます。厚生年金基金では「代行部分」の年金給付のほか、「プラスアルファ部分」と呼ばれる独自の上乗せ給付も行っています。そのため、基金には「代行部分」の給付に必要な掛金(免除保険料)と「プラスアルファ部分」の給付に必要な掛金を、労使折半で納めることになります。
●厚生年金基金加入者の厚生年金支給の仕組み
厚生年金基金加入者については、「代行部分」の老齢厚生年金は、厚生年金基金から支給されます。そのため、国からは「代行部分」を差し引いた老齢厚生年金が支給される仕組みになっています。
<厚生年金基金の基金代行部分の給付のイメージ>

日本年金機構のウェブサイトより
50歳以上の人の以前の「ねんきん定期便」では、国から給付される老齢厚生年金のみが記載されていました。厚生年金基金が給付を行う「代行部分」の老齢厚生年金の額が含まれていなかったのです。つまり、厚生年金基金の加入期間がある人については、「ねんきん定期便」に記載されている年金額は、実際の年金額よりも少ない額だったということです。
「ねんきん定期便」掲載の年金額はどう変わった?
2021年6月以降の「ねんきん定期便」では、「代行部分」も含めた年金額が表示されるようになりました。今後は、実際にもらえる年金額に近い数字が表示されることになります。年金額がどれくらい増えているかは、厚生年金基金の加入期間によって異なります。長く加入していた人なら、数十万円くらい年金額が増えているかもしれません。
●最新の「ねんきん定期便」を確認してみよう
2021年6月以前に「ねんきん定期便」を見て年金額が少ないと感じていた人は、最新の「ねんきん定期便」をチェックしてみてください。年金額が増えていることがあります。最新の「ねんきん定期便」が手元にない場合には、パソコンやスマートフォンから「ねんきんネット」を利用して年金額を確認することもできます。
なお、「ねんきんネット」は利用登録が必要です。マイナンバーカードがあれば、マイナポータルから「ねんきんネットとの連携」ができます。マイナンバーカードがない場合でも、ユーザーIDを取得すれば利用できます。インターネット上でいつでも年金記録を確認したい人は、「ねんきんネット」の登録をしておくと便利です。
●50歳以上になると「ねんきん定期便」の年金額の見方が変わる
上で紹介した「ねんきん定期便」の変更は、50歳以上の人のみが関係するものです。50歳未満の人の「ねんきん定期便」には、以前より「代行部分」が含まれていますので、変更は関係ありません。
なお、「ねんきん定期便」に記載されている年金額は、50歳以上か50歳未満かで次のような違いがあります。
・50歳以上の人…現在の年金制度に60歳まで加入を続けた場合の年金額
・50歳未満の人…これまでの加入実績に応じた年金額
50歳未満の人については、「ねんきん定期便」の年金額に「代行部分」は含まれていますが、今後の加入実績に対応する年金額が含まれていません。そのため、実際にもらえる年金額は、「ねんきん定期便」の額よりも増えることになります。
「ねんきん定期便」に記載されない年金もある
上で説明したとおり、「ねんきん定期便」には50歳未満の人の年金額は全部が記載されていません。それ以外にも、「ねんきん定期便」に記載されない年金はあります。たとえば、以下のようなものです。
●加給年金
加給年金とは、厚生年金受給者に扶養している配偶者や子がいる場合に支給される年金で、扶養手当や家族手当のようなものです。加給年金がもらえるのは、次の条件を満たす人です。
・65歳以上
・厚生年金の加入期間が20年以上
・扶養している配偶者または子がいる
・配偶者は65歳未満、子は18歳未満(1級・2級の障害状態にある場合は20歳未満)
加給年金の条件に該当する場合、厚生年金に次の金額が上乗せされます。
<加給年金の金額(2026年度)>

筆者作成
さらに、配偶者の加給年金の額には、受給者本人の生年月日に応じて、3万6000円から17万9900円の特別加算があります。たとえば、1943年(昭和18年)4月2日以後に生まれた人の場合、特別加算は17万9900円ですので、配偶者の加給年金額の合計額は42万3700円になります。
加給年金は老齢厚生年金の一部ですが、「ねんきん定期便」には記載されていません。扶養している配偶者等がいる人がもらえる年金額を試算するときには、加給年金を加算する必要があります。
●振替加算
加給年金の対象となっている配偶者が65歳に到達すると、加給年金は打ち切られます。その代わり、配偶者自身の老齢基礎年金に振替加算という上乗せが行われます。
たとえば、厚生年金受給者の夫は、65歳になったとき扶養している年下の妻がいれば、加給年金を上乗せした年金を受け取れます。妻は65歳になれば自分の年金を受け取れますが、このとき夫の加給年金は停止され、妻の受け取る年金は振替加算が上乗せされた金額となります。
加給年金同様、振替加算も「ねんきん定期便」には記載されていません。
●確定拠出年金(企業型DC、iDeCo)
確定拠出年金とは、公的年金に上乗せする年金を用意するための私的年金制度です。確定拠出年金には、企業型(企業型DC)と個人型(iDeCo)の2種類があります。企業型DCは制度が導入されている企業に勤めている場合に加入できるもので、掛金は原則的に事業主が拠出します。iDeCoは個人が任意に加入できるもので、職業等によって掛金の上限額が決まっています。
確定拠出年金の掛金の運用は、加入者自らが行います。運用した資産は60歳以降で年金または一時金として受け取れますが、掛金や運用成果によって受け取れる年金額は変わります。
「ねんきん定期便」に記載されている年金額は公的年金のみで、確定拠出年金は含まれていません。確定拠出年金の拠出状況や残高、時価評価額などは、加入者向けのウェブサイト「確定拠出年金インターネットサービス」で確認できます。
●国民年金基金
国民年金基金は、自営業者・フリーランスなどの国民年金第1号被保険者が、任意で加入できる年金制度です。厚生年金に加入していない第1号被保険者は、そのままでは年金が少なくなってしまいます。国民年金基金に加入すれば、老齢基礎年金に上乗せする年金を用意できます。
国民年金基金は大きく2つに分かれます。第1号被保険者なら誰でも加入できる「全国国民年金基金」と、特定の事業・業務に従事する第1号被保険者が加入できる「職能型国民年金基金」です。なお、職能型国民年金基金とは、歯科医師国民年金基金、司法書士国民年金基金、日本弁護士国民年金基金になります。
国民年金基金に加入する場合、終身年金であるA型・B型、確定年金であるⅠ~Ⅴ型の7つのタイプから希望するタイプと口数を選びます。1口目は必ず終身年金を選ばなければならないため、一生涯の給付が基本となっています。2口目以降は終身年金も確定年金も選べます。
国民年金基金の掛金は、プラン、加入口数、年齢、性別によって変わり、将来受け取れる年金額は加入時に決まっています。国民年金基金から受け取れる年金額は「ねんきん定期便」の年金額には含まれていないため、自分で別途把握しておく必要があります。
国民年金基金に加入中の場合、毎年10月下旬に届く「掛金納付結果通知書」により、加入期間満了まで掛金を納付した場合の年金額を確認できます。
シミュレーションツールで年金額を試算してみよう
50歳以上の人は、「ねんきん定期便」を見ることにより、60歳まで現在と同じ働き方を続けたと仮定して65歳から受け取れる年金の見込額を確認できます。
しかし、実際には60歳まで現在と同じ働き方で働くとは限りません。60歳になる前にリタイアや転職を考えている人もいるでしょう。老齢厚生年金は給与額によっても受給額が変わるため、転職により年金額が変わる可能性もあります。
年金額を増やす方法もあります。たとえば、厚生年金は70歳まで加入できるため、60歳以降も働けば老齢厚生年金を増やすことができます。また、未納の国民年金保険料の納付や、免除された保険料の追納、付加年金への加入などによって、老齢基礎年金を増やせる場合もあります。
さらに、年金受給開始は65歳より前に繰り上げることもできますし、65歳より後に繰り下げることもできます。繰り上げれば年金が減額し、繰り下げれば年金が増額します。
実際の年金額は今後の働き方や給与、年金の受給開始時期、繰り上げや繰り下げの選択によって変わります。将来受け取れる年金額を把握するために、自分のライフプランと合わせたシミュレーションを行うのがおすすめです。
年金を試算するときには、スマホやパソコンを使って簡単にシミュレーションできる以下のようなツールを活用すると便利です。
●「ねんきんネット」でシミュレーション
「ねんきんネット」にアクセスすれば、自分で条件を設定して、将来受け取れる年金額を試算できます。「かんたん試算」と「詳細な条件で試算」の2つの試算が可能になっています。
「かんたん試算」では、現在と同じ条件で、60歳まで年金制度に加入し続けるという条件を自動設定して、素早く見込額を試算できます。条件を変えて年金額がどう変わるかを確認することも可能です。
「詳細な条件で試算」では、今後の働き方や、老齢年金を受け取る年齢、未納分を今後納付した場合など、自分で詳細な試算条件を設定して年金見込額を試算できます。
●「公的年金シミュレーター」でシミュレーション
厚生労働省のホームページには、「公的年金シミュレーター」があります。「ねんきんネット」と異なり、利用登録やID・パスワード不要で試算できます。「ねんきん定期便」と連動すれば、入力の手間がほとんどなく、気軽に試算できるのが特徴です。
2022年4月以降に発行された「ねんきん定期便」には、「公的年金シミュレーター二次元コード」が印刷されています。二次元コードを使ってアクセスすれば、必要事項が自動的に反映されます。使い方は次のとおりです。
(1)スマホのカメラで二次元コードを読み込む
(2) 公的年金シミュレーターのURLにアクセス
(3) 「老齢年金」を選択
(4) 生年月日を入力
(5) 「試算をはじめる」をタップ
2026年4月から、「公的年金シミュレーター」にiDeCoや障害年金の試算機能も追加されました。老後の資金計画にぜひ活用してみてください。
「ねんきん定期便」は毎年必ず確認しよう
「ねんきん定期便」には、老後に受け取れる年金の見込額が記載されています。届いたままにせず、内容をしっかり確認する習慣をつけておきましょう。
50歳以上の人は、現在の制度に60歳まで加入した場合の年金額が表示されています。2021年以降は、厚生年金基金の「代行部分」も含めた金額が表示されるようになり、より実態に近い年金額を把握しやすくなりました。
ただし、実際に受け取れる年金額は、働き方や収入、受給開始時期などによって変わります。ねんきん定期便の確認に加えて、シミュレーションツールも活用しながら、自分のライフプランに合った年金額を把握しておくことが大切です。
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森本 由紀 ファイナンシャルプランナー(AFP)・行政書士・離婚カウンセラー
Yurako Office(行政書士ゆらこ事務所)代表。法律事務所でパラリーガルとして経験を積んだ後、2012年に独立。メイン業務の離婚カウンセリングでは、自らの離婚・シングルマザー経験を活かし、離婚してもお金に困らないマインド作りや生活設計のアドバイスに力を入れている。
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