23/04/13
住民税が一番高い自治体は?都道府県民別・市町村別ランキング
毎月、給与明細に記載されている住民税の額を見て、「結構高いな…」と感じることはありませんか?住民税は基本的にどの地域でも一律「10%」です。しかし、自治体によっては加算される場合もあります。今回は、住民税がどのような手順で計算されているのかと、住民税の高い自治体(都道府県別・市区町村別)のランキングをみていきましょう。
住民税は都道府県・市区町村に支払う税金
日本に住んでいれば誰もが、1月1日に住民票の届け出のある自治体(各都道府県や各市区町村)に対して、住民税を納めます。
住民税には、都道府県に納める「都道府県民税」と市区町村に納める「市区町村民税」の2つが含まれています。また、それぞれの税金は、前年の所得を基準にした「所得割」と課税対象者が一律に負担しなければならない「均等割」の2つで構成されています。住民税の税額は、前年1月~12月までの課税所得に税率およそ10%を掛けて算出します。毎年6月に届く「住民税決定通知書」に納める税額が記されています。
住民税の納め方には「普通徴収」「特別徴収」の2種類があります。
普通徴収に該当するのは、個人事業主などです。各自治体から自宅に届いた納付書を自治体窓口、金融機関、コンビニに持参して支払います。PayPayやLINEPay、d払いなどのキャッシュレス決済をすることもできます。住民税は、一括で納めることもできますが、4回(6月、8月、10月、翌1月)に分納することも可能です。
一方、特別徴収に該当するのは、会社員や公務員などです。住民税の納付手順は、会社や役所が毎月の給与から住民税を天引きして、個々の住んでいる自治体へ12回に分けて納付します。
住民税は「所得割10%」「均等割5000円」が基本
住民税は、前年の所得金額をもとにして計算される「所得割」と、所得金額にかかわらず個人が等しく負担する「均等割」の2つで構成されています。
それぞれ、以下の計算式で算出します。
●所得割
所得割の税率は、ほとんどの自治体で、都道府県民税が4%、市区町村民税が6%ですが、政令指定都市の場合は、都道府県民税が2%、市区町村民税が8%になります。いずれも合計10%です。
●均等割の計算
均等割額は、道府県民税が1500円、市区町村民税が3500円の合計5000円です。
住民税額の計算方法は、全国どの地域でも基本的には同じです。しかし、住んでいる地域の事情で、所得割に掛ける税率、均等割に多少の違いがあります。
都道府県民別・市区町村別ランキング
住民税は「所得割10%」「均等割5000円」が基本なのですが、実際にはこれに税額が上乗せされている都道府県・市区町村があります。住民税が高い都道府県・市区町村をランキング形式で紹介します。
●都道府県別の住民税上位ランキング
・4位:兵庫県
兵庫県の均等割は2300円です。「県民緑税」800円を追加で徴収しています。所得割は
兵庫県内の政令指定都市の神戸市が県民税2%・市民税8%、それ以外は県民税が4%・市民税6%の合計10%です。
・3位:神奈川県
神奈川県の均等割は、「水源環境保全・再生のための超過課税」がつき、300円追加の1800円を負担します。さらに、所得割にも同様に0.025%が上乗せされます。
神奈川県横浜市など、政令指定都市の場合個人市民税・道府県民税の所得割は、県民税2.025%・市民税8%になり、合計10.025%です。その他の市町村でも、県民税4.025%・市民税6%で、合計10.025%となります。
・2位:岩手県・山形県・福島県・茨城県・岐阜県・三重県
岩手県・山形県・福島県・茨城県・岐阜県・三重県の6県の均等割は2500円です。県内の大切な資産である森林の整備に充てるため1000円を追加で徴収しています。所得割は4%です。
・1位:宮城県
宮城県の均等割は2700円です。2011(平成23)年4月1日以降、「みやぎ環境税」の1200円を追加で徴収しています。所得割は4%です。
●市区町村別の上位となる住民税ランキング
・3位:横浜市
横浜市の均等割には「横浜みどり税」900円が追加され4400円です。横浜市の所得割は上でも紹介したとおり、神奈川県による0.025%の上乗せがあるため8.025%です。
・2位:兵庫県豊岡市
豊岡市の均等割は3500円、所得割は0.1%プラスの6.1%です。
・1位:北海道夕張市
夕張市の均等割は3500円、所得割が0.5%プラスの6.5%です。
住民税の計算方法
住民税の計算は非常に複雑です。ですので、ざっくりと課税所得の10%と理解していただければ結構ですが、詳しく知りたいという方のために、細かな計算方法を紹介します。
ここでは、東京都江東区にお住まいの方を例に、住民税の金額を試算します。
【前提条件】
・家族構成・年代:1人暮らし・30代
・前年収入:350万円
・社会保険控除額50万円
・基礎控除43万円
①所得金額の算出
所得金額を算出する際は、給与所得控除を計算します。
●給与所得控除一覧表(令和2年分以降)
国税庁のウェブサイトより
給与所得控除は、収入金額ごとの計算式に沿って算出します。今回は前年収入350万円ですから、「180万円超360万円以下」の欄を見ます。
350万円×30%+8万円=113万円
350万円(前年収入)-113万円(給与所得控除)=237万円(所得金額)―ア
②所得控除額の算出
・社会保険料控除:50万円
・基礎控除:43万円
上記の控除額を合計すると
50万円+43万円=93万円 (所得控除額)―イ
③課税される所得金額の算出
アからイを引き、課税される所得金額(課税所得額)を算出します。
237万円(所得金額)−93万円(所得控除額)=144万円(課税所得額)―ウ
④税額の算出(所得割)
ウに東京都の税率(4%)、江東区の税率(6%)を掛けます。
144万円×4%=5万7600円(都民税)―エ
144万円×6%=8万6400円(区民税)―オ
エ+オ=14万4000円(所得割合計)
⑤調整控除額の算出
調整控除額とは、住民税を計算する際、国に納める所得税と比べると、基礎控除などの人的控除が少ないため、住民税の税額負担を調整するために設けられたものです。
例えば、所得税を計算する際の基礎控除は48万円ですが、住民税の基礎控除は43万円です。このように控除が少ないと、課税所得が増え、納める住民税が増えてしまいます。調整控除額は、所得税と住民税の金額をならすことを目的にしています。
調整控除額は、課税される所得金額が200万円以下の場合、次のA)またはB)のいずれか少ない金額×5%(区民税4%・都民税1%)となります。
A)人的控除額の差額の合計額
今回の例では、一人暮らしがモデルとなっており、人的控除の対象になるのは、基礎控除の43万円です。基礎控除の人的控除の差額は「5万円」となります。
B.上記③の課税所得金額
こちらは「144万円」となります。
A)、B)を比較すると、A)の方が少ないので、調整控除額は、A)×5%で算出できます。
5万円×5%=2500円(調整控除額)
⑥最終的な住民税の算出
④の所得割-⑤の調整控除+均等割で住民税が確定します。
14万4000円(所得割)−2500円(調整控除)+5000円(江東区均等割)
=14万6500円(住民税)
まとめ
個人が負担する住民税は、地域社会に暮らす際、教育や福祉、防災、ゴミ処理費用、森林保護など多様な目的で利用されています。住民が広く分かち合う「地域社会の会費」的な税金です。地域ごとのさまざまな事情で追加されるケースがありますが、先々を考えると、必要なお金だと考えられます。しかし、住民税を少しでも安くしたいと思うのであれば、所得控除になるiDeCoなどを利用してみるとよいでしょう。
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舟本美子 ファイナンシャルプランナー
「大事なお金の価値観を見つけるサポーター」
会計事務所で10年、保険代理店や外資系の保険会社で営業職として14年働いたのち、FPとして独立。あなたに合ったお金との付き合い方を伝え、心豊かに暮らすための情報を発信します。3匹の保護猫と暮らしています。2級ファイナンシャル・プランニング技能士。FP Cafe登録パートナー
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